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優柔不断な上司を即決させるための「上手な聴き方」とは?

HARBOR BUSINESS Online 9/4(日) 16:20配信

部下:「打ち合わせをさせていただきたいので、よろしくお願いします」

上司:「わかった」

部下:「来週はいかがでしょうか」

上司:「大丈夫だ」

部下:「来週のいつがよろしいでしょうか」

上司:「スケジュールの空いているところに入れてくれ」

部下:「○月○日の午後はいかがでしょうか」

上司:「OKだ」

部下:「14時から15時ではいかがでしょうか」

上司:「あ、その時間は、避けたいな」……

◆いつまでたっても入らない「上司とのアポ」

 分解スキル・反復演習型能力開発プログラムを実施していると、参加者から、ビジネスを遂行する上での困りごとの相談を受けることがよくあるし、プログラムの中の課題解決力を演習の中で、それらが浮き彫りになる。挙げられる課題の中には、「上司からクイックなリアクションが得られない」という意味のものが実に多い。

 そこで、具体的な事例を持ち寄って共有するのだが、冒頭のやりとりは、その一例だ。部下は、「散々やりとりして、『OK』と言っていたのに、そのあげくに、『その時間は避けたい』とは、どういうことか!!」とエキサイトしているし、上司は「まどろっこしい聞き方で何度もメールしてくることが問題だ」と部下が悪いと言い張る。上司と部下の断裂が深まる典型的なパターンなのだ。

◆相手が変わらないなら自分は何を変えるか?

 いったい、この例は、上司と部下のどちらの、何が問題だったのだろうか?どうすれば、スムースにコミュニケーションができたのだろうか?こう問いかけると、「上司が、最初に日時指定すればよい」という答えが挙がることが多い。上司の問題が出尽くしたところで、部下の改善点を挙げていただく。すると、「この部下は、少し遠慮がちではないか。もう少し積極的になってもよい」という意見が出てくる。

 上司にいくら変わってほしいと思ったり、それを伝えたりしたとしても、なかなか他人は変わらないものだ。だとすれば、自分が変わって変えられることをすればよい。その点で、私は、部下としての自分が改善できる点を見出していくことに賛成だ。しかし、「積極的になれ」と言っても、なにをどう積極的になればよいのか、漠然としていて、言動の改善にはつながらない。

 そこで、このケースで、身に付けるべきスキルを分解して、このパーツスキルを反復演習して身に付けていくと、言動が明らかに変わるというキーになるスキルをつきつめていく。その結果、キーとなるスキルは、限定質問のスキルを十分に発揮することであることがわかってきた。

◆相手に即決させる「限定質問」

 限定質問とは、「ミーティングさせていただいてもよいですか、(よくないですか)」、「Aがよいですか、Bがよいですか」というような、答えが限定される質問のことだ。このケースでは、部下は、限定質問をしているではないかという声が聞こえそうだが、確かにしているが、その限定質問の使い方が甘く、核心をつかぬまま、周辺部分で対話しているという状況なのだ。

 すなわち、「打ち合わせさせていただきたいのですが、(良いか、悪いか)」、「来週はいかがでしょうか、(良いか、悪いか)」と、実施有無や来週という長い期間での都合の良し悪しを聞く、漠然とした限定質問なので、答えが絞り込まれないのだ。もし、これを、最初から、「打ち合わせさせていただきたいのですが、○月○日の14時から15時はいかがでしょうか」と問うていれば、最初の4往復のメールのやりとりの労力と時間は不要になる。

 加えて、「最初のメールで日時指定することは失礼なのではないか」、「まずは、実施可否を聞くべきではないか」という意見が寄せられたことがある。私は、1回目で具体的に日時の可否を聞かれることを好むが、いきなり聞かれることに抵抗感を持つ上司もいよう。だとしても、2往復を終えて、来週はOKということまで掘り下げた後に、一気に日時を絞るこむべきだった。

 にもかかわらず、そこで、「来週のいつがよろしいでしょうか」と、拡大質問をしてしまうことが、また、そこから2往復のやりとりを無駄にしてしまうことになる。拡大質問とは、「来週のいつがよいですか」とか、「何が好きですか?」というような、答え方が何通りもあり、やりとりが拡散してしまう質問のことだ。せっかく、限定質問で絞り込める方向になったとしても、その後に、拡大質問をして、答えを拡散してしまっては、やり取りを収束できないことになる。

◆「ちょい足し」で無礼なメールにはならない

部下:「打ち合わせをさせていただきたいのですが、○月○日の14時から15時はいかがでしょうか」

上司:「あ、その時間は、避けたいな」

部下:「では、15時から16時はいかがでしょうか」

上司:「OKだ」

 はじめから、限定質問を一歩踏み込んで実施していれば、2往復のやりとりで済むことになる。前出の、「最初のメールで日時指定することは失礼なのではないか」という意見に対して、最初のメール内容の表現を工夫して、失礼な度合を和らげる方法を編み出していただいた。最もシンプルで、効果がありそうだと参加者が選んだ表現が、「打ち合わせをさせていただきたいのですが、『よろしければ、例えば、』○月○日の14時から15時はいかがでしょうか」というものだ。

『よろしければ』と入れることで、相手の意向を聞いていることになる。『例えば』と入れることによって、相手の都合を尊重する意思を示している。私は、みごとな表現だと思う。そして、この手法は、どの研修テキストにも書かれていない、ごく普通のビジネスパーソンが、日々の困りごとに直面する中で、工夫して編み出した方法だ。現場のビジネスパーソンの試行錯誤こそが、スキル向上を実現するすばらしい事例だ。

 そして、限定質問というたったひとつのスキルを駆使したり、一言の表現を追加したりするという、パーツスキルを身に付ければ、言動を変えることができる典型例なのだ。

※「限定質問」のスキルは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月刊)のドリル20で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第13回】

<文/山口博>

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/4(日) 20:35

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