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小池都知事の「築地市場移転延期」決定は、都庁幹部や自民党都議への“宣戦布告”!?

HARBOR BUSINESS Online 9/9(金) 9:10配信

 小池百合子知事は8月31日午後に都庁で緊急会見を開き、「11月7日に予定されていた築地市場から豊洲新市場への移転を延期する」と発表した。予定通り移転を進めようとしていた都庁幹部や都議らと手打ちすることなく、選挙中に表明していた姿勢を貫いたといえる。新たな移転時期は来年2月以降になる見通しだ。

◆地下水モニタリングの結果が出る前の“見切り発車”を疑問視

 移転延期の最大の理由は「安全性への懸念」。豊洲新市場は土壌汚染地域に建設されたため、2年間の地下水モニタリングをすることになり、その結果は開場予定の2か月後の来年1月に公表されることになっていた。結果が出る前の“見切り発車”を知事は疑問視したのだ。

「『法律上の問題がない』という話もありますが、まさに生鮮食料品、水産物です。環境大臣の経験からも食の安全は生活者の目線、“都民ファースト”の感覚を大切にしなければいけないのではないか」(小池知事)

 移転延期を受けて知事は、建築や土壌や公営企業経営の専門家がメンバーの「市場問題プロジェクトチーム(PT)」の設置も発表した。豊洲市場の整備費(約5900億円)が約1500億円も増大、中でも建設費(約2752億円)が当初の3倍に膨れ上がったことや坪単価が異常に高いことなどを問題視、PTでの検証作業を通して都政の闇に斬り込む姿勢を示したのだ。

「建物の建設費が990億円から2752億円へ急膨張しています。昨今の建設コストは人材も資材も高騰しているのですが、3倍近い増大に関してはきちんと精査する必要がある、ちゃんと都民に説明する必要があると考えております。豊洲新市場の坪単価は220万円になるのです。同様の建物の坪単価の相場は50万~60万円で、異常に高い。その理由は私も知りたいと思います」(同)

◆「東京五輪までに環状2号線開通を」との“呪縛”から解き放たれた

 知事が移転延期決定に踏み切った大きな要因として、“五輪道路”とも呼ばれる環状2号線開通を絶対視しなかったことがあげられる。「予定通り開場すべき」と主張する都庁担当者や都議ら移転推進派は、「2020年の東京五輪までに選手村と都心部を結ぶ『環状2号線』の開通が間に合わなくなる」という“殺し文句”で移転延期を封じ込めてきた。しかし知事はこれを鵜呑みにせず、「複数の代替案が考えられる」という結論に至ったと考えられる。

 知事は環状2号線についてこう説明した。

「工事のあり方についても(市場問題PTで)しっかりと検討し、PTのこれからの精査、分析を持って、A案、B案、C案を持つのも一つの方法ではないかと思っております」

 知事が思い描いている案の一つが、「環状2号線暫定道路案」と考えられる。8月27日の『日本経済新聞』には、環状2号線の開通遅れ問題について「『年内に開通する迂回路で代替すれば』。小池知事やその周辺からはこうした質問が都幹部に飛ぶ」とあるが、この中の「迂回路」こそ、築地市場の端を通る「暫定道路」のことだ。

 環状2号線建設工事は二段階で、まず築地市場の端を通る「暫定道路(迂回路)」を作り、次に市場全体を解体してから「本道路(地下トンネルや喚起溝)」を建設する。暫定道路で五輪対応ができれば築地市場の解体を急ぐ必要はなくなり、市場の大半を残して営業継続をすることも可能になる。今回、知事が3か月以上の移転延期に踏み切ったのは「暫定道路で五輪対応できる」と判断したと考えられる。

 環状2号線開通の“呪縛”から解き放たれた知事には、数か月をかけて建設費高騰などを徹底検証する時間的余裕ができた。そして「市場問題PT」で、都庁幹部や都議らの癒着や利権や不正行為を明らかにしていけば攻守は逆転、都政の主導権を知事が握ることになるに違いない。この日の移転延期会見は、都庁幹部や自民党都議に対する“宣戦布告”でもあったのだ。

取材・文・撮影/横田 一(ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する主張をまとめた新刊『黙って寝てはいられない』<小泉純一郎/談、吉原毅/編>に編集協力)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/9(金) 9:10

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