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モノを買った先の付加価値をどう作る?“コト消費“時代の商品企画術

@DIME 9/8(木) 11:31配信

この連載では、自分が過去に考えてボツになった企画、すなわち「ボツネタ」を振り返ることで見えてくるビジネスアイデアのつくり方をご紹介します。

昨今、「モノ消費」から「コト消費」へシフトしていると言われています。所有する「モノ」は減り、体験や得られる価値を欲する傾向にあるということです。多くのことがスマホやシェアリングでできるようになったり、必要ならネットで何でもすぐに買えるようになったりしたことで、モノの所有欲は減少したのかもしれません。しかし市場に目を向けると、決してモノが売れなくなったわけではありません。モノの付加価値に目が向くようになり、売れる商品が厳選されてきているというイメージです。モノを買った先の付加価値になる「コト」がある商品を開発できれば、ヒットにつながります。今回はこの「コトづくり」の企画術についてお話します。

<今回のボツネタ>

【商品名】血液型フレンドストラップ

【当時考えた商品概要】

血液型が同じ人に出会うと、親近感がわきます。そこで、さりげなく自分の血液型を示して、血液型を教え合えるストラップを開発します。AB→海老、A→エイ、O→王(おう)、B→尾(びー)を形どったかわいらしい形。同じストラップを持っている人を見つけたら、「あー、あなたも○○型なんだ~♪」と話しかけて仲良くなりましょう。友達の輪が広がる、画期的ストラップです!

【ボツになったポイント】

・血液型をこんな形でアピールしたくない
・尾が「O」か「B」かわかりづらく、見た目もわかりづらい

この商品は10年ほど前に、「コトづくり」という言葉を初めて聞いたとき、そういう玩具商品を作りたいと思い、頭に浮かんだネタです。当時多くの人がつけていた携帯ストラップは、会話のきっかけツールでもあったので、「血液型何型?」という会話から仲間づくりが始まるストラップで、仲間の輪が広がるという体験価値をつくれないか、と考えました。しかし、商品企画自体に魅力を付加することができず、それ以上のことを深く考えないままこのネタはひっそりとお蔵入りにしました。

今振り返ると、この企画は、「コトづくり」に至っていません。「モノ」を「コト」にするとは、一体どういうことなのでしょうか?

■「コト」を作るには、そこで起きる会話を徹底的に考える

商品を買ったときに、体験が伴うのは当たり前で、それはまだ「コト」であるとは言えません。では、「コト」とは何なのか。

僕は、「コト」とは、「コミュニケーション」のことであると捉えています。体験というよりも、体験の先に誰とどんな会話が起こり、それにどれだけの価値があるか、です。

例えば、「コトビジネス」の成功事例としてよく挙げられる「スターバックスカフェ」。コーヒーだけでなく、価値のある時間・空間を提供していると言われ、まさにモノではなく「コト」を売っている、と言われていますが、実はスタバが本当に提供しているのは、スタバで過ごした時間のことを他の人に話す満足感です。これが、本当にコトビジネスと呼べる商品の正体です。

「コト」を作るためには、どんな体験を提供できるかを考えるのではなく、その商品を買った結果、誰とどこでどんな会話が起こるのかを具体的にシミュレーションします。例えば文房具を企画する場合、コト=体験と捉えて企画を考えると、「書き心地の満足度が高いペン」「人を喜ばせるメッセージ付箋」「スケジュール管理や記録に便利なノート」など、体験が伴った商品案が出てきたりしますが、それだけではまだ「モノづくり」の域を出ていません。

コト=会話と捉えて考えていくと、例えば「文字が上手くなる文房具」の企画をするとしたら、字が下手だった男性が仕事上で書類を人に渡したとき、「字うまいんですね!」と言われ、そこから発展する会話の盛り上がりを最大化するための商品設計をします。ポイントは以下の3つです。

・持っていることを人に言いたくなるか
・人が持っていたら、ツッコみたく(それについて話しかけたく)なるか
・発生するテッパンの(象徴的な)会話は何か

コトづくりとは、人から人に伝染していくビジネスを作ることです。その商品について人に言いたくなり、自然に楽しい会話が生まれ、勝手に人から人へ伝わっていく。そのような商品になっているかどうかを検証しながら、商品を企画開発していきます。

コミュニケーションの種類を大きく分けると、日常会話(オフライン)と、インターネット上での会話(オンライン)がありますが、それぞれでどんな会話が起こるかを設計することも重要です。現実で会話が起こりにくくても、ネット上で写真を上げたい、シェアしたいという欲求を最大化した商品にするという方向性もあります。「これを買ったらこんな風に人にアピールできるな」「いいね!と思われるな」という想像が働きやすければ、それは売れるモノになります。

では、ボツにならない「コトビジネス」を改めて考えてみましょう。

■ボツネタ「血液型フレンドストラップ」をコトビジネスに進化させる方法

前述の「血液型フレンドストラップ」は、会話を作ろうとした考え方は間違っていませんが、こんなモノをきっかけにして血液型の話をアピールしたくないし、モノとして伝わりづらいので誰にもツッコまれないし、大した会話も広がらない。3つのポイントすべてを外しています。

もし今新たに企画しなおすとしたら、血液型別ノートを作りたいと思っています。仕事のアイデアづくりに役立つノートに特化したいですね。性格によって、その人に適したアイデアの作り方があります。大雑把な人と几帳面な人では、お薦めの企画の作り方が違いますし、逆に、自分と別の血液型ノートをあえて使い、自分に合っていないアイデアの作り方を試してみるのも面白い。

この商品が起こす「コト」、すなわちコミュニケーションは、仕事上で4種類の血液型のメンバーを混在させたチームを組ませることで起きる化学反応です。4種類のノートを使って仕事をしているメンバーが、それぞれのアイデアを共有しながら企画を作っていくと、面白い結果や会話が生まれます。他の人が使っているノートを見て、「あ、○○さん、O型なんですね~」「いや、実はA型なんだけど、自分的に使いやすいから今O型ノート使ってるんだよ~」など、この商品から発生し、買った人が快感を覚えるコミュニケーションを深くイメージし、一番多く発生してほしい、いわゆる「鉄板」の会話を想定する。そしてその会話を起こさせるためにどんな商品を作ってどのように世の中に届けていくかを、商品作りに落とし込んでいく。これが、モノづくりを「コトづくり」にする方法です。

ぜひ皆さんも、ご自身のビジネスに当てはめて、世の中にあふれさせたい会話から作り始める商品開発を実践してみてください。

■今回のまとめ

・「モノづくり」を「コトづくり」に進化させるためには、そのモノを使うことによって発生させる楽しい会話を設計する。

・会話を広げる3つのポイント「人に言いたいか」「他の人が持っていたら、そのモノについて話しかけたいか」「最も多く生まれる鉄板の会話は何か」を深く考えたモノづくりをすれば、商品は「コト」になり、広がっていく。

文・イラスト/高橋晋平

@DIME編集部

最終更新:9/8(木) 11:31

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