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創業家というお仕事

Wedge 9/3(土) 12:30配信

 出光興産が揺れている。

 新聞や経済雑誌の記事にあるように、昭和シェル石油との世紀の経営統合に黄色信号が灯っているのだ。

 日本の人口の減少に伴い、石油の国内需要は長期的に大幅に減少すると見込まれている。石油業界のプレーヤーを総合エネルギー産業に転換させ、グローバルベースで競争力を持てるようにすること。そんな経産省の青写真を実現するには、石油業界の再編は不可避であり、正に出光と昭和シェルの経営統合は、この流れに合致するものであった。それに続くJXホールディングスと東燃ゼネラルの経営統合の発表と併せて、石油産業の再編は大きく進むはずだった。

計り知れないショックと失ったメンツ

 そこに待ったをかけたのが出光創業家である。反対表明を行ったのが株主総会の席上であり、何とも前代未聞の展開となっている。出光経営陣としてみれば、創業家に十分な説明をして了解を得ていたと認識していたため、反対のショックは計り知れない。統合相手の昭和シェルに対してメンツも失った形である。創業家は反対表明をするにとどまらず、市場で昭和シェル石油の株式0.1%を取得するという行動に出た。

 これにより既に33.24%の昭和シェル株式を保有する出光は、この統合を行うために昭和シェルの他の株主に対してTOBを行うことが求められることになった。これはもともと両社が合意していた方法ではないし、仮に実行する場合には巨額のTOB資金が必要になる。出光経営陣にしてみれば、創業家の呪縛によりいきなり身動きができなくなった格好だ。

出光佐三という男

 そのようにしてまで世紀の大統合を阻もうとする理由として、創業家は昭和シェルとの企業文化が余りにも異なることを前面に出している。出光興産の創業者は百田尚樹氏の小説『海賊と呼ばれた男』のモデルである出光佐三。日本のエネルギー政策に独自の行動力を見せて世間をあっと言わせた日章丸事件が余りにも有名だが、オーナー系企業ならではの大胆な経営が身上だ。

 また大家族主義を標榜し、従業員を大切にする姿勢も顕著である。一方の昭和シェル石油は、石油メジャーが筆頭株主であり、経営スタイルも多分に欧米的。また7つの組合が常に経営と対峙するなど、両社の経営スタイルと環境はまさに水と油。出光創業家はこのような経営統合の前途が多難であり、それを成し遂げる前に両社が疲弊すると危惧している。その上で、石油業界再編の流れは確かに不可避だが、それに乗り遅れることを焦るあまり足元の大切なことを忘れるな、というメッセージを発信している。これはこれで一つの考え方だ。

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最終更新:9/3(土) 12:30

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