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老後の二大不安、健康とお金の共通点

NIKKEI STYLE 9/11(日) 10:00配信

 誰もが考える老後の不安に「健康」と「お金」という2つの大きな問題があります。私は健康については専門家ではありませんが、びっくりするくらいよく似ていることに気が付きます。

1)どちらも人にとって大事なもの

2)手に入れるために多くの人が努力する

3)どちらの分野も専門家がいて発言しているが、かなりいい加減なものも多い

4)本来は手段なのに、往々にして目的と化す

5)どちらも誰もが不安を持っているので、それにつけこんだ商売が後を絶たない

6)どちらも死んだら役に立たない

 これらに加えて、私が考える最大の共通点は「どちらも唯一無二の最適解はなく、答えは人によって異なる」ということです。健康でいえば、その人の体質によって健康法も合う合わないがあるはずです。お金についていえば、保有資産額やリスク許容度、性格などによってどういう運用が最適かは人によって違うのが当たり前です。

 また、どちらも一朝一夕にして出来上がるものではなく、地味な日々の積み重ねが健康体をつくり、資産をこしらえるということも当然のことです。

 ところが、この当たり前のことが往々にして無視されがちです。常に手っ取り早く「健康になりたい」とか「もうけたい」という気持ちが強く、安易にその答えや方法を求めたくなるのです。

 実際、世の中には健康本やマネー本の類いがあふれています。真面目にきちんと書かれた本もありますが、中にはかなり怪しげな、いかがわしいものもあります。それらの多くは極めて独善的かあるいは明らかに不安につけこんで商売に結び付けようという魂胆が見えます。

 どちらの分野についても、私がやってはいけないことだと思うのは「原理主義者」になることです。「これが一番いい」とか、「この方法しかない」と信じ込むことはどちらも極めて危険です。健康の場合は体調、お金に関しては経済環境によって対処の仕方は全く異なります。

 ところが、原理主義に陥ってしまうと「とにかく信じて任せればよい」と思いがちで、これは明らかな思考停止による知的堕落に他なりません。それでも実害がなければいいですが、健康もお金もさほど時間がかからず結論が出ますから、体のどこかの具合が悪くなったり、金銭的な損失が発生したりします。

 特にシニア層の場合はより注意が必要です。若いときであればいろいろ試してみてうまくいかなくてもリカバリーができますが、ある程度の年齢になってくると失敗したら取り返しのつかないことになりかねません。それだけに頭を柔らかくし、柔軟に考えることが必要なのです。

 幸い、シニアの人たちは「経験」という財産を持っています。健康に関しては多くの人が過去の経験則から、ある程度自分の体質に合ったものを理解しているでしょう。また一定の年齢層になれば完璧な健康体は少なくなり、程度の差こそあれ、誰もがなにがしかの持病を持っています。そうした病気と上手に付き合いながら自分なりに健康を維持していくことは可能です。

 しかしながら、困ったことにお金に関しては誰もが豊富な経験を持っているわけではありません。若い頃から資産運用の経験を持っている人であればいいのですが、そういう人は残念ながら多くはいません。そんな状態で退職を迎えて退職金というまとまったお金を手にすると、間違った投資判断によってお金を失うことになりかねません。

 ではどうすればいいのか? これも健康と同じです。無理をせずに少しずつ慣らしていけばいいのです。どうしてもその気にならなければ投資する必要はありません。インフレになるからと脅かされて一気に投資信託や株式を購入するのは危険です。

 投資をしたいのであれば、自分で勉強しながら少額から始めて、一定金額を超えないようにすることが大切です。投資は自己責任で、どんなにうまいことをいわれて始めたとしても、いざ損をしたら誰も助けてくれるわけではないのです。

 健康もお金も自ら理解して納得できることが重要です。そして自分に合ったものだけを地道に実行していくことが最も大切なことです。


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大江英樹(おおえ・ひでき)

 野村証券で個人の資産運用や確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。行動経済学会の会員で、行動ファイナンスからみた個人消費や投資行動に詳しい。著書に「定年楽園」(きんざい)など。近著は「投資賢者の心理学」(日本経済新聞出版社)。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。

NIKKEI STYLE

最終更新:9/11(日) 10:00

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