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スターウォーズから3Dまで……中国の秋を彩る「月餅」大戦争

HARBOR BUSINESS Online 9/9(金) 16:20配信

◆中国の秋を彩る伝統菓子、月餅とは

 月餅(げっぺい)とは何か、ご存知だろうか?旧暦8月15日(=年によって違うが、今年は9月15日)の中秋節になると、決まって話題になる中国伝統のお菓子である。日本にも中秋の名月という言葉はあり、十五夜には団子を食べる習慣があるが、中国の中秋節はれっきとした国が定める祝日。月餅も単純に「食べて美味しい季節モノ」というわけではなく、お歳暮などと同様、企業同士やお世話になった人などへの贈答品としての意味合いがある。8月中盤からはどこのスーパーやデパート、ショッピングモールも特設コーナーを設け、山積みにした月餅を売り出す。

⇒【資料】スターウォーズコラボ月餅

 ひとくちに「月餅」といってもそこは広大な中国のこと、地方ごとに大きさや材料など、さまざまなバリエーションが存在する。主流は南方の広東省式で、よく似た香港式とあわせて出荷量の60%を占め、続いて雲南式、蘇州式などがあり、また最近は伝統的な味・スタイルを離れた多彩な味や、果てはアイス月餅なども出現している。一方、近年中国でも遅まきながら食の安全に関する法律整備が進み、15年10月に改正施行された「食品安全法」によって事業者責任などが明確化された。また、特に月餅については同12月に国家が定めるガイドラインが更新され、地方ごとに6種類に分別の上、それぞれが満たすべき味・形状・原材料などの仕様を細かく規定するなど、消費者権益の保護も同時に進められている。

◆年々進化する月餅の製法

 ご存知のように、中華料理には無数のメニューが存在する。しかし不思議なことに、デザートや菓子になると一気に種類が少なくなる。詳しい人でない限り、ぱっと思いつくのは杏仁豆腐くらいのものだろう。しかし月餅に関してだけは、話が違う。毎年新しい商品が開発され、現れては消えているのだ。ここではいくつか紹介しよう。

【国外ブランド月餅】

 スターバックスやハーゲンダッツ、果てはミスタードーナツなど、多くの国外ブランドが毎年のようにその年限定の月餅を発売している。また今年はジョエルロブションやシンガポールの紅茶ブランドであるTWGも参戦。マンダリンオリエンタル、ペニンシュラなど中国・香港系高級ホテルの月餅と共に、華を添えている。

◆あのダース・ベイダー型も!? 攻める中国ブランド月餅

【中国ブランド月餅】

 国外ブランドも勢力を伸ばしているとはいえ、昨年のランキングを見ると130余年の歴史を持つ北京の「稲香村」が全月餅の10%以上の売り上げで1位となっているなど、上位は「民族系」の月餅で占められている。ちなみに有名月餅ブランドとしては他に香港の「美心」、広東省の「華美」、同じく広東の「利口福」などがある。

 これらのブランドも近年激化する新参組との競争に勝ち抜くために伝統様式の月餅にとどまらず、新しい味の開発や他ブランドとのコラボなどを進めている。例えば美心は今年Star Warsとのコラボで「ストーム・トルーパー(エッグカスタード)味」「ダースベイダー(チョコレート)味」を発売している。また、ランキング上位には入っていないが、六合信はディズニーとのコラボ商品を発売している。

◆3Dプリンタでカスタムメイドできる月餅も登場

【3Dプリントオーダーメイド月餅】

 杭州の大学生が学生起業として始めた3Dプリント専門の会社は、主に中小企業向けの需要を当て込んで3Dプリンタを使ったオーダーメイド月餅を提供している。発注者は写真や絵を提供し形やサイズを指定すれば、小ロットでも自社のロゴやイメージが入った月餅を、たった3分間で作ることができる。

 月餅自体は、子供向けの料理教室の題材になるくらい、作ること自体は難しくない。ただ月餅上部の模様はどれもなかなか凝っていて、素人が簡単に刻印できるものでもない。この企業はそのギャップに目を付けて成功したといえるが、いくら小ロットから発注できるといっても、まさか日本から個人用に発注するわけにもいかない。しかし取材を進める中で、とあるウェブサイトで月餅の3Dデータが公開されていることを発見したので、せっかくだからご紹介しよう。実際にダウンロードも可能だ。このデータを使用すれば、ご自宅で完璧な本場スタイルの月餅を作ることができるのだ。ぜひ作ってみて欲しい。

◆成長し続ける月餅市場と、和菓子の可能性

 そんな月餅、もし興味があれば日本で買うこともできる。シャングリ・ラホテル 東京(オンラインでも購入可能)やマンダリン オリエンタル 東京などの香港系ホテルでは豪華な月餅を売り出しているし、意外ではあるがカレーで有名な新宿中村屋では「和菓子」のカテゴリだが、小豆、木の実、二つの味の月餅を販売している。そのほか、横浜中華街などでも取り扱いがある。また、どうしても本場物を食べてみたい場合、輸入月餅を売る店も一部にはあるようだ。

 月餅は中国でも味を楽しむというよりは、儀礼としての贈答の意味合いが強い(最近は代わりに商品券を贈る場合も多い)。その意味では、筆者としては外国人向けにアレンジされた月餅をお勧めしたい。

 贅沢消費の禁止や食の安全に関する問題、法律の厳格化など、様々な逆風を受けながらも、業界団体は今年の月餅の売上額を昨年比10%の伸びと予想している(出典:捜狐)。これは国全体の経済成長が6.9%であるところから考えても、驚異的であるといえる。

 また特に富裕層を中心に、中国人の間では日本の伝統文化に根強い人気がある。彼らに言わせれば「自国で失われた伝統的な文化が日本にはそのままの形で残されている」とのことで、爆買いを支えた技術や商品への人気・信頼とはまた違う理由があるようだ。そして実は、上述した六合信のディズニー月餅は、皮の製法が和菓子の一種「桃山」と同じというのがうたい文句のひとつである。つまり日本ブランドの訴求は、月餅業界でも「刺さる」と考えられているのだ。そうした状況を見るに、成長を続け、常に新しいアイディアが求められている月餅市場では「和菓子月餅」にも商機があるかもしれない……というのは考えすぎだろうか?<取材・文/林 毅>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/9(金) 17:06

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。