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アフリカの絶滅危惧オオカミ、有効な救出手段が判明

ナショナル ジオグラフィック日本版 9/9(金) 7:20配信

狂犬病の流行で激減、野生動物にどうやってワクチン投与するか

 博士号を目指して研究していた1991年、クラウディオ・シジェロ=スビリ氏は、エチオピアの険しいバレ山地を調査のために歩き回っていた。探していたのは、エチオピアオオカミ(学名Canis simensis)。アビシニアジャッカルとも呼ばれる、世界で最も希少なイヌ科動物だ。

アフリカで見つかったイヌ属150年ぶりの新種

 当時、エチオピアオオカミの個体数は1000匹を割っており、保護活動が急務だった。しかし専門家のシジェロ=スビリ氏でも、生きた個体をなかなか見つけられない。それどころか、エチオピアオオカミの死骸が点在する荒涼とした風景が目の前に広がっていた。

 死骸から血液を採取し、所属先の英オックスフォード大学で分析すると、「犯人」はすぐに判明した。狂犬病だった。

たびたび流行する狂犬病

 現在、シジェロ=スビリ氏は同大学で教授を務める。「エチオピア・ウルフ・プロジェクト」を立ち上げた同氏らのチームは、バレ山脈のエチオピアオオカミの間で、狂犬病の大きな流行が1991年以降4回発生したことを把握している。1991年、2003年、2008年、2014年と流行が起こるたび、個体数は最大で75%も減少した。現在、生息地の減少と度重なる狂犬病流行により、野生のエチオピアオオカミは500匹ほどしか残っていない。

 存続の危機に直面するエチオピアオオカミだが、シンプルな解決策で救える可能性が出てきた。ワクチン接種だ。北米とヨーロッパでは、野生と家畜動物の両方で、狂犬病の制御にワクチンが貢献してきた。シジェロ=スビリ氏らのチームはこのほど発表された新たな論文の中で、ワクチン接種で狂犬病に対する免疫を獲得することにより、エチオピアオオカミの保護に役立つ可能性を示している。

 シジェロ=スビリ氏は、「狂犬病が大流行すれば破滅的な結果となりますが、このワクチンが有効な対策になるかもしれません」と話している。

 さまざまなウイルスの中でも、狂犬病ウイルスは特殊だ。症状の恐ろしさはもちろん、幅広い哺乳類に感染する特性があり、その数は全部で190種に上る。

「狂犬病で何日も苦しんだ末の死は恐ろしく、残酷なものです」と話すのは、NPO「エコヘルス・アライアンス」の上席副代表で衛生・政策担当のウィリアム・カレシュ氏だ。同氏は今回の研究には関わっていない。

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最終更新:9/9(金) 7:20

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