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税率たった0.005%…アップルやスタバ、世界的な巨額「税逃れ」スキーム

Business Journal 9/12(月) 6:02配信

 欧州連合(EU)は8月30日、米アップルが2003年から14年にかけてアイルランドに支払うべきだった約130億ユーロに及ぶ税金を納めていなかったとの判断を下したが、この判断は果たして妥当なのであろうか。

 アップルは早くから法人税の実効税率が低いアイルランドに欧州の拠点を設けて、節税対策に取り組んできた。具体的には、アップル・セールス・インターナショナルとアップル・オペレーションズ・ヨーロッパの2つの子会社を設立し、前者が製造業者から製品を買い取り、欧州を中心にした市場で販売したかたちにして収益を集め、その大半をアイルランド政府の課税対象にならない後者に移すことで課税対象の所得を大幅に圧縮するというシステムを採る。

 他方で源泉徴収問題を回避するためにオランダにも会社を設立し、バミューダなどの第三国への資金移動に利用する拠点として機能させた。この手法はまさに、EU域内国への支払いでは源泉徴収が行われないという現行法制度の抜け道を利用したものである。

 アップルはこのような租税回避スキームを1980年代後半にいち早く確立した。現在では「ダブル・アイリッシュ」「ダッチ・サンドイッチ」の名称で、米グーグルや米スターバックスなどの多国籍企業の多くが採用するに至っている。

 そもそもアイルランドは、法人税の実効税率が12.5%と欧州諸国のなかでも極めて低いいわゆるタックスヘイブンのひとつであるが、アップルはアイルランドで設立した2社を経由した取引や資金移動を行うことで税負担を軽減し、実質的な税率を03年の1%から2014年の0.005%まで下げることに成功している。

●法的基準の明確化が優先されるべき

 今回アップルに下された追徴課税は、この10年余りの期間を対象にしたものである。EUがこの時期に租税回避に厳しい措置を下したのは、富裕層の課税逃れの実態を暴露したパナマ文書が先頃公開されたことでもわかるように、巨大企業の節税に対する世界的な不満の高揚に対処するためであろうが、EUがこの問題を長年にわたり放置してきた感は否めない。

 企業誘致を進める目的から、法人税の実効税率設定が各国で異なるのは当然である。実際、欧州ではアイルランドやオランダ、ルクセンブルク、キプロスなど多くの国が実行税率を低く設定している。こうした各国の主権尊重を考慮して、独占禁止規制当局の役割を担う欧州委員会(欧州委)のベステアー欧州委員(競争政策担当)が述べるように、「最終的なゴールはすべての企業が利益を生み出した場所で納税すること」を実現するためには、一企業の追徴課税を命じる方法が妥当でないのは明らかであろう。

 国際的な課税逃れ対策の抜け穴を塞ぐために重要なのは、欧州加盟国が協調して多国籍企業の租税回避スキームに網をかけることである。まずはEU主導で早急に租税上の法的基準を明確にすることが優先されるべきであろう。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)

雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員

最終更新:9/12(月) 6:02

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