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都民のための地銀「きらぼし銀行」は、なぜ新銀行東京を救済したのか?

HARBOR BUSINESS Online 9/3(土) 9:10配信

「きらやか銀行」「みなと銀行」「トマト銀行」に「ほくほくフィナンシャルグループ」「コンコルディア・フィナンシャルグループ」「めぶきフィナンシャルグループ」……どこにあるのか分からない名前の金融機関が増える昨今ではあるが、また新たな銀行が、しかも都内に誕生する。その名も「きらぼし銀行」。

⇒【資料】統合3行ときらぼし銀行の概要

「東京TYフィナンシャルグループ」(東京TYFG、新宿区)は8月28日に、傘下の「東京都民銀行」(港区)、「八千代銀行」(新宿区)、「新銀行東京」(新宿区)の3行を2018年5月に経営統合させ、新商号を「東京きらぼしフィナンシャルグループ」・「きらぼし銀行」(Kiraboshi Bank,Ltd.)とすることを発表したのだ。

◆東京の「地方銀行連合」誕生へ

 東京TYFGは、地方銀行の「東京都民銀行」(1951年設立)と、第二地銀で旧・八千代信用金庫の「八千代銀行」(1924年創立)によって2014年10月に設立されたもの。2016年には、経営再建中だった東京都出資の信託銀行「新銀行東京」(2004年設立)を傘下に収めるとともに、3行の経営統合に向けた準備が行われていた。

 当初、3行の合併は2017年度に予定されていたが、システム統合作業の遅れなどから2018年5月の統合に延期されることとなった。3行の合併後は、新銀行東京の基幹系システムを都民銀行に統合する一方、八千代銀行とのシステム統合は延期されるが、最終的にはNTTデータが提供する共同システムに統合される予定だという。存続会社は八千代銀行だが、銀行コードは都民銀行のものを使用することになる。

 また、合併後のきらぼし銀行の本社は八千代銀行本店(新宿区)に、きらぼし銀行の本店は2017年に完成予定の都民銀行本店ビル(港区南青山)に置かれる。総資産は5兆円を超える見込みで、地方銀行ゆえに合併後も殆どの支店は東京都内とその周辺にドミナント展開され、東京都民に密着した経営が行われることになる。

◆「新銀行東京」も巻き込む3行統合――「東京のための銀行」目指す

 都市銀行の存在が身近な東京都内では、銀行間の競争が他の都市圏よりも格段と激しく、地方銀行は、営業力のある「メガバンク(都市銀行)」と地域密着の「信用金庫」などとの板挟みとなっていた。

 しかも、首都圏では、2016年4月に横浜銀行と東日本銀行が「コンコルディア・フィナンシャルグループ」として、2016年10月には、常陽銀行と足利銀行が「めぶきフィナンシャルグループ」として金融持株会社方式で経営統合するなど、地銀同士の統合も相次いでいる。この両グループよりも規模が小さい東京TYFGは、傘下銀行を合併させることよって、より一層のスケールメリットを生み出すとともに、東京オリンピックを控えた東京都において「東京都民のための銀行」をアピールすることで、経営基盤の強化を図るという狙いもあると考えられる。

◆東京の地銀連合に「新銀行東京」を巻き込んだメリット

 それでは、この「東京地銀連合」とも言える大同合併に「新銀行東京」が加わった理由は何処にあるのだろうか。

 思い返せば、新銀行東京はもともと石原慎太郎元都知事の肝煎りで都内の中小企業支援のために2004年に設立されたもの。当初、杜撰な融資が多数行われたことで多額の負債を抱え、経営破綻寸前にまで追い込まれたものの、支店の削減・人員削減などのリストラと、都の追加出資により、2010年にようやく黒字化するに至ったという経緯がある。

 半ば、東京都にとって「お荷物」とも言える新銀行東京であったが、その一方で、東京TYFGは、東京都が出資する新銀行東京を傘下に収めることで、都との繋がりを強化したいという思惑があると考えられる。実際、今年7月には、東京都水道局が水道工事のローンに関する初の業務連携を東京TYFGと締結するに至っており、今後もこうしたかたちで都と東京TYFG・きらぼし銀行との連携は強まっていくことが予想される。

 さらに、設立の経緯から商工会議所との結びつきが強い都民銀行と、信用金庫を起源に持つ八千代銀行という、いずれも中小企業の経営支援を得意分野とする両行にとっては、もともと新銀行東京と取引があった都内の中小企業を囲い込むことで、銀行同士の競争が激しい都内において貴重な新たな法人顧客の獲得を図ることができるというメリットも大きいであろう。

 また、一度破綻寸前においこまれていた新銀行東京にとってしてみても、信頼のおける地方銀行の傘下に入ることは、自らのノウハウを最大限に生かすことができるため、両者にとってwin-winの関係が築けることは想像に難くない。

◆統合による大きなメリットとは?

 また、都民銀行と八千代銀行は、首都圏内に複数の自社物件支店を持っているため、合併による支店統合により、経営の効率化に加えて所有不動産の収益化を図ることができるのも大きなメリットであろう。

 一般的に、銀行の統合などによって生まれた支店跡の余剰不動産は銀行にとって大きな資産となると捉えられがちであるが、実は、地方銀行では、各都市の一等地に店舗を構えるメガバンク(都市銀行)とは異なり、支店跡の売却・再活用が困難を極め、”不良資産”と化してしまうことさえも非常に多い。

 しかし、全店が首都圏にある「きらぼし銀行」では、統合によって生まれる支店跡は殆どが都内の駅近くの物件と考えられ、収益化も比較的容易なものとなることは間違いない。もちろん、賃貸物件である重複支店においても、多額の家賃を払ってまで出店を続ける必要がなくなる。

 さらに、23区内を主な地盤とする都民銀行と、多摩地区・相模原市周辺を主な地盤とする八千代銀行では、支店の重複も比較的少なく、統合のために閉鎖される支店も10支店前後に留まると見込まれ、東京都の地銀同士でありながら効率的に事業エリア拡大を図ることができる経営統合であると言えよう。

◆イメージキャラクターは「キキララ」-名前通り「光り輝く」ことはできるのか

 東京TYFGでは、新名称の発表に先駆けて、2016年8月よりグループの新キャラクターをサンリオの「リトルツインスターズ」(キキララ)とすることを発表している。リトルツインスターズは「きらぼし銀行」の名称・イメージに合致することから、経営統合後も継続して使用されると考えられる。

 都内においては、メガバンクの影に隠れて影が薄かった地方銀行。今回の3行合併によって生まれた「きらぼし銀行」が「東京を代表する銀行」として、名前通りに光り輝くことができるのかどうか、今後が注目される。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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最終更新:9/3(土) 16:37

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