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ブルキニ論争に終止符 再燃懸念も

Japan In-depth 9/3(土) 23:00配信

フランスが世界から批判を受けることとなったブルキニ論争も、禁止命令が無効と言う裁判結果が各地で続々と出され、9月に入りようやく一区切りがついた。

フランスが世界から批判を受けることとなったブルキニ論争も、禁止命令が無効と言う裁判結果が各地で続々と出され、9月に入りようやく一区切りがついた。

フランスの今年の夏は熱かった。フランスではテロが頻発した結果、テロへの恐れからイスラム教への反発感情が急激に高まり、その矛先の一つがイスラム女性が着る全身を覆う水着であるブルキニに向き、カンヌを始めとする複数のビーチでブルキニ着用が禁止となったのが発端だ。

当時を振り返ると、雰囲気としてはとても異様だったかもしれない。普段、差別に反対している知人ですらが「ブルキニ禁止は当然だ」とつぶやき始めたのだから。

ブルキニ反対派が唱えるロジックはいくつかある。

1.1989年から始まったスカーフの論争の末、ライシテ(政教分離)という理念の元、学校で「宗教シンボル禁止法」が決まったという事実もあり、公共の場であるビーチにもに宗教的なものを持ち込むことも禁じる必要があること。

2.イスラム女性が全身を隠すのは、男性によって強制されたものであり、奴隷のシンボルであるので着るべきではないこと。

3.テロ活動を未然に防ぐ必要があること。

など。

こういったロジックを理由とし、現地の警察の解釈でその取り締まりはブルキニのみならず、宗教を感じてとれる女性の服装全般にまで広がっていくこととなった。トゥルーズから来たフランス国籍の女性は、ブルキニは着用しておらずチェニックにスパッツ、そして髪にスカーフをしてビーチに座っていただけで警察に罰金を払うか立ち退きのどちらにするかを迫られたと言う。さらに回りの群衆からは「ここから出ていけ」「フランスはカトリックの国だ」などと言う差別的発言も投げつけられた。他にも同様な事例が反イスラム嫌悪協会に届けられていているが、そのほとんどがブルキニを着用してなかったそうだ。

さらに世界中に衝撃を与えたのは、警察がブルキニを着ている女性に命令して衣類を脱がせている写真だ。現実に起こっていることをまのあたりした国内外の人々から次々と非難の声があがっていった。

「ライシテだ、カトリックの国だ、と言うことは理解したとしても、銃を持った警察官が女性に服を脱ぐことを強制していることが許されるのはおかしいのではないだろうか?」

「女性の人権と自由をないがしろにしている」

「フランスの自由と平等とはいったい何だったんだ」

そして8月26日。ようやく行政訴訟における最高裁判所としての役割を持つ国務院にて、冷静な判断がくだされたのだ。ブルキニ着用禁止は「基本的自由を侵害する深刻かつ明白な違法行為」に当たると結論づけ、訴えがあった町ヴィルヌーヴ=ルベにおいてのブルキニ禁止命令を無効としたのである。

その結果を受け、一部の反対を唱えていた私の周り人の中には大きな衝撃を受けていた人もいた。それはブルキニがどうと言うよりも、自分たちが正しいと信じて疑ってなかったことが、根底から否定されたことへの衝撃のようにも見えた。我に返ったとも言い換えられるかもしれない。

カンヌやフレジュス、ニースではを国務院の結果をうけてもブルキニ禁止を継続したが、禁止期間の最終日8月31日を目前にして各裁判所で無効の決定が下ることとなり、発展した近代国家においてさえ「女性が自分の好きな服を着るという自由」を、こうもいとも簡単に奪い去れると思い知らされた狂気の夏がこうして終わったのだ。

しかしながら、一息ついたのもつかの間。すでに、ブルキニは来年の大統領選に向けて政治の駆け引きの材料としても使われ始めている。

2017年の大統領選挙に立候補を表明したニコラ・サルコジ前大統領は、自分が再選された場合はブルキニを禁止するべく憲法を改正するとまで公約した。フィガロ紙でのインタビューでも、サルコジ氏はブルキニ着用を「軍事的、挑発的、政治的な行為」であり、「何もしないとフランスは弱腰だと思われ、この国はさらに没落してしまう」と答えている。

ヴァルス首相は、「(フランスの自由の象徴である)マリアンヌの胸はヴェールで覆われてはいない。なぜならマリアンヌは自由だからだ。」と述べて、「隠すよりも、女性は胸を露出する方がよりフランスの精神にふさわしい」と、反ブルキニ姿勢を続ける構えだ。

複雑に絡み合った問題を含むブルキニに対する議論は今後もまだまだ続いていくことは間違いないだろう。しかしながら、この夏起こったような「女性の権利、人の権利を奪う行為」には発展しないように願うばかりだ。

Ulala(ライター・ブロガー)

最終更新:9/3(土) 23:00

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