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なぜ米Uberは中国市場から事実上の撤退を余儀なくされたのか?

HARBOR BUSINESS Online 9/6(火) 16:20配信

 8月1日、配車サービスの米Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)の中国事業はUber China(中国名・優歩)が、中国の配車アプリ最大手「滴滴出行」(Didi Chuxing、ディーディー チューシン、北京市)により株式交換を使った合併方式で買収されることが発表された。滴滴出行は、ユーザー3億人以上の世界最大の中国配車サービス市場でシェア9割を占める。シェア2位のUber Chinaは、自力開拓を断念することになった。

 Uber Chinaは、登録運転手には助成金を与え、タクシー代わりに配車を求める消費者には割引料金を適用し、年間10億ドル以上の赤字を垂れ流してきたが、滴滴出行のシェアを奪うことができなかった。

 結局、Uber Technologiesは、Uber Chinaの事業を滴滴出行へ譲渡して、滴滴出行の株式を取得・保有することになった。

◆UberのCEOトラビス・カラニックのfacebookポスト

 Uber のCEOであるトラビス・カラニックは、フェイスブックで、Uber China事業譲渡に関する説明をポストしている。

◆なぜUberは敗れたのか?

“Team, I wanted to let you know that we have reached an agreement to merge UberChina with Didi Chuxing. UberChina’s value will represent a 20% stake in the combined entity with Uber being Didi’s largest shareholder. Let me explain why we are doing this.”

(チームへ、Uber Chinaが滴滴出行と合併する合意に達したことを伝えたい。Uber Chinaの企業価値は合併新会社の20%に相当し、Uberは合併新会社の最大の株主となる。なぜ我々が事業譲渡を実施したのか説明したい。)という文章から始まるこの投稿は、「中国市場で経験を積むことができてよかった」というような論調で終始しており、「なぜ我々が事業譲渡を実施したのか」の理由がはっきりとは記されていない。

 しかし、次のセンテンスからは、その事情を察することができるように思える。

”Sustainably serving China’s cities, and the riders and drivers who live in them, is only possible with profitability.”(中国の都市や、都市に住むライダーやドライバーに対してサービスを提供するサステナビリティ(持続可能性)は、収益性が伴うことをもって、はじめて可能になる。)

 端的に言えば、「収益性が見込めないため」ということだろう。Uber Chinaの収益性が低い、というよりも、赤字を垂れ流してきたのは、ドライバーに対する補助金によるものだと言われる。運転手に補助金を出し、契約車両を増やそうとしていたのである。強烈なシェア確保の競争のための施策が裏目に出た結果だと言える。

◆滴滴出行の勝因

 では、Uber Chinaのライバルであった滴滴出行は、なぜ勝者になりえたのであろうか?

 滴滴出行の勝因は、登録運転手の多さにあると言われる。車があれば原則誰でも登録でき、「白タク」を含め1500万人以上の運転手が滴滴に登録し、タクシーが捕まりにくい大都市や公共交通機関が乏しい地方などでの利用拡大につながっているとしている。

 ウーバーは上海など主要都市でしかサービス展開できていないとされる。高級路線を狙い、運転手側に「5年以内の新車に限る」「10万元(約150万円)以上の中高級車を使わなければならない」などの制約を課してきたため、運転手が集まらず、使い勝手も改善しない悪循環が続いていたという。(参照:日経新聞)

 また、2016年7月に中国政府は、相乗りの配車業を合法としたことも滴滴出行の勝利を後押しした。というのも、配車事業の新規則では、シェア争いのために激化していた「補助金」競争を抑止するために、採算割れとなる営業活動が禁止されていたからだ。そのため、シェアの小さいUber Chinaの受けた打撃の方が大きく、滴滴出行の勝利が決定づけられたのだ。

 ただ、Uberの中国撤退は、完全な敗北というわけではない。滴滴出行の20%の株式を保有し、今後の中国事業拡大の恩恵を受けられるのは変わらないからだ。また、中国での大赤字が無くなり、UberのIPOの実現性が高まったとも言える。同社の今後の展開を注視していきたい。

<文/丹羽唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/6(火) 19:52

HARBOR BUSINESS Online

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