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ECBのドラギ総裁の記者会見-Moderate but steady

NRI研究員の時事解説 9/9(金) 10:28配信

はじめに

市場では資産買入れの調整に関する様々な思惑が見られたが、結局、ECBの9月政策理事会は細部を含めて金融緩和の現状維持を決定した。現在の景気を考えれば納得感がある一方で、市場とECBとの意見の乖離には、ECBによる資産買入れに固有の問題だけでなく、先進国の金融政策に共通する問題も関連しているように見える。いつものように記者会見の内容を検討したい。

金融経済情勢の判断と新たな見通し

ドラギ総裁は、記者会見の冒頭説明において、ユーロ圏の現在の景気が、前回(6月)の見通しに概ね沿った動きになっていることを強調した。すなわち、雇用と所得の拡大や原油価格下落による実質購買力の増加が個人消費を支えているほか、緩和的な金融環境や総需要の回復が企業収益を通じて設備投資の回復を促進し、緩やかだが着実な景気回復が続くとの見方を確認した。

インフレに関しても、ドラギ総裁は現在の動きが前回(6月)の見通しに沿っているとした上で、今後数ヶ月は低迷が続くが、年末にかけて原油価格のlevel effectが消滅していくに連れて回復のパスを辿るとの見方を確認した。さらに、来年以降についても、景気の回復に伴う需給ギャップの改善によってインフレ率の上昇が続くとの見方を示した。

実際、今回公表された9月のスタッフ見通しは前回(6月)からほとんど変わっていない。今年から2018年にかけての実質GDP成長率見通しは1.7%→1.6%→1.6%となり、2016年が0.1%ポイント引上げ、2017年以降が各0.1%ポイント引下げとなったに止まった。HICPインフレ率の見通しも0.2%→1.2%→1.6%となり、来年だけが0.1%ポイント引き下げられたに過ぎない。

ユーロ圏が改訂後の実質GDP成長率見通しに沿った動きになれば、当面は潜在成長率を上回った状態が維持されることを意味するだけに、先にみた総需要を通じたインフレの押し上げも含めて、ユーロ圏経済は少なくともマクロ的には金融危機以降で最も良好な環境に置かれることになる。

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最終更新:9/9(金) 10:28

NRI研究員の時事解説

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