ここから本文です

酷評の嵐──それでも『スーサイド・スクワッド』を観るべき理由

WIRED.jp 9/11(日) 10:10配信

ジカ熱がユタ州を襲い、ダラスでは大暴動がおこり、クーデターがトルコで勃発した。(米国で『スーサイド・スクワッド』が公開される前の)7月だけでもこれだけのことが起きた。ここまで2016年はずっとこんな様子であり、これからもまだ多くのことが起こりそうだ。

【日本も昨日9/10公開された本作。評価は散々だが『WIRED』US版は本作をこの夏に観るのにふさわしい映画だと評する。予告編はこちら】

この記事をいちばん高く評価してくれるのは本作の監督、デヴィッド・エアーだろう。彼は「メキシコを再び素晴らしくしよう」(Make Mexico Great Again)と書かれた帽子をかぶって今年のコミックコン・インターナショナルに現れた。これは明らかに、ドナルド・トランプの外交政策や“頭の装飾”を馬鹿にしたものだ。

この夏リリースされた映画のなかで、『スーサイド・スクワッド』以上に、いまの時勢の影響を感じる作品はない。その上下逆さまな(少なくとも傾いた)主人公たちの道徳の指針とめちゃくちゃな会話が、『スーサイド・スクワッド』を、いま観るにふさわしい映画にしているように思える。

急成長するDCコミックのシネマティックユニヴァースでの弾丸とカメオシーンのどんちゃん騒ぎが、重要な世論の波を引き起こすなどと言いたいわけではない。それでも、『ポケモンGO』に飽きて、2016年がまさにひどい年だという事実から逃れるための気晴らしを探しているなら、前科者の悪者たちがヒーローになるこの映画が最適かもしれない。

レトの演技、女性の活躍、悪者ヒーローにしかできないこと

ジョーカーの話をしよう。ジャレット・レトはこのアイコニックな悪役を演じた、3人目のアカデミー賞受賞俳優だ。さまざまな映画に登場してきたジョーカーはその度によく演じられ、神聖とさえいえるかもしれない。レトも前例に続くだろうか? その通りだ。『ダークナイト』でジョーカーを演じたヒース・レジャーには及ばなくとも、レトの演技には本当に心を乱される。

『スーサイド・スクワッド』の現代らしい部分、それは女性だ。この映画には多くの女性が出てくる。『スーサイド・スクワッド』の「女性ヒーロー」の数は、最初の『アベンジャーズ』作品の2倍。映画界に女性ヒーローがやっと出てくるようになった現時点では、かなりの進歩だといえる。

こうした賞賛がとるに足らないもののように聞こえるなら、それは、ウィル・スミスに率いられた本作の楽しさと行き当たりばったりの混乱が、今年の混乱した夏の終わりにぴったりだった、ということなのだろう。筆者のように『スーサイド・スクワッド』を気に入ったのは少数派であり、この映画に対する酷評には一理ある。欠陥はもちろんある(つなぎ合わせている感じがする、というのはまさにそうだ)。10年後、この映画は傑作とは呼ばれず、トリヴィアゲームの答えになることだろう。

それでも今年の夏には、「精彩を欠いた映画とひどい国政」という組み合わせはぴったりだ。『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』よりはよかった、というのはほめ言葉にはならないが、エアー監督は、ザック・スナイダーがまだ見つけていないDCキャラクターの深さを発見できたということだ。そして言うまでもないことかもしれないが、善き行いというのはときにひどい状況から生まれてくるのである。

スクアッドの首謀者であるアマンダ・ウォーラー(ヴィオラ・デイヴィスが熱演)が言ったように、「空飛ぶモンスターが出てくるような世界では、このスクアッドがわたしたちの国を救うための唯一の方法だ」。劇場の外では、そうはいかない。現実の世界では、悪者は何も救うことはできない。しかし『スーサイド・スクワッド』のヒーローたちは、それを忘れさせてくれるかもしれない。大したことではないかもしれないが、それが、彼らができる最もヒーローらしいことなのだ。

ANGELA WATERCUTTER

最終更新:9/11(日) 10:10

WIRED.jp

記事提供社からのご案内(外部サイト)

『WIRED Vol.26』

コンデナスト・ジャパン

2016年12月10日発売

630円(税込み)

特集:新しい映像。新しい物語。ヴィジュアル・ストーリーテリングの新時代を伝える「WIRED TV」特集。映像はいま何を語り、どんな体験をもたらしうるのか。

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。