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虐待傾向にある親が抱えているものとは?

R25 9/9(金) 7:00配信

世の中には子どもを虐待で苦しめる親がいます。その数は年を追うごとに増えていますが、平成26年度の厚生労働省調査によると、児童虐待相談における“加害者”は実母が52.4%と過半数以上。まだ子どもがいない人も多いL25世代にとっても他人事とは思えない割合です。

そこで知りたいのが、どんな人が虐待をしてしまいがちなのか? ということ。よく言われるのが「世代間連鎖」の問題です。自らが虐待を受けて育つと、自分の子どもにも虐待をしてしまうという説ですが、果たしてそれは真実なのでしょうか。国立成育医療研究センター・こころの診療部部長で、親子関係の問題や児童のメンタルヘルスに詳しい奥山眞紀子氏に話を聞きました。

「虐待における世代間連鎖というのは、あり得る話だと思います。たとえば、ある動物実験で、何のケアも受けることなく餌だけ与えて育てた猿は、自分の子どものケアがあまりできないということが分かっています」(奥山氏、以下同) 

これはなぜなのか、はっきりと証明されてはいないものの、子育て方法の継承や幼少期のストレスが体に及ぼす影響など、大きく3つの理由があると考えられているのだそう。それぞれを虐待というケースに当てはめてみると、虐待する親の深層がより鮮明に浮かび上がってきます。

●子育ては自身の経験を踏襲する

「虐待を受けたからといって、必ずしも自分の子どもにも同じようなことをしてしまうわけではありません。ただ、暴力や暴言が日常的に存在していた家庭に育っていると、暴力によって解決を図る方法が身に付き、その他の方法が分からないということがあります。たとえば子どもに言う事を聞かせたいときに、暴力で解決してしまう傾向が出てきてしまうことがあります。

しかし、虐待を受けても、子どもに同じことをしない人は大勢います。あえてその差を挙げるとすれば『自分は守られて育った』という意識があるかないか、ということでしょう。

たとえば、虐待の世代間連鎖に苦しんでいたお母さんから、『父親に虐待された時、母親の方を見たら、顔をそむけられてしまったことが忘れられない』という話を聞きました。もし母親が守ってくれていたとしたら、人に対する信頼が育ち、父親が特別なんだと考えることもできたかもしれません。また守られている体験が感情のコントロールを支えます。誰も助けてくれなかった経験が、感情コントロールを困難にしている可能性もあると考えられます」

●虐待によって、ストレス耐性に関わる遺伝子の発現が変わってくる

「良いケアを受けていないネズミの実験や、自殺した方の脳について虐待を受けていた人とそうでない人で比較した研究を見ると、良いケアを受けなかったネズミや虐待を受けて育った人の脳では、ストレス耐性に関わる遺伝子の発現が悪いというのが分かっています。つまり、幼少期の経験が生物学的なレベルで影響し、ストレスに弱くなってしまう。そのため、ストレスが掛かる場面に対処する脳機能が低下している可能性は十分にあると考えられます」

●虐待という環境に合った脳の機能になる

「人間というのは、環境に適応するために必要とされる脳の機能が発達してきます。裏を返せば必要ない脳の機能は発達しません。そのため、虐待などによって日常的に恐怖にさらされ、守られていないと、自分で自分を守ろうとして、その場限りの反射的行動が主になってしまいます。その結果、『コミュニケーション能力』や『感情コントロール』をつかさどる前頭葉の機能の発達が悪くなります。そうすると、大人になって育児をするとき、子どもの気持ちを理解できずにストレスを感じやすくなり、感情を抑制することが困難なため、行動の型として身に付いた暴力や暴言に直結する確率が高まることにつながる危険があります」

では、過去に虐待を受けた人が、世代間連鎖を断ち切り子どもへの虐待を未然に防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか?

「当事者自身に応じた適切なカウンセリングやサポートを受けることが必要です。子育て時に一番よくないのは、『親としてダメだ』と自分を否定してしまうこと。虐待を受けた自分が悪いのではないことを理解し、家族やカウンセラーなどに支えられながら、お母さん自身が夫をはじめ周囲の人から大切にされ、子どもにとってもかけがえのない存在だという自信が持てるようになると、虐待に傾く心を抑止できることが多いものです」

これは虐待を受けることなく育った人でも同様なのだとか。何が起こきるか分からない子育てにおいては、誰しも少なからぬストレスを抱えてしまうもの。そのため、育児期にはパートナーや周囲の家族の協力が不可欠。さらに、母親を社会的に支えてくれるサポートシステムの活用が、心の安定につながるはずです。将来母親になることを考えると、普段からストレスを上手く発散する方法を見つける努力をしたり、不安な気持ちを相談できたりする相手を見つけておくことが大切かもしれません。

(末吉陽子/やじろべえ)

(R25編集部)
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最終更新:9/9(金) 7:00

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