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米国へのメキシコ人不法移民、10年で8割減 「壁」は不要?

Forbes JAPAN 9/6(火) 13:30配信

米国とメキシコの国境に壁を作るという主張の根拠は、「国境を越えて不法入国してくるメキシコ人の数が増加し続けている」というものだ。



だが、米国政策財団(NFAP)が先ごろ発表した調査結果によると、米南西部の国境で不法入国により逮捕されるメキシコ人の数は、実際には2005年から2015年までの間に82%減少している。2016年中の逮捕者数も、この間とほぼ同じ水準だ。

米南西部国境での逮捕者はこれまで、米国全体での不法入国者数を計る指標とされてきた。そして、メキシコ人の不法移民の数は、過去およそ40年間で最も低い水準にある。

不法入国によるメキシコ人逮捕者数(南西部国境)


出典:米税関・国境警備局

不法入国者の数に影響を及ぼすのは、法の執行と市場環境、人口動態、(外国人の合法的な)入国だ。ここ10年ほどの間にメキシコ人の不法移民が減少したことには、これらのうち2つの要因が深く関わっている。

まず一つ目は、2007年から始まった米国の「大不況」とそれに先立つ景気の減速。二つ目は、人口動態の変化だ。プリンストン大学のダグラス・マーシー教授(社会・公共政策学)によると、「実際のところ、メキシコからの密入国者は1999年から減少し始めていた。国境での取り締まりを強化したからではなく、メキシコの人口転換のためだ」。

また、「1960年代におよそ7だったメキシコの合計特殊出生率はその後、急速に低下。最近では2.25にまで減少している」という。教授はさらに、「移住を検討するのは若者だということを考えれば、出生率は重要な点だ」と指摘する。「13歳以上になると、移住を考える割合が急速に高まる。移民に最も多い年齢は20歳前後で、その数は30歳までに低水準となる」という。

「壁建設」は賢くない

米税関・国境警備局によると、米南西部のメキシコ国境で2005年度中に逮捕された不法移民は約100万人だった。だが、2015年度は18万6,017人だった。また、2016年度の最初の10か月間では、この人数は16万196人となっている。

合法的な新たな措置が必要

2011年以降、季節農業労働者向けの「H-2Aビザ」のメキシコ人の取得者数は増加している。これは同時に、同国からの不法入国者が減少していることを示すものとも考えられる。以前なら不法入国を試みていたであろう人たちがビザを取得し、合法的に入国するようになっているとみることができるからだ。これは、前向きな変化と捉えられる。

H-2Aビザの発給件数の増加につながっているのは、米国の農業分野での季節労働力の不足だ。2011年度のH-2Aビザの発給件数は5万5,384件だったものの、2015年度には10万8,144件に増えた。米国の農業分野にとって現在、問題となっているのはビザの申請から発給までの手続きに時間がかかっていることだ。

高い技術を必要としない仕事に就きたい外国人が米国内で合法的に就労するための新たな方法を検討せず、壁を建設しようとすることは、ただ単に現状維持を継続させるだけだ。壁の建設は、不法入国者を減らす方法としての賢い考えではない。また、新しいアプローチでもない。

Stuart Anderson

最終更新:9/6(火) 13:30

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