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『後妻業の女』に思う「結婚に愛とかなくてもいいんでは」説 [with]

講談社 JOSEISHI.NET 9/3(土) 18:00配信

生涯未婚率がちょっと改善していると聞きます。震災の直後に「やっぱり誰かと一緒にいたい」と結婚を決意した男女が多かったという話は耳にしましたが、その余波は中高年にも及び40歳以上の未婚率が減ってきているとか。そんなふうにジワジワと流行するシニア婚活の中で、鬼子のように産まれたのが「後妻業」――お金持ちの後妻になり、夫が死んだときに財産をふんだくる人です。その死が不審死だったりと、きわめて犯罪に近い展開だったりすることもあります。『後妻業の女』は、そんな凄腕の後妻業の女が荒稼ぎをするというお話です。

主人公・小夜子は、映画が始まる時点ですで夫となった8人もの男の不審死によって、巨額の財産を手にしている後妻業の女。今まさに9番目の老大学教授にロックオンしたところから始まります。観客が不思議に思うのは、小夜子が詐欺師と知っていることを割り引いても、なんでこんな女に騙されちゃうのかなあということです。だってその行動はあまりに「とってつけ」です。「白くてふわふわ」「胸元ちょっと露出」的なファッションで、自分から相手に頻繁に“お触り”し、しおらしく「あなたの最後の面倒を見たい」なんて言うだけで、男はコロッと騙されてしまいます。映画では大竹しのぶさんが演じているので妙に説得力を持っちゃいますが、実際に発覚した「後妻業事件」で女が美人だったことなんてほとんどありません。

20~30代の女子の場合、いくらハイスペックな男でも「好き」がなければ「結婚」は成立しない、そこが最重要という人が多いと思うのですが、「後妻業の女」にとって、最重要は「家とお金」。かつての最重要項目は真っ先に条件から外れてゆきますし、そもそも騙された男も求めているのは「愛」じゃなく「老後の世話をしてくれる人」。家政婦雇え、っていう話です。でも「愛」から始まった「結婚生活」でもこれと同じことは頻繁に起こりえます。「夫に愛はない。別れないのはお金があるから」という女性は驚くほど多いものです。てことは愛って単なる思い込みなわけで、いっそ最初からなくてもいいんじゃないの?――と割り切れれば、こんなに楽なことはないんですけどね。

文/渥美志保

最終更新:9/3(土) 18:00

講談社 JOSEISHI.NET