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発売から半年で20億円の売上を達成したロッテの『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』開発秘話

@DIME 9/10(土) 13:10配信

健康のためにヨーグルトなどの乳酸菌食品を摂る人は多い。しかし、乳酸菌は熱や酸に弱く、大部分が腸に届く前に死滅してしまう。だが、ロッテの『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』であれば、生きた乳酸菌を腸まで届けることができる。

 2015年10月に発売された『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』は、生きた乳酸菌をチョコレートで包んだのが特徴。これにより、乳酸菌食品でありながら常温で持ち運べ、時間や場所を問わず乳酸菌を摂取できるようにした。ミルクチョコレートの発売を皮切りに、アーモンドチョコレート、アーモンドチョコレートビターとラインアップを拡大。発売から約半年間(2016年3月末まで)で20億円の売上を達成したほど、好調に売れている。

■チョコレートで、生きた乳酸菌を酸から守る

 開発の背景にあったのは、菓子業界の成長の鈍化。少子化が進んだこともあり、この10年、市場規模が横ばいの状況が続いていた。成長するためには、新たな切り口の商品が求められていた。

 同社が新たな切り口としたのが、「健康」であった。まず、積極的に摂取したい栄養素などを調べたところ、乳酸菌が上位にきた。そこで、乳酸菌と主力のチョコレートを組み合わせ、健康感を打ち出すことにした。

 ただ、同社は乳酸菌を扱った経験や知見が少ない。そこで、乳酸菌のエキスパートである日東薬品工業と共同開発することにした。まず、同社の研究所と日東薬品工業による共同研究がスタート。日東薬品工業には乳酸菌の選定や試験内容に関するアドバイスを受けたりしたほか、乳酸菌を提供してもらった。

 熱に弱い乳酸菌は、チョコレートの製造工程で死んでしまうことが多い。しかし2012年秋、ある一定の条件と配合で乳酸菌を入れると、乳酸菌が1年間、常温で生き続けることを発見した。日東薬品工業にとっても、この結果は驚くべきものだった。

 研究スタッフはこの結果からある仮説を立て、さらに研究を続けた。その仮説を、商品企画を担当した犬飼美穂子さん(マーケティング統括部第二商品企画部新商品企画室乳酸菌菓子チーム マネージャー)は次のように代弁する。

「乳酸菌をチョコレートに入れたら、常温保存できるだけでなく酸からも守られるのではないか、という仮説を立て、耐酸性試験を行なうことにしました」

 耐酸性試験とは、人間の胃酸と同じぐらいのphにした人工胃液を、人間の胃の中と同じ37℃程度にし、そこにチョコレートで包んだ乳酸菌と包まなかった乳酸菌を入れて、それぞれがどれだけ残るかを比較するもの。食べ物が胃の中を滞留している時間と言われている2時間で比べた。2014年秋に実施したところ、チョコレートに包まなかった乳酸菌は2時間後にはほとんど死滅していたのに対し、チョコレートに包んだ乳酸菌はほとんど減ることなく生き残った。チョコレートで包まなかった乳酸菌は、試験開始2時間後には検出限界に達していたほど減少。試験開始1時間の時点で乳酸菌数の差は100倍以上に開き、時間の経過とともに拡大していった。

■王道にするか、それとも特徴を出すか

 以上のような研究結果を、同社は2015年3月に社内で報告。商品開発担当の役員からすぐさま、「すぐ商品化を検討しなさい」と指示が出た。最需要期である秋口以降に間に合わせるべく、約半年ほどで商品化を急ぐことになった。

 開発は急ピッチで進められた。まず、味わいについては、かなり迷った末に、ミルクチョコレートに決まった。その理由を、犬飼さんは次のように話す。

「ミルクチョコレートのような王道の味わいにするか、それとも乳酸菌が入っていることがわかるように酸味や苦みを強調したものにするかでかなり議論になりました。最終的に、乳酸菌が入っていることに気づかないくらい美味しいことに価値があるとまとまり、王道のミルクチョコレートに決まりました」

 また、すき間時間でも食べられるよう、開発では個包装にこだわった。これは、同社がヨーグルトなどの乳酸菌食品の不満点を調査し、半数近くの人が、「賞味期限が短い」「冷蔵庫がないと保存できない」といった不満を持っていることがわかったことによる。「調べると、実は色んなところで乳酸菌を摂れたらいいなと思っていることがわかりました。常温で保存でき持ち運びを便利にすれば、どこでも好きな時間に食べられるので、小さく個包装することにしました」と犬飼さんは言う。

■「多箇所展開」でヨーグルト売場にも進出

 こうして、まずミルクチョコレートの『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』を完成させた同社は、発売前にモニター調査を実施。その結果、87.7%が「これからも食べ続けたい」、99.1%が「美味しい」と回答した。小売店との商談でも興味を持たれ、好感触が得られた。

 犬飼さんによれば、同社は「多箇所展開」を得意にしており、菓子売場だけでなくレジ前など店内の至るところに商品を置いてもらう営業を展開しているという。『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』も同様の展開を図っているが、ユニークなのが、ヨーグルト売場でも置いてもらうようにしたこと。数店舗で実施したところ、ヨーグルトと一緒に買われるケースが多いことがわかったことから、専用什器を用意して置かせてもらうようにしている。「最初は、ヨーグルトの売上に影響が出るのでは、という懸念があったのですが、ヨーグルトの売上は落ちにくい傾向でした。乳酸菌をたくさん摂りたい方は、ヨーグルトを減らすことなく買い足してくれているようです」と犬飼さんは話す。

 また、同社は『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』を、乳酸菌をいつでも好きなときに摂取できる新しいカテゴリーの商品として育てたいということから、矢継ぎ早に新商品を投入しラインアップを拡大。2015年12月にアーモンドチョコレート、2016年6月にアーモンドチョコレートビターを全国全チャネルで発売したほか、2016年3月にアーモンドチョコレートの小袋タイプ、同年4月にミルクチョコレートの小袋タイプを全国の駅売店とコンビニで先行発売した。

 さらに2016年6月から、同社オンラインショップで「乳酸菌ショコラ定期便」を始めた。これは、ミルクチョコレートの『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』を1回につき15箱分、オリジナルバッグに入れて宅配便で届けるというもの。特典として、初回申し込み時に、「乳酸菌ショコラポット」と「乳酸菌ショコラ携帯缶」がもらえる。

「現在、どうやって新カテゴリーとして育てていくかということを、様々な部門の方と一緒に話し合っているところですが、定期便のアイデアはこの中で出てきました」と犬飼さん。同社のオンラインショップでは以前、他の商品で定期便を実施しており、チョコレートで乳酸菌を摂ることを習慣化してもらうためのアイデアとして採用された。

★★★取材からわかった『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』のヒット要因3★★★

1.説得力がある

 乳酸菌は熱や酸に弱く、生きたまま腸に届きづらい。しかし、一定の条件と配合でチョコレートに包めば、乳酸菌が生きたまま腸に届く。チョコレートで乳酸菌を摂ることの説得力があった。

2.王道の味わい

 味わいは個性的なものではなく、ミルクチョコレートやアーモンドチョコレートなどと王道で展開。乳酸菌が入っていることを意識させず、普通のチョコとして食べても美味しい点が評価された。

3.乳酸菌食品の不満解消

 これまでの乳酸菌食品には、「賞味期限が短い」「冷蔵庫での保管が必要」といった不満があった。しかし、チョコレートで生きた乳酸菌を包み酸から守る技術イノベーションを起こしたことで、これらの不満が解消できた。

 チョコレートでいつでも、好きなときに乳酸菌を摂取する、という提案は、新鮮かつ斬新だ。酸味が強くてヨーグルトなどが苦手な人を取り込める可能性もあり、これからさらに伸びるように思われる。

文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:9/10(土) 13:10

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