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滝沢秀明、“真顔”で笑わせる凄さーー『せいせいするほど、愛してる』で示したアイドルの新境地

リアルサウンド 9/6(火) 6:10配信

 コメディ俳優の多くは、表情の豊かさやリアクションの滑稽さで笑わせるイメージが強く、個性的な顔立ちがそのまま武器となるケースもある。一方で、容姿端麗なアイドルが同じことをした場合、どこか白々しい印象となり、あまり笑えないことも少なくない。ましてやジャニーズの滝沢秀明ほどのイケメンともなれば“顔芸”で笑いをとるのは困難にも思える。しかし、8月30日に放送された『せいせいするほど、愛してる』第7話では、そんな固定観念を覆す滝沢ならではのギャグが披露され、視聴者を驚かせた。

 第6話のラストでは、三好海里(滝沢秀明)と栗原未亜(武井咲)が空港で手をつないで歩いているところを、三好の妻である優香(木南晴夏)らに目撃されてしまい、未亜は優香に「この泥棒猫!」との罵声とともに平手打ちを食らわされてしまった。この件が原因で、第7話は海里が急遽大阪に転勤となってしまうところから始まる。勤め先であるティファニー社の社長からも、直々に不倫関係の解消を迫られた未亜だったが、諦めきれずに、自分にアプローチを続けている宮沢綾(中村蒼)とともに、知人の結婚式にかこつけて大阪へと向かう。そして、優香の付き添いで海里が通院している病院を訪れると、案の定、4人は鉢合わせることになるのだった。

 また、平手打ちの展開かと思いきや、優香はなんと2人を自宅に招待するという。“地獄の晩餐会”の幕開けだ。不気味にハンバーグを捏ねながら、自分と海里がどんな風に出会ったかを、未亜に対して滔々と説明する優香。4人で食卓を囲みながら、優香は「二度と会わないって誓ってくれたら、わたしもことを荒立てたりしないよ」と、猫なで声で未亜に詰め寄る。そんな状況を見かねた海里は、優香が記憶喪失になる前、すでに離婚することが決まっていたことを明かす。すると優香は発狂、ナイフで自害をほのめかす。そして、その迫力に気圧された未亜は、とうとう海里との恋路を諦めることを宣言するのだった。

 まさに怒涛の展開で、優香役である木南晴夏の独壇場ともいえるシーンだった。木南晴夏は個性派女優として知られているが、その表情の豊かさは彼女の大きな武器である。今回はカッと目を剥いた表情で、まるでホラー映画のワンシーンのような恐ろしさを醸し出していたが、恐怖と笑いは紙一重というように、彼女はコメディエンヌとしても実力を発揮するタイプだろう。

 そんな木南晴夏の演技と対照的だったのが、今回の滝沢のエアギターシーンだ。東京に戻った未亜は、すっかり恋を諦めて部屋にこもっていたのだが、海里はその後を追い、彼女の自宅を訪れる。しかし、未亜が会うことを拒んだため、海里はひとり東京の自宅へと戻り、その感傷をエアギターにぶつける。ところが、ルームシェアしている真咲あかり(水沢エレナ)が、海里が大阪転勤する前に未亜に宛てた置き手紙を発見したことから、事態は急展開。海里の本当の気持ちを知った未亜は、急いで彼の自宅へと向かい、合鍵で部屋へと入る。そして、海里のエアギターを目撃してしまうのだ。

 いつにも増して情熱的なプレイを披露していたが、未亜の姿を見た瞬間、すっと真顔になり、「コーヒーでいいか? ブラックしかないけど、いいよな」と誤魔化す海里。その表情の変化に、思わず吹き出してしまった視聴者は少なくないだろう。未亜が「いまのはなんですか?」と、質問しても、いつもの落ち着いたトーンで「夢でもみたんじゃないか?」と返すばかりだ。その真面目な表情が、かえって可笑しい。

 思えば本作での滝沢は、どんなに現実離れしたシチュエーションも、クールな表情で平然とこなしてきた。たとえば第1話では、未亜をお姫様抱っこするシーンがあったが、本作のプロデューサーを務める伊與田英徳氏によると、武井は思わず笑ってしまったにも関わらず、滝沢は真面目な顔でやりきったそうだ。(参考:『滝沢歌舞伎』で感じた大人な“役者・滝沢秀明“を伝えたい -『せいせいするほど、愛してる』伊與田P(後編))

 ファンタジーを真顔でやりきるスキルは、もしかしたら滝沢が長くアイドルを続ける中で培ったものかもしれない。そして本作では、そのポーカーフェイスが様々なシチュエーションで活かされていると感じる。今回のエアギターからの真顔は、滝沢だからこそ成立する笑いで、今後の役者人生においても、唯一無二の武器となるのではないだろうか。

松下博夫

最終更新:9/6(火) 6:10

リアルサウンド