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笑顔の接客しかできないのは二流。一流はこう接客する

HARBOR BUSINESS Online 9/4(日) 9:10配信

 みなさん、こんにちは。空気を読むを科学する研究所代表取締役の清水建二です。本日は、接客業における表情読みとり&作り方についてご紹介したいと思います。

 ある公官庁の窓口係の方のための研修メニューをつくるために、そこの人事課長の方から相談を受けていたときのエピソードです。

人事課長:うちの職員、笑顔でのサービスは他の自治体に比べて出来ているとは思うんですけど、笑顔をひっこめるタイミングがわかっていないようなのです。

私:それは、市民の方がイライラしているときとか、サービスに不手際があったときとかなんじゃないでしょうか?

人事課長:そうそう、まさにそうした状況です!

 人事課長の話をまとめると、ある制度の内容を訪ねに来られた市民の方に職員の方が最初ニコニコ顔で対応していたようです。しかし、何度聞いても理解することが困難なその制度に市民の方がイライラし始め、しまいには声を荒げる事態にまで発展してしまったそうなのです。それでは、どんな対応の仕方が適切だったのでしょうか?

◆相手のイライラを微表情から察して、迅速に対応を変える

 まずこの市民の方のイライラの原因を想像してみましょう。

 ①イライラを引き起こしているのは、職員の下手な説明。その張本人の職員が下手な説明をしていることに気付かず、呑気に笑っている状況にさらにイライラ。

 ②説明が理解出来ない自分にイライラ。それに気付かずニコニコしている職員にイライラ。

 状況的にこのどちらかだと考えられます。つまりイライラの原因は、職員の方の説明の仕方、もしくは理解出来ないもどかしい自分です。それに職員の方が気づかないでいるとイライラが増大してしまうのです。

 もちろんこのイライラに対しては、丁寧な説明をし直す、行動で示せるものなら実際にやって見せる、市民の方に疑問点を聞き出す、といった対応が考えられます。

 しかし、こうした対応が出来るのは「目の前のイライラに気付く」という観察力があるからです。市民の方のイライラはわかりやすい形で表情や言動に表れるかも知れませんし、微表情として僅かな表情変化の中に表れるかも知れません。しかし、一般的に私たち日本人は公共の場で怒り表情を露わにしない傾向にあるため、微表情としてイライラが表れてくる可能性が高いでしょう。もちろんイライラを察知したならば、ニコニコ顔は慎まなければなりません。怒っている相手にニコニコ顔は逆効果です。

◆笑顔の接客を超えた表情接客とは?

 相手のイライラを察し、この対応法ができるだけでも素晴らしいのですが、さらにクオリティーの高いサービスを目指すならば、相手の感情に合わせた表情をつくる、というものがあります。

 例えば、

 イライラしている方に接するときに適当な表情は、不安表情です。

 悲しい気持ちの方に接するときに適当な表情は、悲しみ表情です。

 不安な気持ちの方に接するときに適当な表情は、笑顔です。

 実はこのスキル、ホスピタリティーに敏感なサービス業の方ならば、誰もが知らず知らずのうちに習得しているスキルです。サービスを受けられる方のことを心から考えていれば、相手の感情にあった表情というものは自然に出来てくるものなのですが、高いホスピタリティーが醸成されるには時間がかかるため自然に出来るようになるには、長い年月がかかったり、出来不出来には個人差があります。またサービス業に携わっていても人間ですから、ときに相手の立場に心から寄り添えないときがあります。

◆感情は表情から作られる場合もある

 そんなとき、相手の感情に寄り添うということを「適当な表情を作る」という形から入ることで、そこに後から本物の感情を入れる器を持つことが出来るのです。

 楽しいから笑う、だけではなく、笑うから楽しい。

 悲しいから悲しむ、だけでなく、悲しむから悲しい。

 私たちの表情と感情とにはこのような双方向の関係があるのです。状況にあった表情を意識的に作ることで、本当の感情を呼び起こすことが出来ます。表情を作ることは、いわば、本物の感情が醸成される呼び水としての効果があるのです。冒頭のケースでは、市民の方のイライラを微表情から察した職員の方が不安表情を見せ、一旦落ち着き、そして理解出来ない箇所を丁寧に聞き出す、こんな対応が自然にできればベストです。

 相手の感情に対してどんな表情で接するのが適当だろう?こうした姿勢が相手を思いやる本当の感情を醸成する第一歩になるのです。笑顔の接客がマストなサービス業。一歩先行く表情接客、表情のバリュエーション目指してみませんか?

<文/清水建二・写真/ぱくたそ>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でコミュニケーション学を学ぶ。学際情報学修士。 日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、日本ではまだ浸透していない微表情・表情の魅力、実用例を広めるべく企業コンサルタント、微表情商品開発、セミナー等の活動をしている。また、政治家や芸能人の微表情を読んで心理分析するなど、メディア出演の実績も多数ある。著書に『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

【ビジネスで活用する微表情学第9回】

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/4(日) 9:10

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