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「反ファスト・ファッション」で世界を変える、北欧ジーンズメーカーの奮闘

Forbes JAPAN 9/4(日) 9:00配信

大量生産・大量消費のファスト・ファッションが世界中に広がる一方で、ここ数年、人と環境に配慮した生産・流通を行うエシカルファッションが脚光を浴びている。



中でもスウェーデン発のデニムブランド「ヌーディ・ジーンズ(Nudie Jeans)」は、サプライチェーン(原材料の調達から生産管理、物流、販売までの全プロセス)の改革と商業的成功の両方を実現している注目株だ。

ヌーディ・ジーンズは2001年、スウェーデン第二の都市、ヨーテボリで誕生。2006年、創業者のマリア・エリクソンは取引のあるサプライヤーを集め、方向転換を宣言した。その当時20%だったオーガニックコットンの使用率を100%に引き上げると表明したのだ。これによりいくつかのサプライヤーが同社から離れたが、エリクソンらはポリシーを貫き、2012年に目標を達成した。

企業が倫理を守りながら利益を出すことは可能かとの問いに、同社のパレ・ステンバーグCEOは自信たっぷりに答える。「もちろん。誰にでもできるはずです」と。

現在の年商は5,000万ユーロ(約55億5,000万円)。従業員数は230人で、そのうちの65人がヨーテボリで働いている。今のヌーディ・ジーンズには1年間で事業規模を2倍に拡大できる資金力があるが、ステンバーグは急成長を望んでいない。「スローで持続可能な成長を目指す」と言う。

インドの有機コットン生産者と提携

実際、ヌーディ・ジーンズは企業の基礎を固めるのに15年を費やしてきた。特に力を注いだのがサプライチェーンの構築だ。同社のウェブサイトでは、インドやトルコのオーガニックコットンの生産者からヨーロッパ各地の紡績工場まで、すべてのサプライヤーが詳しく開示されている。

そのうちのひとつが、インド中南部のハイデラバードに拠点を置く小規模農家の協同組合Chetna Organic。コットンは元来、害虫に弱い作物だ。コットン畑は地球の表面積の3%に満たないにもかかわらず、一説では世界で消費される殺虫剤のうち20%がコットン栽培に使われていると言われる。

遺伝子組み換えされた害虫に強い新種もあるが、種が高価で、しかも一代しか育たない。そのため世界有数のコットン生産国であるインドでは、多くの生産者が殺虫剤による健康被害に苦しみ、また経済的困難に陥ってきた。

Chetna Organicはこのような状況を打破すべく設立された機関で、環境や健康に負荷をかける従来型農法から有機農法への転換サポートや種バンクの運営を行う。約35,000人の生産者が加盟し、欧米のブランドを中心とした20社以上とパートナーシップを結んでいる。
--{無償でジーンズを修理するサービスも}--
ヌーディ・ジーンズにとって、サプライチェーンの公開は、競合他社に手の内を明かすことを意味する。しかしステンバーグは、他社が同社のサプライヤーと直接取引しても構わないと言い、「変化を起こすには、より多くの企業が参加する必要がある。私たちだけでは何も変えられない」と話す。

業界全体の変革を促すこのアプローチは、同様にオープンソースを通じて幅広い環境保護活動を行うことで有名な米国のアウトドアブランド、パタゴニア社の姿勢とも共通する。

リユース(繰り返し使う)、リデュース(減らす)の哲学

持続可能な社会を目指すヌーディ・ジーンズの取り組みは、消費者にも向けられている。店舗で行っている無償のジーンズ修理サービスもそのひとつだ。店舗が近くにない消費者には、針と糸と生地がセットになった修理キットを送る。

2015年末までに同社が修理したジーンズは約4万本。また不要になったジーンズを引き取り、ビンテージジーンズとして販売するほか、生地をリサイクルして新しい製品を作る試みを行っている。

「コットンは環境にとって有害な植物だ」とステンベルグは言う。大量のコットンを使うデニムブランドにとって、自社製品の寿命を最大限に伸ばすこと、あるいはリサイクルすることは、トレンドであると同時に当然の使命なのだ。

ステンベルグはこれまでのヌーディ・ジーンズの歩みを振り返り、「会社を立ち上げるのが2016年の今だったら、これほど上手くいかなかっただろう。今、ブランドを築くにはより多くの資金が必要だ」と話す。2001年の創業当時、ジーンズ市場はわずか5、6社の大手メーカーによって占められていた。

そんな中、エリクソンと2人の仲間は銀行から50,000クローネ(約74万5,000円)を借りて3,000本のジーンズを作り、あるファッションイベントの1日目に売り切った。

現在、デニムブランドの数は増え、市場は飽和状態にある。だが、北欧のミニマリズムと新鮮なアプローチ、そして妥協を許さない姿勢を持つヌーディ・ジーンズは一歩抜きん出た存在だ。彼らには人、地球、製品の質に関して確固たる理想があり、それらはジーンズにも縫い込まれている。

Esha Chhabra

最終更新:9/4(日) 9:00

Forbes JAPAN

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