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日本の低成長率の原因は、少子高齢化ではなく「仕事嫌い」?

Forbes JAPAN 9/8(木) 10:00配信

「日本人は仕事熱心」というイメージが強いが、「労働=苦痛」と考える人が増えている。会社が嫌いなら、生産性など上がるはずもないー。筆者が考える経済成長のヒントとは。



今月は2つの質問を通じて、経済について考えていただこうと考えている。

ーあなたはコンビニで150円のペットボトルのお茶を買った。その150円は、レジに収まったあと、どこへ行くのか?

1. コンビニの店員
2. 飲料メーカー
3. ペットボトルのパッケージデザイナー
4. 配送するドライバー

私は明治大学で、起業や起業家精神について学ぶ「ベンチャーファイナンス論」の授業を受け持っている。学生たちに同じ問題を質問したところ、上記の選択肢のように、さまざまな答えが返ってきた。

学生A「コンビニの売り上げになるので、店員の給料になる」

学生B「サントリーやアサヒなど、お茶をつくったメーカーの売り上げになる」

学生C「ペットボトルのパッケージデザイナーにも支払われるはず」

学生D「それだったら、コンビニに商品を運ぶ運送業者の利益にもなるのでは?」

じつは、どれも正解なのだ。この問題の正解は一つではなく、ほとんど無限にある。あなたは、どのような人、あるいは会社をイメージされただろうか?

あなたが支払ったペットボトルの代金はまず、コンビニ店舗の売り上げとなる。すると、お店で働いている人の給料にも反映される。仕入れ元のメーカーの売り上げにもなるが、茶を栽培する農家の利益にもつながっている。容器の原材料は石油なので、石油会社の売り上げにもなる。製品として売り出す際には、パッケージのデザイナーやラベルの印刷業者も必要だ。ペットボトルは、メーカーからお店に輸送するので、輸送業者のドライバーの給料にもかかわってくる。

こうして挙げると、キリがない。あなたがコンビニのレジで特に意識することなく払った「150円」というお金は、これだけの人たちに分配されているのだ。

無数の人々の仕事がつながり、その間でお金が循環しているー。それこそが、「経済」の構造なのである。

このような話は当たり前すぎて、日常の生活ではなかなか意識されない。しかし、経済とはこうしたカネ・モノ・サービスの循環を考えることである。「1本のペットボトルも多くの人たちのバトンリレーの結果、そこにある」と、意識の片隅に置けば、コンビニでペットボトルのお茶を買うときにも、自然と店員に「ありがとう」という言葉が出てくるはず。感謝の言葉は、店員だけではなく、バトンリレーで携わってきた多くの人たちの労働に感謝することでもある。

ビジネスパーソンや投資家として成功している方には、コンビニや居酒屋でモノを買うときに「ありがとう」という気持ちを伝えられる人が多い。そして、フォーブスの読者諸賢にこそ、感謝の言葉を伝えている人が多いと確信している。
--{労働嫌い、会社嫌いが日本の大問題}--
続いての質問だ。

ーあなたは「仕事」「会社」が好きですか?

1. 好き
2. 嫌い
3. どちらともいえない

さて、あなたはどう答えただろうか?

自信を持って「好き」と答えたのならば、あなたはラッキーだ。というのも、残念ながら日本人の多くが「働くことが嫌い」で、「会社のことも嫌い」だから。

まずは、「仕事嫌い」についてデータから見てみよう。就労中の18~29歳の若者に、働く意義について尋ねたところ、「働くのは当たり前だと思う」と答えた人が全体の4割に過ぎず、「できれば働きたくない」と答えた人が全体の3割もいた(2015年 電通総研「若者×働く」調査。就労している18~29歳の若者の回答より)。

私が担当する講義でも「働く」ことのイメージについて尋ねたことがあるが、やはり多くの学生が「働くこと=ストレスと時間をお金に換えること」だと捉えていた。会社というタテ組織に自分を放り込み、上司から与えられたタスクをこなし、自由を奪われる代償として給料をもらうのが仕事、と考えている人が多い。

働くことが不幸なら、「会社嫌い」になるのも当然だ。「愛社精神」を尋ねた調査では、「組織貢献・愛着度」という項目で、日本は28カ国のうち最下位の31%だった(ちなみにアメリカは59%、ドイツは47%である。2012年 KeneXaHigh Performance Institute「従業員エンゲージメント調査」より)。

この質問であなたも仕事、会社が「嫌い」と答えたのなら、どうしてそう感じているのか、振り返ってみてほしい。会社を「人生の墓場」だと感じ、墓に片足を突っ込んだまま過ごすのは、あまりにももったいない生き方だからだ。

私は投資家として、生き生きと働く人々や会社も多く見てきた。当然のことながら、会社が好きな社員がたくさんいる会社とそうでない会社と、どちらに投資価値があるだろう。イヤイヤ働く社員が多い会社が成長するだろうか?

日本の成長率が低いのは必ずしも少子高齢化が原因ではない。働くことが嫌いな人たちが会社に多くいるからである。ならば、会社を成長させるために必要なことは、働くことをより社員にとって楽しく、充足感を味わえる場にできるようにすることではないだろうか。

藤野英人 ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。東証アカデミーフェローを務める傍ら、明治大学のベンチャーファイナンス論講師として教壇に立つ。『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(講談社刊)など著書多数。

藤野 英人

最終更新:9/8(木) 10:00

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