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内田裕也が怖気立った、たけしの「凶行」 ビートたけしが演じた戦後ニッポン(3)

現代ビジネス 9月10日(土)12時1分配信

 俳優・ビートたけしはこれまで多くの「昭和の大事件」の当事者を演じてきた。大久保清、千石剛賢、田岡一雄、金嬉老、東条英機。さらには、3億円強奪事件の犯人、豊田商事会長刺殺事件の犯人、エホバの証人輸血拒否事件で死亡した男児の父親……。

 そうした現代史とたけしの半生を重ね合わせながら、戦後の日本社会を考察する好評連載第3回。今回は、劇場型犯罪やメディアによる報道のあり方を検証する一方、ビートたけしにとっての「事実と演出のあいだ」に迫った。

 第1回はこちら(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49228)
第2回はこちら(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49394)

「あの事件」を予見?した映画

 「犯人は、おまえ違う、わしや。貸せや!」

 ビートたけし演じる中年男はそう言うと、一緒に来た髭面の男から銃剣をとりあげた。いましがた、金城商事会長の永田を刺したばかりの凶器だ。現場に集まった報道陣がカメラを向けるなか、男は血だらけの銃剣を掲げた。その表情に悪びれた様子はまったくなく、むしろ誇らしげだ――。

 これは1986年に公開された映画『コミック雑誌なんかいらない! 』(滝田洋二郎監督)の終盤の一場面である。そこでは、前年に大阪市で起こった豊田商事会長の永野一男刺殺事件が、企業名や人名は変えつつもかなり忠実に再現されていた。たけしが演じたのは犯人二人組のうち主犯格の男だ。実際の男は事件当時56歳で、しかも話すのは関西弁と、その人物像は当時30代で東京出身のたけしとはかけ離れていた。だが、たけしは慣れない関西弁も気にさせないほど、この役をきわめてリアルに演じ切っている。

 この映画を企画し、脚本(高木功との共同執筆)と主演も務めたのは、ロックミュージシャンの内田裕也である。たけしの起用も、この役には彼しかいないという内田の直感で決まった。二人が初めて接触したのは1981年末、内田の主催する年越しライブ「ニューイヤー・ロック・フェスティバル」のテレビ中継である。このとき、会場の浅草国際劇場の前で「内田裕也も、老齢に鞭打って、がんばってるんだな」などとさんざん悪態をついていたのが、漫才コンビ・ツービート時代のたけしだった。陰口ではなく、正面切って悪口を言われるうち、内田は「こいつはただ者じゃねえな」とむしろ感心してしまったという(『アサヒ芸能』1993年11月4日号)。

 その後、内田は自ら主演し、脚本も手がけた『十階のモスキート』(崔洋一監督、1983年)、そして『コミック雑誌なんかいらない! 』と、あいついでたけしと共演する。内田の企画した最初の映画である『水のないプール』(若松孝二監督、1982年)も含め、いずれも実際に起こった事件をモチーフとしていた。なかでも『コミック雑誌なんかいらない! 』は、先述の会長刺殺へといたる豊田商事事件をはじめ1985年に起こった事件や社会現象を、内田扮する芸能レポーターがほぼリアルタイムで追いかけるという異色の作品となった。

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最終更新:9月18日(日)23時16分

現代ビジネス

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