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トップ・アスリートは「氏」か「育ち」か、運動能力をめぐる科学

Wedge 9/9(金) 11:20配信

 リオ五輪では、ウサイン・ボルト選手をはじめとするアフリカ系選手の活躍が目立ったが、日本人選手も負けてはいなかった。とりわけ、抜群のチーム力で銀メダルを勝ち取った男子400メートルリレーは痛快だった。その興奮のさなか、手にしたのが本書である。

 中継映像を見ていると、選手の背負った国旗がどこのものであろうと、陸上種目の上位は必ずといっていいほどアフリカ系の選手が占めている。近い将来、五輪をはじめ、スポーツ・パフォーマンスを競う世界大会は、アフリカ系選手ばかりになるのでは・・・・・・。

 そんな想像を膨らませつつ、競泳や体操、柔道、レスリングなどで日本選手が上位に入ると、種目によっては、ある種の体型が有利になるのかもしれない、と考えもした。

 本書は、「生物的資質とハードトレーニングが、相互にどのようにして運動能力に影響を与えるか」、要するに、運動能力は「遺伝か環境か」「氏か育ちか」というテーマに斬りこむノンフィクションである。

二つのまなざしでとらえた スポーツ科学の最先端

 実のところ、運動能力は「遺伝か環境か」ではなく、「遺伝も環境も」であることは、広く信じられている。

 しかし、「遺伝と環境は、具体的にどのように相互作用しているのか? 成績に対するそれぞれの貢献度合いはどれほどか?」という突っ込んだ質問への答えは、まだない。

 ヒトゲノムの塩基配列が解読されて以降、「最先端の遺伝子研究の時代へと突入している」というスポーツ科学の現状を、トップ・アスリートたちの悲喜こもごもの物語をまじえつつ、著者なりの視点で検証を試みたのが本書である。

 著者自身、800メートル走の大学代表選手として活躍した経験がある米国人ジャーナリスト。本書執筆時には『スポーツ・イラストレイテッド』誌のシニア・ライターをしていたという。

 アスリートとジャーナリスト。二つのまなざしでとらえたスポーツ科学の最先端は、共感にあふれ、かつ客観的で、心を打つエピソードに満ちている。

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最終更新:9/9(金) 11:20

Wedge

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