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「幽霊役員」が提訴、「リプロセル」は上場失格!

月刊FACTA 9/8(木) 0:55配信

「幽霊役員」が提訴、「リプロセル」は上場失格!

ジャスダックに上場するバイオベンチャー、リプロセルが未払いの報酬をめぐり「幽霊役員」から裁判を起こされている。そこからは同社のあまりにお粗末なコーポレートガバナンスが浮かび上がってくる。

リプロセルはSBIグループなどの出資を得て、2013年6月に上場した。発明者の山中伸弥氏がノーベル賞を受賞したことで有名なiPS細胞(人工多能性幹細胞)に関する研究試薬製品などが事業の柱だ。

このため同社については早くから話題が沸騰、上場直後には直前期の実績PER(株価収益率)で約2万7千倍(単独ベース)という天文学的な高値をつけ、時価総額が1500億円を超えた。赤字続きで株価はその後低落したが、それでも最近のバイオ株ブームを受け今年に入ってから時価総額が400億円に達する場面もあった。

さて、件の裁判記録などによると、「幽霊役員」とはこういうことだ。リプロセルは昨年5月14日、取締役の片山浩美氏が、定時株主総会が開かれる6月26日付で退任の予定であるとの適時開示を行っている。正確には16年6月末の次回総会までの任期(2年間)を約1年残し途中で辞任するというものだ。

発表の7日前、同社の横山周史社長と片山氏、それにもう1人の取締役の計3人が会食している。話題は片山氏の健康問題。上場時の過労もあり同氏は体調を崩していた。その場で取締役辞任の方向が確認されたようだ。5月14日、取締役会は片山氏が経営管理部担当を外れることを決議、その後、片山氏は出社していないとされる。

ところが翌6月に入り話がこじれた。片山氏は取締役辞任後も社員として雇用継続を望んだが、会社側が認めなかったからだ。会社側は昨年7月下旬に片山氏に対し書面で辞任届提出を請求しているが、その後も出されずじまい。結果どうなったか。リプロセルの法人登記簿を見ると、今も片山氏は取締役のままなのである(今年6月末で任期切れだが、その登記もなされていない)。そして今年6月、片山氏は昨年7月以降の未払い役員報酬約1千万円の支払いを求め東京地裁に提訴した。

他方、会社側は昨年5月の適時開示をその後も訂正していない。それに加え、同年6月末に関東財務局に提出した有価証券報告書の役員欄には片山氏の名前がなく、その後の提出書類でもそれを踏襲している。同社は昨年10月に新株予約権の第三者割り当てを決議しているが、その時の取締役会議事録を見ると、片山氏は取締役の総数に含まれていない。つまり、リプロセルは対外的にも社内的にも片山氏が取締役を辞任したものとして扱い続けているのだ。

当たり前の話だが、取締役の選任は株主総会の決議によるもので、その意味は重い。本人の明確な意思表示がない限り、経営陣が勝手に任期途中で辞めさせることはできない。ふさわしくない人物と考えるなら株主総会で解任の決議をとる必要がある。が、リプロセルはそうした手続きもとっていない。「幽霊役員」の存在を隠蔽してきたも同然であり、厳密には有報虚偽記載の可能性すらある。

これらについて会社側に書面で見解を求めたが、締め切りまでに回答は得られなかった。果たして上場企業の資格があるのか、それ自体が疑わしい。

ファクタ出版

最終更新:9/8(木) 0:55

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