ここから本文です

穴がなかったカープ。本来の力を発揮した攻撃陣、黒田を手本に「打者に立ち向かった」投手陣【小宮山悟の眼】

ベースボールチャンネル 9/11(日) 6:50配信

開幕前に広島を優勝予想した理由

 広島東洋カープが、順調すぎるほど順調にセリーグのペナントレースを独走し、10日に25年ぶりのリーグ制覇を果たした。
 手前みそで恐縮だが、私はシーズン開幕前の順位予想で広島を1位としたので、個人的にも今回の優勝を素直にうれしいと思う。

 さすがに8月中にマジックが点灯する展開は想像していなかったが、投打にバランスの取れた戦いぶりは見事だった。

 開幕前の予想で、私はまずセリーグが混戦になると想定した。勝率5割前後で争われるサバイバルレース。まず、弱点を抱えるチームが脱落する。逆の言い方をすれば、欠点のないチームが抜け出すことになる。

 そうやって、減点法で考えていったとき、広島が一番、穴のないバランスの取れたチームだと映ったわけだ。

 私は昨年、広島が4位に終わった主な原因は、大事な場面で機能しなかった攻撃陣にあったと思っている。チーム打率や、チーム得点を見ると、驚くほどひどい数字ではないが、あと1本のヒットが出ないとか、がんばる投手を援護できない、というイメージの試合があまりに多かった。

 だが、今年は打線が大きく復調するだろうと思える要因が、いくつもあった。エルドレッドが開幕から出場できる。中日からルナが加入。菊池や丸ら、本来の力を発揮できなかった選手たちに関しても、2年連続で不調が続くとは考えにくい。攻撃力は絶対にアップすると予想できた。

 実際、今年の広島打線は私の期待通り、いや期待以上の結果を残している。先に挙げた選手以外にも鈴木誠也が大ブレイク、新井も勝負強さを発揮した。

 そもそも、昨年の打線も得点能力が低かったわけではない。これが本来の力だ。決して強力打線ではなかったが、それなりに確実に得点できそうなメンバーが並んでいたのだ。ちなみに私は、選手たちが額面通りの活躍をしたら、昨年も優勝できたと思っている。

黒田の投球姿勢が投手陣に好影響

 投手陣に関しては、昨年からチームに加入した黒田博樹の存在が大きかったように思う。今年の広島の投手陣からは、打者に立ち向かう姿勢が感じられた。

「打者に対して攻める」というのは、具体的に、黒田と同じようにインコースを多投するという意味ではない。配球の組み立ては、スコアラーのデータを、コーチや捕手が分析して決めているはず。外角球で勝負すべきというデータが出たら、そういうリードになるだろう。単純にインコースのきわどいところを突くシーンが多いから「攻める姿勢」を感じたわけではない。もっと精神的な部分の話だ。

 投手、特にプロのマウンドに立つ投手には、「打てるものなら打ってみろ!」と思いながら投球するような気概が求められる。だが、これまで広島の投手たちには、「かわす」というイメージが強かった。しかし、打者から逃げよう、逃げようとしていると、いつかは捕まってしまう。だから、こちらから立ち向かうことが必要なのだ。

 決して根性論を言っているつもりはない。高い技術を兼ね備えた選手が集まるプロの世界だからこそ、最後はそういう心の部分で差がついてくる。曲がりなりにも、現役時代に技巧派とか理論派と呼ばれたことのある私でさえ、自身の経験からそう思う。

 たとえば、広島の偉大なOB故・津田恒実さんのような向こうっ気の強さは、プロの投手として、大きな武器になる。今年の広島の投手陣は、黒田を筆頭に、その津田さんが乗り移ったかのような投球を披露してくれた。

 カープファンのみなさんは、ぜひ、25年ぶりの美酒を心から味わってほしい。
 そしてCS、日本シリーズと、まだまだ楽しみは続く。



小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。



田中周治

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:9/11(日) 6:50

ベースボールチャンネル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。