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「魔の月」の10月を控えて投資家がやっておくべきこと

会社四季報オンライン 9/8(木) 19:31配信

 6日に発表された8月のISM非製造業景況感指数は51.4と前月の55.5から大幅な落ち込みを記録した。小幅の低下(54.9)を見込んでいた市場にとっては幾分のネガティブサプライズになったようで、早期利上げ観測の後退を背景にドルが売られる一方、米国株は「適温相場が続く」と受け止めて上昇した。

 「米連邦準備制度理事会(FRB)は9月にも利上げに動くかもしれない」との見方が広がったのは8月26日、ジャクソンホールで開かれていたシンポジウムでイエレンFRB議長が「追加利上げの条件が整った」と講演で述べたためとされているが、市場へのインパクトがより強かったのは会合後のテレビ番組でのフィッシャー副議長の発言だ。「9月あるいは年内2回の利上げを見込むべきか」との問いに対して「その二つの質問にイエスと答えるのが整合的だ」と話したことだった。

 この会合前の同月21日、同副議長の講演の予定稿には「雇用、物価は目標に近づいている」との記述があった。7月以降、FRBのメンバーでもある他の地区連銀総裁の多くからもタカ派的な発言が相次いだが、現状ではフィッシャー副議長が最も先鋭であるような印象を受ける。実際、翌週30日には「完全雇用に極めて近い」との認識も示した。

 議長にしても副議長にしても発言の際には「データ次第」との表現を忘れない。その「データ」を見ると、今月1日に発表された8月のISM製造業景況感指数、同新車販売はともに芳しい数字でなく、翌2日に発表された雇用統計も今一つの内容だった。それに追い打ちをかけたような格好となったのが、冒頭のISM非製造業景況感指数である。

 そもそも、なぜフィッシャー副議長は先鋭化したのだろうか。確かに7、8月に発表された米国の経済指標には良好なものが目に付いた。「金融政策の正常化に向けての歩みを着実に進めたい」との思いもあるのだろう、と想像もできる。市場があまりに無警戒という面もあったのだろうが、それでも副議長のトーンは強過ぎるのではないかと疑問に感じた。

 あくまで想像の域を出ないが、副議長はいくつかの危機シナリオを念頭に置いており、それに備えて「手持ちのカードを増やしておきたい」との深謀遠慮があったかもしれない、と考えると納得できる気がした。

■ 懸念要因の「ABC」って? 

 今年の年頭、懸念要因として市場で意識されていたのは「ABC」である。年明け早々、まずは「C」、つまり中国(China)が火を吹き、よもやと思っていた「B」、英国のEU離脱(Brexit)も決まってしまった。そしていよいよ「A」、米国(America)の大統領選挙である。

 民主党クリントン候補の「メール問題」はくすぶり続けており、共和党トランプ候補との差を広げ切れていないのが実情のようだ。仮にトランプ氏が大統領の座に就くようなら、そのショック度は「Brexit」を上回ると見られている。

 「C」も政府・当局が強硬に押さえつけてはいるが、構造改革を進めれば進めるほど民間の債務問題が深刻化するという、難しい局面が続きそうだ。「B」についても年明け以降、英国がEUに対して正式離脱の通告をしても株式相場の淡い安堵感が維持されるかは誰にもわからない、というのが実情ではないのか。

 日銀と欧州中央銀行(ECB)の金融政策には、両者が否定していても「限界論」が付きまとう。なんらかの危機的な状態が出来したときにまともな金融政策を打ち出すことができるのは、日米欧三極の中央銀行ではFRBだけといっても過言ではないだろう。そのFRBにしても手持ちのカードは少ないのだ。フィッシャー副議長の先鋭化の裏側には危機感の高まりがあると言えないだろうか。

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最終更新:9/14(水) 10:01

会社四季報オンライン

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