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ロボットに「目」を授けた男、金出武雄:Meet the Legend

WIRED.jp 9/6(火) 11:10配信

友人とフレンチレストランでワインを片手に夕食を楽しんでいるときのこと。友人はそのワインを気に入ったようで、スマートフォンを取り出し、ボトルのラベルを撮影し始めました。するとディスプレイには、即座にそのワインの名称や醸造所、ブドウの品種が表示されます。さらに値段やレヴューまでもが映し出され、おまけにそのまま購入もできる、というのです。
このワインのラベルを“読んだ”のは「コンピューターヴィジョン」を使ったスマートフォンのアプリケーションです。カメラを含むハードウェアと、インターネットと連携した視覚情報処理の進化は、人間に、その目以上の機能をもった「ロボットの目」を授けたといえるでしょう。

【金出武雄の研究を振り返る|顔認証、自律走行車、VR...その驚くべき業績の数々】

わたしの博士論文は、コンピューターによる人間の顔認識システムに関する「世界で最初の」論文でした。たった1枚のデジタル画像が大変な財産とされた、40年も前のことで、10枚のデジタル画像を処理できれば「大規模な実験」だといわれていた時代です。

いまにして思えば、画像の入力から特徴抽出、判別までをコンピューターで自動的に行い、十分なデータによる実証を試みたそのときから、わたしは、世界をこのロボットの目を通して見つめてきたのかもしれません。

▼「何の将来性があるのか」

わたしがアメリカに渡ったのは、1980年のことです。研究員として務めることになったカーネギーメロン大学(CMU)は、当時から、コンピューターサイエンスにおいてMITやスタンフォード大学に比肩する存在とされていました。

2015年のいま、グーグルの自律走行車がシリコンヴァレーの公道で試験走行を始めていますが、わたしたちのチームは95年にピッツバーグからサンディエゴまでのアメリカ横断を、自動運転で試みました。全走行距離3,000マイルのうち98.2パーセントを運転したのは自動運転エンジン「Navlab 5」に搭載されたコンピューターヴィジョンのプログラムでした。カメラと3次元センサーで周囲の状況を把握し、障害物を見つけ、危険を察知すれば停止する機能を備えていました。

この技術を見たほかの研究者たちからは、よく「ドクターカナデ、こんな研究に何の日常性が、何の将来性があるのですか?」と訊かれたものです。当時、自律走行のテクノロジーを軍用以外の目的で考える人などいなかったのですね。

有名なコメディアンのジェイ・レノはわたしたちの「No Hand Across America」の記事を新聞で読んで、こんなジョークを思いついたと聞いています。曰く、「CMUの研究者が世界で初の、運転中に新聞を読んだりコーヒーを飲んだりできるクルマを開発したってさ。しかし、これがどうして世界初だっていうんだ? ロサンゼルスでは昔から皆やっているよな?」

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最終更新:9/6(火) 11:10

WIRED.jp

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