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映画『チリの闘い』:もうひとつの"9.11"

ローリングストーン日本版 9/9(金) 18:30配信

"9.11"といえば、ほとんどの人々がアメリカの同時多発テロを思い浮かべるだろう。

【動画あり】映画『チリの闘い』:もうひとつの"9.11"

しかし、その28年前にアメリカがチリで起こしたもうひとつの"9.11"があった。その一部始終を記録して"史上最高のドキュメンタリー"と絶賛されたのが、パトリシオ・グスマン監督作『チリの闘い』だ。

東西冷戦下の1970年、世界で初めて選挙によって社会主義政権がチリに誕生。サルバドール・アジェンデが大統領に就任した。米国資本が所有していた鉱山を国有化して労働者の賃金を上げたり、大地主が支配する農地を改革したり、アジェンデの政策は労働者に強く支持されたが、保守派や富裕層は猛反発。国を挙げて右派(富裕層)と左派(労働者)が激しい闘争を繰り広げた。その際、右派を影で支援していたのがアメリカ政府だった。そして、73年9月11日、アメリカがシナリオを書いた軍事クーデターによってアジェンデ政権は劇的な終焉を迎える。

グスマン監督と仲間達は、一台の16mmカメラとテープレコーダーを携えて町に飛び出して、激動するチリ社会を記録。それだけでも価値ある作品だが、グスマンは撮影した素材をできるだけ客観的な視点で編集して、『ブルジョワジーの叛乱』『クーデター』『民衆の力』の3部構成の作品にまとめあげた。右派と左派の手に汗握る攻防を描いた『ブルジョワジーの叛乱』。『クーデター』ではクーデターに向けてじわじわと高まっていく社会の緊張がスクリーンに張りつめている。国の経済を破綻させて政権を崩壊させるため、金を払ってストを起こさせたり、CIAを送り込んで極右組織を作ったりと裏工作に余念がないアメリカ。そうした右派の攻撃に対抗すべく、自分の手で新たな組織を作りアジェンデ政権を守ろうとする労働者たち。そんな労働者たちの姿を『民衆の力』で描くことで、グスマンはクーデター後に待ち受けていた軍事政権の悪夢ではなく、アジェンデ政権が見せてくれた希望の光を最後に提示する。

撮影後、グスマンは軍事政権に逮捕されるが、処刑を逃れてフランスに亡命(カメラマンは逮捕され"行方不明"に)。さらにキューバに渡って本作を作り上げた。『チリの闘い』は、ひとりの映画人の生死を賭けた闘いでもあったのだ。その熱い想いが、使命感が半世紀近く経った今も映画に凛とした気高さを与えている。

映画『チリの闘い』
9月10日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
http://www.ivc-tokyo.co.jp/chile-tatakai/

Yasuo Murao

最終更新:9/9(金) 18:30

ローリングストーン日本版

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