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サブローが手渡したバットに託された、香月一也へのメッセージ。大ベテランと接し、大きく変わった1年

ベースボールチャンネル 9/10(土) 11:00配信

大ベテランからの一言

「オレのバットを使ってみるか?」

 ある日の二軍戦の試合前、香月一也内野手はふと呼び止められた。声の主はサブロー外野手だった。突然の提案にただ、困惑した。渡されたバットを振ってみた。ちょっと重いと感じたが、スイングにフィットする独特の感覚があった。

「それまで打撃不振で悩んでいたんです。そんな姿を見てくれて、なにかキッカケを頂いたのかもしれない。突然でビックリしましたけど、声をかけてくれたことが本当にうれしかったですし、バットをプレゼントしてもらったことがありがたかった。バットもバランスがよくてグリップがちょっと細くて、グリップエンドは太い形なのですが握りやすかった」

 その試合、香月一也は猛打賞を記録した。
 ただ、バットを代えただけだったかもしれない。しかし、それがプロ通算22年間で1781試合に出場し1362安打、127本塁打の実績を持つマリーンズの看板選手が使い続けている秘刀だと思うだけで気分が高揚した。

 消極的になっていたスイングに力強さが戻った。ヒットを放った後、塁上からベンチを見ると大先輩は笑って拍手をしていた。自分が結果を出したことに対して、笑顔を見せてくれていることが心に染みた。香月はその試合をキッカケに、それまではイースタンリーグ規定打席到達選手の打率10傑に入っていなかったが、上位に食い込み、2位にまで駆け上がった。

「打撃に関しては自分が左打者でサブローさんが右なのでちょっと違うかもしれませんけど、練習の時、いつも見て参考にさせてもらっていた。あと、試合に入る時のスイッチの入り方が違う。雰囲気が急に変わる。プロの凄さを感じました」

大ベテランと過ごした貴重な1年

 プロ2年目の香月一也にとって、今年、二軍調整をしていたサブローと時間を共有できたことは大きな財産となっている。どんな練習をするのか。どのような意識でフリー打撃をしているのか。試合前の調整。いろいろなものを目の前で見てきた。

「引退はマジで寂しいです。もっと学びたかった。正直、恐れ多くて直接、聞くことはあまりできないですよ。でも見て学ぶことはいくらでもできる。だから、ずっと見ていたんです」

 そんな後輩の熱視線を背番号「3」は、もしかしたら感じていたのかもしれない。多くを語ることはなかったが時折、声をかけてくれた。そして一番、悩んでいた時期にバットをプレゼントしてもらった。

 香月一也にとって忘れられないメッセージがある。よく言われたこと。それを今、肝に銘じて日々を取り組んでいる。 

「守備も磨けよ。上でやるには守備もないとアカン。実績のない若いヤツがいきなり代打でチャンスをもらえるほど甘い世界やない。守備固めで試合に出させてもらって、その後、もしかしたら打席が回ってくる。そこで結果を出すんや。オレもそうやったわ」

 目からウロコが落ちるほど、納得した。特に「オレがそうやった」という言葉が響いた。これほど実績を持ち合わせた選手でも最初は自分のようにファームで、もがき苦しみチャンスを待っていた。そしてその突破口は打つという派手な行為だけではなく、しっかりと守るという地道な努力も併せて重ねて初めて手に入る。その言葉に今、自分がなにをすべきかがハッキリと見えた。

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最終更新:9/10(土) 11:03

ベースボールチャンネル

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