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サウジアラビアが原油増産凍結に合意できない理由

JBpress 9/9(金) 6:10配信

 まったく拍子抜けする内容だった。中国・杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議(9月4~5日)における、ロシアとサウジアラビアの共同声明のことである。

 複数のメディアが「5日夕方にロシアとサウジアラビアが原油市場に関する共同声明を発表する」との関係筋の発言を報じると、市場関係者がざわめき立った。2大産油国(ロシアの生産シェアは12%、サウジアラビアは11%)があえて共同声明発表の形をとる以上は、原油需給に何か大きな修正を迫るような動き、つまり原油の増産凍結に関する動きがあるのではないかと推察されたからだ。

 しかし、増産凍結につながる具体的な話は何も出なかった。 記者会見でロシアのノヴァク・エネルギー相は「原油市場の安定化を目指した増産凍結について話し合った」と発言したが、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は「増産凍結は望ましい可能性のうちの1つだが、現時点では必要ない」との考えを示した。

 結局、共同声明は、「両国は、月内にアルジェで開催される国際エネルギー・フォーラムで協議を続けるほか、10月には石油・ガスで協力するための2国間の作業グループを設置し、11月のOPEC会合でも協議する」と、原油市場の安定化に向けて両国が今後も協力する方針を確認するだけにとどまった。

■ 果たして世界の原油需要は「堅調」なのか? 

 サウジアラビアが増産凍結に否定的なのは、「世界の原油需要が堅調である」と見ているからである。ファリハ・エネルギー相は「中国からの需要は非常に順調で、インドからの需要もとても良好だ」という。

 サウジアラビアには、原油需要の拡大が最も見込める中国とインドでシェアをなんとしても確保したいという思惑がある。サウジアラビアは、中国ではロシア、インドではイラクやイランと激しいシェア争いを繰り広げている。手綱を緩めて両国でシェアを失ってしまうのはなんとしても避けたいところだ。

 だが、インドの原油需要は相変わらず旺盛であるものの、中国の原油需要はますます怪しくなっている。

 中国政府は9月2日、「昨年半ばから今年初めまでに戦略石油備蓄が22.5%増加し、2億3300万バレルになった」と発表した。備蓄水準が市場予想を上回る純輸入量の36日分に到達したことは、今後、備蓄向けの需要が大きく減少することを意味する。

 民間の原油需要も減少に転じた兆しがある。エネルギー関連情報の主要配信社であるプラッツによれば、8月の中国の純国内石油需要量は日量1075万バレルで前月比5.9%減、2009年1月以来の減少幅だった。戦略備蓄向け調達の一服で6月以降原油輸入量の伸びが鈍化している中国だが、今後、原油輸入量は減少に転ずる可能性がある。

 原油の最大需要国である米国でも、原油需要が変調をきたしている。米国では、5月の最終月曜日のメモリアルデーから9月最初の月曜日のレイバーデーまでを「ドライブシーズン」と呼び、ガソリンの需要期とされている。ところが今年8月のガソリン在庫はこの時期としては過去最高レベルに積み上がっており、その影響で、取り崩しが進むはずの原油在庫の調整が大幅に遅れている。

 9月5日にドライブシーズンが終了し、不需要期を迎えた米国で、既に過去最大の水準にあるガソリンや原油の在庫が一段と膨れあがるのではないかと懸念されている。

■ サウジ全体を覆う「カネ不足」

 本来、サウジアラビアにとって、原油安の状況を打破できるかどうかは死活問題のはずである

 サウジアラビアのムハンマド副皇太子は、G20首脳会議への参加直前に、最も重要な原油輸出国である日本と中国を訪問し、脱石油依存を掲げる「ビジョン2030」への積極的な関与を要請した。

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最終更新:9/9(金) 6:10

JBpress

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