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米金融専門誌で中央銀行総裁・議長の格付け公開。黒田日銀総裁の評価は?

HARBOR BUSINESS Online 9/10(土) 9:10配信

 9月1日、米金融専門誌「グローバル・ファイナンス」は、中央銀行の総裁や議長などの格付けを公開した。(参照:Global Finance Grades The World’s Central Bankers 2016)

 この「中央銀行総裁レポート」は、1994年以降、グローバル・ファイナンス誌で毎年公開されているもので、主要75か国・地域(EUを含む)の中央銀行の総裁を対象に、インフレ抑制、経済成長の目標達成度合い、通貨の安定、金利統制などの達成度について、最高評価を「A」、最低評価を「F」とする格付けだ。

 2016年の中央銀行総裁格付けで最高評価「A」を獲得したのは、イスラエルKarnit Flug、レバノンRiad Salamé、パラグアイCarlos Fernández Valdovinos、ペルーJulio Velarde Flores、フィリピンAmando Tetangco Jr.、ロシアElvira Nabiullina、台湾Fai-Nan Perng、英国Mark Carneyの8名である。

 また、「A-」を獲得したのは、ヨルダンZiad Fariz、メキシコAgustín Carstens、モロッコAbdellatif Jouahri、米国Janet Yellenの4名であった。

◆最高評価「A」の常連は?

 アジアでは、フィリピンAmando Tetangco Jr.(アマンド・テタンコ総裁)、台湾Fai-Nan Perng(彭淮南総裁)が中央銀行総裁格付けで最高評価「A」を獲得したが、実は、二人は「A」格付けの常連である。

 フィリピンのAmando Tetangco Jr.(アマンド・テタンコ)総裁は、2005年に中央銀行総裁に就任。2006年、2007年に「A」を獲得し、その後、2011年から2016年まで6年連続で評価「A」を獲得、2016年は8度目となる「A」獲得であった。国際通貨基金(IMF)フィリピン理事も務め、アジア通貨協力の枠組み作りに深く関わる。(参照:NNA ASIA )

 2012年以降のフィリピンの経済成長率は、ASEAN主要国の中でもトップクラスである。需要面で足元の景気拡大を牽引しているのは個人消費であるが、在外フィリピン人労働者からの送金、および、最近のフィリピン・ペソ高も物価の安定を通して消費拡大に寄与している。最近のインフレ率はフィリピンの中央銀行のターゲットレンジ(4.0%±1.0%)に収まっており、安定的に推移している。(参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「フィリピン経済の現状と今後の展望」)

 台湾のFai-Nan Perng(彭淮南)総裁は、1998年の中央銀行総裁就任後、2000年に初めて「A」を獲得し、その後、2005年から2016年まで12年連続で評価「A」を獲得している。世界で唯一、評価「A」を13回獲得した中央銀行総裁となっている。(参照:Taiwan Today)

 2016年6月30日、台湾の中央銀行は、四半期連続の利下げを発表した。輸出主導の台湾経済は成長見通しが引き続き圧迫されており、市場では追加緩和が幅広く見込まれていた。このように、直近でも、台湾の中央銀行は、適切な金融政策をとっていることがわかる。

◆ECB(欧州中央銀行)ドラギ総裁の評価

 ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁は、評価「B+」を獲得した。2011年11月、前イタリア銀行総裁であったドラギ氏がECB総裁に就任した後の評価は、2012年「B-」、2013年「A-」、2014年「A-」、2015年「A」、2016年「B+」となっている。

 なぜ、2015年「A」評価であったのか?ECBは「2%以下であり2%近くにする」というインフレ・ターゲットを設定している。しかし、2014年に、原油価格の下落、中国経済の減速などに伴い、2年程度先のインフレ率が目標の2%弱に達しない可能性が高まった。そのため、2014年6月以降、政策金利の一部をマイナスとし、ユーロ通貨安を促した。ユーロ通貨安は、2015年の輸出増加に寄与し、ユーロ圏実質GDP成長率は+1.5%と、高い成長率となった。このように、ECBの金融政策がインフレ目標及び経済成長に寄与し、ドラギ総裁の2015年「A」評価獲得に繋がっている。

 2016年「B+」へのダウングレードも、経済状況と関係していると思われる。ECBは現在、イタリアなど南欧諸国を中心に、景気低迷による銀行の不良債権拡大の懸念が強まっている。したがって、今後の金融政策およびインフレ目標、雇用、経済状況がドラギ総裁の評価に繋がってくる。

◆日銀黒田総裁、米FRBイエレン議長の評価は?

 日銀の黒田東彦総裁は、評価「B」を獲得した。黒田総裁の評価は、2013年は就任期間が1年に満たないことから「Too early to say」(評価するには時期尚早)であったが、2014年「B+」、2015年「B」、2016年「B」となっている。

 黒田日銀は2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入したが、その後3年余りの間、日本経済は大きく改善し、デフレではないという状況にはなった。雇用・所得環境は大幅に改善した。一方で、これだけ大規模な金融緩和を行っても2%の「物価安定の目標」は実現できていない。その結果として、黒田総裁の評価が2014年「B+」から2015年「B」へのダウン・グレードへ繋がったと考えられる。

 もっとも、日銀前総裁の白川方明氏の評価は、2011年「C」、2012年「C-」であったことを思うと、未だ目標には達していないものの、黒田総裁のデフレ脱却への貢献は大きいと言っていいだろう。

 米FRBイエレン議長は、「A-」を獲得した。2014年は「Too early to say」(評価するには時期尚早)であったが、2015年「A-」、2016年「A-」と、上から2番目の同じ評価が続いている。

 イエレン議長は、株式・為替・債券マーケットや新興国経済に大きな悪影響を及ぼすことなく、年内の利上げをソフトランディングさせられるかが、今後の評価に関係してくるものと思われる。黒田日銀総裁とともに、イエレン議長も、今年の金融政策の判断は重要である。

<文/丹羽唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/10(土) 15:09

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