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「『シン・ゴジラ』は第1作の精神を踏襲している」宝田明と水野久美が語る“ゴジラ”

おたぽる 9/6(火) 20:03配信

 大ヒットとなっているゴジラシリーズ最新作『シン・ゴジラ』。ゴジラはなぜ人々を魅了する理由とは何なのだろうか。ゴジラ映画を支えてきた俳優・宝田明、そして“特撮ヒロイン”として名高い女優・水野久美に話を聞いた。

■『シン・ゴジラ』は第1作の精神を踏襲している

――特に第1作の『ゴジラ』と比較して、『シン・ゴジラ』をどう考えていますか?

宝田 第1作のゴジラも、海底で静かに眠っていたところ、洋上の水爆実験で彼自身も被爆するという悲しい運命を背負っているので、日本の国民と同じような立場なわけですよ。それで、第1作では、日本は核全面廃止、原爆実験も止めてほしいと、全世界に発信しました。今度の『シン・ゴジラ』も国連は熱核攻撃によってゴジラを殺してしまえという立場でしたが、それに対して、日本は血液凝固促進剤で凍結させてしまおうという、生物を爆弾で殺してしまう残酷なことはしないという立場なんですよね。それは、第1作と精神は同じだと思います。環境破壊に反対する日本、それから生物の生命を完全に絶つようなことはしないという立場は、精神としては全部踏襲しているのではないかな。東宝が満を持して作ったものとしては、出来は最高に良かったと思います。

――『シン・ゴジラ』で描かれたドラマは、いかがでしたか?

宝田 監督さんの演出によるし、緊迫した状況だから、そういう台詞のしゃべり方をしているのだと思うけど、少し台詞が早過ぎて、よくわからないところがあるんだよね。緩急よろしくやった方がよかったと思います。緊張した感じで、テンポは出たと思うけど、あまりテンポばかりを気にしてもね。緩急があってこそ、速いテンポが活きてくるので。技術的な話では、少しそういう気がしました。

――『シン・ゴジラ』のゴジラは、見た目も尻尾が大きかったり、上陸後何段階も進化したりと今までにないゴジラ像がみられましたが、どう感じましたか?

宝田 真摯にゴジラと向き合い、凝った作りをしていますね。そういう意味では、相当考えていらっしゃるなと思いました。

――ゴジラは、映画ごとにディテールが異なりますが、気に入っているゴジラは何作目ですか?

宝田 自分が出演しているからではないですが、それはやっぱり第1作がベストです。全体を通してみて、第1作が与えたものは大きかったと思います。あの当時は、CGがなかったですからね。それに第1作はモノクロだったんですよ。今はカラーで、時として現実離れしてしまうというのがあると思うのです。モノクロの色調は奥が深く、レンブラントの絵画のようにコントラストがすごくよく描かれていたり、水墨画みたいに真っ白な白もあれば淀んだ白もあるように、白にもいろいろあったりします。だから、やっぱり僕は、苦しみが多かった作品でもあるので、第1作に愛着を感じています。

――当時、怪獣映画は色物でしたからね。

宝田 あの当時は、アメリカで『キングコング』(1933年)があったくらいでした。ただ、やはりゴジラは彼自身も被爆者という立場があるので、ゴジラの鳴き声にも悲しみを感じたんです。今でもそうなんですよ。単なる破壊者としてのゴジラではなく、哀愁を帯びた、私たちも人間が作った核によって被爆した人間だという事実があったからこそ、日本でも第1作は大勢の観客の支持を得たわけなのです。

――話は変わりますが、ゴジラのアニメ映画化も発表されましたね。

宝田 ひとつのキャラクターがアニメになっても、それはそれでいいのではないかな。ただ、第1作にあったような、核に対する人間の悲しみやゴジラ自身が被爆者という立場を間違えないように持っていけば、荒唐無稽な破壊者で終わることはないと思うので、そこはしっかりと守ってほしいです。

――では、最後にうかがいます。ゴジラとは何でしょうか。

宝田 60年前、立場は違っても共に主演を演じたので、僕はゴジラとはクラスメイトだと思っています。今、彼が世界中の大ヒーローとなって君臨しているのは、“極悪非道のゴジラ”ではなく、人間と同じように悲しみを抱いた存在だからです。また、ゴジラを英語で書くと、「GODZILLA」となり、期せずして最初の3文字が、「神(GOD)」という言葉につながります。だから、僕は荒唐無稽な乱暴者のゴジラではなく、神が使わした人間に対する使者、“聖獣”だとしか考えられませんね。

■「X星人を今、演じてもあのころのままだと思う」

――ゴジラのアニメ映画化が発表されましたが、どのように思われますか。

水野 アニメになっても、面白いのではないでしょうか。何でも試みていいんじゃないかしら。見てみたいですね。アニメ化されると、小さいお子さんも見られるからいいと思います。それで、すでにもっと子どもたちも興味を持つのではないかしら。ただ、それだけゴジラが人気者ってことなのよね。

――水野さんにとって、ゴジラとは何でしょうか。

水野 地球を守ってくれる平和の守り神かな。だって、みんなに愛されるし、あんまり怖くないじゃないですか。みんなに戒めもありますし。襲うということは、何かを訴えていることだと思います。そう思って、ずっとゴジラを見ているけど、ゴジラはかわいいし、愛嬌があるので、私はゴジラが好きですね。

――ハリウッドでも映画化されていますが【編注:『GODZILLA』(1998年)、『GODZILLA ゴジラ』(2014年)】、ハリウッド版のゴジラはいかがですか?

水野 環境が違うからかな。やはりゴジラは、日本人にピッタリだと思います。ピッタリというか、雰囲気がそうなのよね。アメリカでも『キングコング』とかがあるじゃないですか。ああいうのは、アメリカにピッタリだと思いますね。

――ゴジラシリーズの中で、一番日本らしいと思う作品はありますか?

水野 みんなそれぞれ違うので、それぞれが試されているのだと思います。だから、段々といいものができているじゃない。その時代に合ったゴジラが作られているから、そのときの見る人の心によって違うと思います。『シン・ゴジラ』は、まだ見ていないので、わからないけれど、宝田さんはみんなちょっと緊張し過ぎて、早口だと仰っていたじゃない。昔の作品は、みんなのんびり優雅に撮っていたの。お天気じゃなかったら、撮らない、みたいに。今は、どちらかというと、撮影日が限られているので、急いで撮る場合が多いから、昔の方が落ち着いていた作品ができていたと思います。

――では、人々を魅了してやまないゴジラの魅力とは何だと考えていますか?

水野 愛嬌があるのよ。すごく愛嬌があって、それでいて、強そうでしょ? 強うそうで、愛嬌があってかわいいじゃない。私、ずっと見ているうちに、あの顔がかわいくみえてくるの。だから、それですね。

――ゴジラの顔は、初期は丸く、そこから段々と細長くなっていきますが、どの時代の顔が一番かわいいと思いますか?

水野 長いよりは、丸い方が好きかな。でも、作品によっては、長い顔がいい場合もありますよね。私はゴジラ全体をかわいいと思っています。目を見てもかわいいし。だから、ゴジラって、とってもいいの。日本人が大好きというのは、そこじゃないかしら。

――話は変わりますが、相変わらず、お美しいですよね。 

水野 あまり変っていないから、『怪獣大戦争』のころのままだと思う。あのX星人の役をもし今やったら、顔はしわがあっても声なんかは同じだと思うわ。

――最後に、その美しさの秘訣を教えてください。

水野 何もしていないですよ。前日まで、スッピンで認知症の役を演じていたくらい。私はストレスをためないようにしているから、それがいいんじゃないかしら。のんびりというか、楽天家なの。それで、あまりストレスをためないから、顔をきれいにしようとか何もしていないし、顔を洗って、勧められた化粧品を付けているだけ。あとは、私、絵を描くのが好きだから、自分の顔をキャンバスにして描くメイクが好きなの。だから、今日はゴジラのイベントだから、個性的なウィッグで、ちょっと強い、はっきりしたメイクにしてみたのよ。
(取材・文/桜井飛鳥)

最終更新:9/6(火) 20:03

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