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上司と部下が険悪になるケースが多発! どうすれば「やる気にさせる」任せ方ができる?

HARBOR BUSINESS Online 9/11(日) 16:10配信

上司:前に話した資料だが、明日の午前中までに、完成させてくれ

部下:とても無理です

上司:なに!四の五の言わずにやれ!

部下:しかし、今晩は外せないプライベートの予定が……

上司:予定があろうがなかろうが、やれと言ったらやれ!

俺がお前くらいの時は、徹夜三連荘なんて当たり前だ!甘ったれるな!

部下:体調が悪くなりましたので、帰ります。

――これは、課題解決力向上のための分解スキル・反復演習の中で、参加者が挙げた実例だ。この例に限らず、「上司が部下をマネジメントできないので、なんとかならないか」という相談を受けることが実に多い。「どのようにして言うことを聞かせたらよいかわからない」、「反発を受けずに従わせることはできないか」という悩みが絶えないのだ。

 実は、こうした課題は、上司と部下だけではない。先輩が後輩にコミュニケーションしづらい、セールスが顧客をハンドルできない、本社が現場をコントロールできない、彼が彼女を/彼女が彼を引き付けることができないなど、相手を巻き込もうとした時に必ずと言っていいほど提起される。そして、演習参加者の反応をふまえると、ここ10年、年を経る毎に、この課題の深刻度合は増大しているように思えてならない。

 一方で、ごく少数ではあるが、「この人に指示されると、俄然やる気が出る」、「この人と話をすると、その気にさせられる」と言われる人が、どの職場にも一人くらいいるものだ。部下と話をするたびに、険悪な雰囲気になる上司と、部下の気持ちを引き付ける上司、いったい何が違うのだろうか。演習を積み重ねる中で、その違いは、たった一つのことを把握できるスキルがあるかどうか、そしてそのことを表現できるスキルがあるかどうかにかかっていることがわかってきた。

◆モチベーションエリアを見極めると格段に改善する

 部下の気持ちを引き付ける上司が持っているスキルとは、相手のモチベーションエリアを見極めるスキルであり、モチベーションエリアに応じた表現スキルである。人にはそれぞれ、その人自身のモチベーションが上がりやすい領域や、上りにくい領域がある。それを、私は、モチベーションエリアと名付けている。

 例えば、前出の上司は、徹夜三連荘だろうがなんだろうが、なにがなんでもやり遂げたいと思い、「目標達成」することにモチベーションエリアがある。一方、外せないプライベートの予定が気になってしまう部下は、公私のバランスをキープすることが意欲の源泉であり、「公私調和」にモチベーションエリアがあると言える。

 その他、任されると俄然やる気が出る「自律裁量」、責任ある仕事を担えば担うほど気持ちが高まる「地位権限」、周囲と協調することが大事な「他者協力」、安定していることがパフォーマンスを生む「安定保障」の6つに、私はモチベーションエリアを区分している。「目標達成」、「自律裁量」、「地位権限」の3つを牽引志向と名付け、「他者協力」、「安定保障」、「公私調和」を調和志向と名付けている。「牽引志向」は狩猟型、「調和志向」は農耕型とも言えるだろう。

 どのモチベーションエリアを持っているか、どのモチベーションエリアに左右されやすいかということは、良い悪いという問題ではない。人それぞれの性格や経験により作り上げられたもので、一朝一夕に変わるものではない。上司に言われて、変わるようなものではないのだ。だとすれば、顧客だろうが、彼/彼女だろうが、そして部下だろうが、モチベーションエリアを見極めて、それに応じた表現をしていければ良いことになる。

◆相手のモチベーションエリアに合わせた表現力を身に付ける

 にもかかわらず、現実に行われている、上司と部下、セールスと顧客、彼と彼女のコミュニケーションは、ビジネスの現場や演習参加者の状況を見る限り、モチベーションエリアを無視したり、自分のモチベーションエリアと同じはずだと思い込んだり、自分のそれに合わせるべきだと固執したりしているケースが、ほとんどだ。

「地位権限」型の上司が、「安定保障」型で現状維持を望んでいる部下へ、リスクはあるがこれをやり遂げれば昇格できるぞと鼓舞しても効かないのだ。「自律裁量」型が、何でも自分で決めたり行動したりしたい彼女に、相手への配慮のつもりで「他者協調」型の彼が、あれはどうだ、これはどうだと、細かな世話を焼いても、うるさがられるだけだ。

「安定保障」型の部下には、上司がどのモチベーションエリアだろうと、「リスクは自分がカバーするから、安心してやってみろ」という意味のコミュニケーションを繰り出すとよい。「自律裁量」型の彼女には、自分のモチベーションエリアとは関係なく、「選んでみて!」「どちらが良い?」と聞けば、格段に関係の質は高まる。

 冒頭の、「公私調和」型の部下に対しては、「予定があろうがなかろうが、やれと言ったらやれ!」とキレたり、自分の「目標達成」型の武勇伝を持ち出しても全く効果がないばかりか、逆効果だ。そのかわりに、「期限は明日の午前中だ。いろいろとプライベートな予定もあるだろうから、無理をかけるが、頼む」と言うだけで、モチベーションの上り度合は大きく異なるのだ。

※「モチベーションエリアの見極め」のスキルは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)のドリル28で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第14回】

<文/山口博>

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身

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最終更新:9/11(日) 16:10

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