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国論を二分するブルキニ問題、仏大統領選の争点にも

JBpress 9/5(月) 6:10配信

 この夏、イスラム教徒の女性向けの全身を覆う水着「ブルキニ」の禁止問題を巡り、フランスで国論を二分する議論が沸き起こった。議論は収束する気配を見せず、来春のフランス大統領選の争点にもなりつつある。

■ 政権内、野党内でも意見はさまざま

 きっかけとなったのは、7月14日の南仏ニースでの「トラック突入テロ」(死者86人、重軽傷者約300人)だった。この事件を受けて、ニース市などの自治体を中心に約30の地方自治体が「治安」の維持を理由にブルキニ禁止令を発令したのである。

 これに対し、国務院(仏行政裁判での最高裁)が「自由に対する深刻かつ明白な侵害である」として「無効」の判決を出した。だが、ニース市など4自治体は「禁止令続行」を表明し、混乱が続いている。

 オランド政権の内部でも意見が割れている。マニュエル・ヴァルス首相は、ブルキニは「女性の奴隷化」の象徴だと指摘して、禁止令への賛成を表明した。一方、アルジェリア系のナジャト・バロベルカセム国民教育相(前女性権利相)は、禁止令に反対する。バロベルカセム氏は、「禁止令は人種差別発言を助長するものだ。ISのテロリストと女性の服装は何の関係もない」との考えだ。

 野党の共和党(LR)内でも、ブルキニに対する見解は様々だ。8月22日に大統領選への出馬を正式に表明したニコラ・サルコジ前大統領は、「(ブルキニの着用は)イスラム教徒による政治的な挑発だ」と指摘。特別法を制定して厳重に禁止するべきだと主張した。

 LRでは、アラン・ジュペ元首相やフィリップ・フィヨン元首相ら10人以上が大統領選への出馬表明をしており、11月の予備選で公認候補を決める予定だ。世論調査では、これまでジュペ氏の支持率が2位のサルコジ氏を大きく引き離していた。ところが、サルコジ氏が強硬に「ブルキニ禁止」を打ち出してから急激に差が縮まり、ほぼ互角になりつつある。

 ジュペ氏はブルキニ着用の是非を明確に表明していないが、「禁止法の制定は、現状では火に油を注ぐようなもの」と述べている。サルコジ氏とは異なり、あくまでもフランスの国是「非宗教」の原則に基づいて、イスラム教徒と対話を重ねて慎重に決めるべきだという立場である。

 LRの予備選はサルコジとジュペの一騎討ちになるとみられるが、ブルキニに対する両者の取り組み方を党員たちがどう判断するのか、非常に興味深いところだ。

 この問題には、国連など国際社会も関心を寄せている。ちなみに諸外国の反応は、概ね「禁止には反対」の論調である。国連人権高等弁務官事務所は8月30日、禁止令は「イスラム教徒に烙印を押すことを増長する」人種差別に当たると糾弾し、「ブルキニを禁止しても治安状況は改善しない」と指摘している。

■ ブルキニ着用は「非宗教の原則」に抵触? 

 ブルキニの禁止を叫ぶ人々は、「何かを隠していても分からない」という治安上の問題や、海やプールが汚れるという衛生上の問題に加えて、フランスの憲法に反していると指摘する。

 フランスの憲法は第1章で、中世の血で血を洗う宗教戦争の教訓や、カトリックの政治的影響を排除する目的から「フランスは不可分で、非宗教、民主的かつ社会的な共和国である」と定義し、「非宗教」(あらゆる宗教から独立していること)の原則を宣言している。ブルキニ禁止に賛成する人々の多くは、ブルキニの着用がこの「非宗教の原則」に抵触するという。

 イスラム教徒の女性が被るスカーフ「ヘジャブ」に関しては、15年間にわたる長い論議の末、2004年に「公共の場や教育の場で宗教色の強い服装やシンボルを着用することを禁じる」法律が制定された。学校にイスラム教徒のスカーフを被って出席する女子生徒が増えてきたからだ。

 この時も、イスラム教国はもとより日英米など諸外国から、「宗教弾圧だ」「信教の自由に抵触する」「女性の自由を束縛している」などの非難が巻き起こった。「フランスのスローガン『自由、平等、博愛』に矛盾している」との指摘も多かった。

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最終更新:9/5(月) 6:10

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