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熱でがんが消滅する!?古代ギリシア時代でも用いられていたペットの温熱療法とは

@DIME 9/10(土) 10:10配信

Dr.岡本のペットのがん治療最前線

今回は、温熱療法について紹介します。

◆温熱療法とは
温熱療法とは、がん細胞が正常細胞と比べて熱に弱いという性質を利用したがんの治療法です。

温熱療法の歴史は古く、熱によって“がん”が消滅したと、医学の父であるヒポクラテス(古代ギリシア,紀元前460-370年)は報告しています。ドイツのブッシュは丹毒に冒され高熱を発した患者さんの“がん”が消失したことを1866年に報告しています。また、アメリカのコーリーは、感染すると高熱を出す数種類の細菌をわざとがん患者さんに注射して、高熱によって手遅れの“がん”の治療を行ったと1900年頃に報告しています。1960年代になって科学技術が進歩すると、有効な加温の方法が開発されるとともに、“がん”に対する温熱の効果が基礎研究によって明らかにされ始めました。

温熱療法には、全身を加温する方法(全身温熱療法)と、がんやその近くを温める方法(局所温熱療法)があります。一般には局所温熱療法が主に行われる方法で、マイクロ波や電磁波を用いた装置で局所を温めます。体の外から加温するのが最も多く行われる方法ですが、その他に食道、直腸、子宮、胆管といった管腔(かんくう:空間のある場所)内に器具を入れて加温する方法や、がん組織の中に数本の電極針を刺し入れて加温する方法が試みられています。

がんに対する効果は41℃以上で得られますが、約43℃以上で特に強くなることが知られています。体の表面に近いがんは目的の温度まで比較的容易に温めることができますが、体の奥深いところにあるがんは、脂肪、空気、骨が邪魔をして十分に温めることが難しい場合が多く、温熱療法の効果が不十分になる可能性があります。

温熱療法は通常は単独で用いるのではなく、放射線や抗がん剤の効果を強めることを目的に、放射線や抗がん剤と併せて使います。最も研究が行われているのは局所温熱療法と放射線を併せて行う治療で、脳腫瘍、食道がん、乳がん、大腸がん、膀胱がん、軟部組織腫瘍等のがんで試みられています。

加温時間は長ければ長いほど効果が増しますが、一方、治療を受ける患者さんの負担が大きくなります。ヒトの場合、45~60分くらいが普通です。毎日治療をするとがん細胞が熱に強くなり、温熱療法の効果が下がりますので、3日くらいは間隔を空けて治療します。週に1~2回治療するのが一般的です。

温熱療法に伴う副作用には、加温した部位のやけど、痛みがあります。体の深いところを治療するのに適した高周波の加温装置を使用した場合は、頻脈、体温上昇といった全身の症状が出ることがあります。放射線と併せて用いたときには、放射線の副作用を増悪させないという報告が多くみられます。

鳥取大学動物医療センターでは、数年前より温熱療法に関する実験動物を用いた基礎実験を行い、そのデータを元に実際の犬猫の自然発症がん症例に対して本治療法を実施しています。そのうちの1例を紹介します。

症例:犬、シュナウザー、雄、11歳、7.6kg。右後肢付け根の腫脹を主訴に紹介来院。

一般的な治療法は、病変部の切除、この場合は骨盤部からの断脚となります。しかし、飼い主が断脚を希望されなかったため、実験的治療として温熱療法を中心に免疫療法と組み合わせて治療を行いました。

全身麻酔下で腫瘍に対して焼灼針を設置し、腫瘍を加温(65-67℃)しました。焼灼針の設置する方向は基本的には3方向です。1方向の治療時間は7分です。この症例の場合、治療時間は7分x3で21分でした。温熱治療は、23,67,156病日の計3回実施しました。1回目の温熱療法時の腫瘍の長径は71.1mmありました。66病日には61.3mmとわずかな縮小でしたが、95病日には40.7mm、208病日には25.2mmまで縮小しました。

局所を加温する温熱療法について解説してきました。この治療は、動物病院に行かないと実施できない治療です。がん治療に関して、大事なことは体温を上げることです。私は、がんを患っている動物の飼い主に「1日1℃、動物の体温を上げるよう努力してください」と言っています。

全身の体温を約40度に上げる全身温熱療法は、がん細胞を直接傷害します。一方、体温を1℃上昇させるだけではがん細胞を直接傷害できませんが、免疫力が5~6倍になると言われています。それによってがん細胞を間接的に傷害させることが可能となります。これは体温計さえあれば、自宅できる治療法です。

文/岡本芳晴(おかもとよしはる)

@DIME編集部

最終更新:9/10(土) 10:10

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