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マックルモア&ライアン・ルイス、シアトル発ヒップホップデュオの結成秘話

ローリングストーン日本版 9/3(土) 18:30配信

ローリングストーン日本版 2014年4月号掲載
マックルモア "ナイスガイ・ラッパー"の悩み
US版2013年8月掲載インタヴューアーカイヴ

マックルモア&ライアン・ルイスと共演、伝説のラッパー3人が語る過去、現在、未来

グラミー賞での感動的なパフォーマンスも話題を集めたマックルモア&ライアン・ルイス。彼らを輩出したのは、シアトルの小さなインディペンデントのシーンだった。普通の若者たちがYouTubeで一躍注目を集め、今やポップ・ミュージックの最前線に躍り出た。その歩みを辿る。

自称"ナイスガイ・ラッパー"にして、アル中とヤク中も経験済み。今は電子タバコで、それもたまにしか吸わない。コーヒーだって滅多に飲まない。それがマックルモアことベン・ハガティだ。

「今は砂糖がとにかく頼りだね。たまにガソリン・スタンドとかに行って、スナックなんかを約20ドルぶん買って、ホテルの部屋でバカ食いするんだ」と彼は言う。確かに、愛車キャデラックのシフトレバーの横には、たいていのラッパーなら葉っぱでも隠しておきそうなところを、開封済みのカラフルなナーズ・キャンディが突っ込んである。この調子だと、そのうちリリックに糖尿病のテーマが登場するかもしれない。ただ、ステージ上で激しい有酸素運動を繰り広げているハガティだから、病気の心配はなさそうだ。現在の年齢は30歳。スリムな体型に、ドレスダウン・ルックが似合っている。今日の格好はパリッとしたパープルのTシャツに、ストライプのトレパン、それから白いジョーダン・スニーカーだ。「Wing$」という曲であれだけナイキをターゲットに物質主義を罵倒したのに、これだけは手放せないと見える。「偽善的だって?そりゃそうだよ」とハガティ。「でも、いいじゃん。俺だって人間なんだ。完璧じゃないさ。"Wing$"みたいな曲を作りつつ、ナイキを履くこともあるって」

ルーツはアイリッシュだが、顔立ちは微妙にヨーロッパ大陸系。例えば、アムステルダムのいわゆる"コーヒーショップ"で合法マリファナを売る兄ちゃんとか、映画『ダイ・ハード』シリーズに出てくる悪役を彷彿とさせる。サイドを刈り上げたヘアスタイルや、生意気に突き出た下唇とデカい鼻はいかめしく、現代のポップスターらしくYouTubeやスマートフォンから飛び出す用意万端だ。

最近の彼はやけに疲れて見えるが、近頃は祝い事だらけ。何よりも、プロデューサーのライアン・ルイスと組んでデュオで出したデビュー・アルバム『THE HEIST』が、100万枚近くの売り上げを記録したおかげで、彼らを知らしめた代表曲「スリフト・ショップ」の先へと進むことができた。とにかくこのシングル、爆発的な人気を呼んで、彼は危うく北米版のPSYになりそうだった。そのPVはあまりにも小気味良く、再生回数が3億9000万を超えている。これで一生"「スリフト・ショップ」のヤツ"として過ごすのかと想像したハガティは不安になった。メジャー契約なしに、自分たちだけで招いてしまった責任だ。

数カ月前のハガティは、そんな自らの過大な成功に苛立っていた。それを超えられずに、一発屋として終わる可能性があったからだ。「2013年の年始あたりは特に辛かったな。鬱々としてたね。"今どきのラップ・ソング"として片づけられそうで、何のために音楽をやってきたんだろうみたいに思ってた」とハガティ。そんな悩みは、20年前にシアトルのロック・ヒーローたちが抱えていたものに似ていたが、彼にはそれがわからない。彼はニルヴァーナではなく、ウータン・クランを聴いていたからだ。

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最終更新:9/3(土) 18:30

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