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「辺境の地」で挑む社員こそ評価せよ

Wedge 9/4(日) 12:20配信

 創業当初は経営者の専権事項であった仕事が、会社の成長につれ、人事、総務、広報、法務など、職能ごとにどんどん細分化されていく。当初は経営者の意思に直結して機能していた組織も、企業の発展に伴い、日々のオペレーションに忙殺されるようになる。特に人事は、給与の処理や賞罰等、管理的かつ短期的な仕事にばかり気を取られるようになってしまう。

 日本の人事の多くは、労務的要素の強い従来型の人事から脱却しようと、チャレンジを続けている。大量生産により成長を遂げてきた時代は、社員のベクトルを束ねて集団としての生産性を高めることが経営課題だった。人事も労働組合の協力を取りつけるために折衝を重ね、労務に重点を置いてきた。

 しかし時代は変わり、人事は新たな付加価値を生むために個人に向き合い、人材開発に力をいれようとしている。日本の生産年齢人口が減少するなかで、有能な人材の数は限られている。人材を発掘し、計画的に育て、付加価値を生み出せる、経営の根幹を左右する人材をどう作るかが、人事の最大にして喫緊の課題だ。

 経営の根幹を左右する人材を作るには、出向や事業再生の場を活用することをおすすめする。誰もが成功するのが難しいと感じる“辺境の地”に送りこみ、誰にも頼れない環境で、社員が自らの知恵と工夫、勇気をもってどう働くかを見ることで、その人の器を見極められる。

 チャレンジやリスクを取る風土を失い、何もやらず、無難にこなす人材ばかりが認められ、昇進するような制度は会社の力をそぐ。もし人事がそれを放置しているなら、恥と感じるべきだ。育児や介護などの理由で職場を離れた社員は、二度と同僚に追いつけないような制度と運用は排除し、実力主義に基づいて抜擢する制度に変えていかなければならない。

 従来と同じように指示を確実に実行できる「優秀」な人材だけを作るのではなく、環境やビジネスルールが変わることを予見し、変化を先取りして、未来の扉を苦しみながら切り拓こうとする人材を作るべきだ。そのやり方を模索することが、経営に寄与する人事への転換点になる。

 そのためには上司の役割の一つに、将来の人材育成に寄与したかどうかを加え、業績と同じように部下育成を評価していくことが大変重要になる。人が勝手に育つという幻想はそろそろ捨ててほしい。

 業績でも過去に前例のある仕事と未知の仕事、経営を左右するものとそうでないものを区別し、評価軸を変えていかなければならない。過去の仕事の仕方やスタイルにかかわらず、他社のやっていないことや気づいていないことに率先して取り組むことこそ評価する適切なKPI(業績評価の指標)を設定する様な工夫を人事はしてほしい。

 そのために、人事は事業部門と議論し、何が「業績」になるかを不断に変え、決めていく必要がある。毎回、過去と同じ評価軸や昇格ルールだけを大事にしている会社には、将来会社を任せるにふさわしい人材は出てこない。

寺川尚人

最終更新:9/4(日) 12:20

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