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辻仁成「50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど」

Book Bang 9/9(金) 7:00配信

 先日、平野レミさんと対談をやった。大変、愉快で、元気で、前向きな方で、二時間ほどの時間があっという間に過ぎてしまった。おこがましい言い方ではあるが、何より、子育てと料理に対する考え方が自分と全く一緒で嬉しかった。レミさんが料理を通して息子さんと向き合うその姿勢がそのまま自分たち父子の姿と重なったのだから、対談はずっと頷きっぱなし、頬が緩みっぱなしであった。家族のために料理をする。これは幸せのもっとも基本的な姿勢であろうと思う。

 レシピ本、『平野レミの幸せレシピ』の中にはまさに彼女の前向きで、明るく、元気な言葉とレシピがぎゅっと詰まっている。レミさんはお子さんを育てるために料理をがんばってきた。当然、息子さんは美食家になる。あれだけおいしいごはんを食べ続けてきたのだから、味にうるさくなって当然であろう。十二歳になったばかりのうちの子も食べ物に関しては相当に厳しい意見を持っている。

 息子が小学校五年生のとき、辻家に暗い転機が訪れた。塞ぎがちな息子を励ます意味で、父子の絆を強く保つ上でも、私は食卓が暗くならないよう頑張るしかなかった。朝、登校前の息子を励ます何かが必要だと思い、朝ごはん作りに精を出した。ある日、朝ごはんをお弁当にしたらどうだろう、と思いたった。彩りも綺麗だし、栄養のバランスも良い。食べ過ぎるということもない。弁当箱のふたを開けると、そこに父親の思いが詰まっているという寸法である。朝弁習慣と名付けた。

 朝の六時に起き、米を研ぐことから一日ははじまった。味噌汁や炊き上がったごはんの香りの中で息子は目を覚ますことになった。

 不思議なもので、どのお弁当も、作った日の記憶が鮮明に残っている。雪の日に作ったお弁当、息子が元気がない日に作ったお弁当、バレーボールの試合に勝つことを願って作ったお弁当、修学旅行の朝に作ったお弁当、ピクニック弁当、などなど。一つ一つのお弁当の中に、人生の荒波みを乗り越えて楽しい学校生活を送って欲しいという父の願いが込められている。二年以上作り続けてきた朝弁は毎回撮影し、この度『50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど』という一冊になった。

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最終更新:9/9(金) 17:32

Book Bang

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