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中国の爆食で食い尽くされる!?世界「牛肉」争奪戦の舞台裏

Wedge 9/12(月) 12:10配信

 中国の「爆食」によって世界の食料事情は激変している。その状況を豊富な事例で検証しつつ、背後にうごめくグローバルな「マネー資本主義」の実像に迫ったのが本書だ。

 中国ではこれまで、肉といえば豚か鶏だった。ところが近年、内陸部の各地で空前の牛肉ブームが起きている。2013年の牛肉輸入量は日本を追い抜き、14年までの5年間で実に5倍にも増大したのだ。

 その余波は、大豆にも及んでいる。豆腐や味噌の原料である大豆は日本の食事に不可欠な食材だが、世界では家畜の飼料(油を搾った残り分の大豆粕)だ。牛肉を食べるようになった中国は飼料用の大豆を、アメリカのみならず新たに開発された南米の農地から直接・大量に買い付けるようになった。

 結果として、かつて無敵だった日本の商社が仕入れ段階で中国に買い負ける例が多くなった。また世界の食料を牛耳っていたアメリカの穀物メジャーの影響力が低下し始めた。NHKスペシャル『世界“牛肉”争奪戦』のプロデューサーで、本書の著者である井上さんが最も衝撃を受けたのは、ブラジルの“大豆王”を取材した時だ。

 「内陸部のセラードと呼ぶ大草原、そこに東京ドーム9800個分の大豆畑が開発され、今も拡大中。大半は中国向けですが誰に売るかは、時々刻々変わるシカゴの先物市場の価格を見ながら決めます。国家の規制も環境規制もない、裸の資本主義の現場です」

 大豆の先物市場は00年以降、需給では説明できない激しい乱高下を繰り返してきたが、井上さんたちは調査を進め、08年のリーマン・ショックの時と同様の実体経済とはかけ離れたマネーゲームにたどり着く。

 「それが、フロリダの投資家が手の内を明かしてくれたインデックスファンド?」

 「そうです。大豆や小麦などのコモディティ(商品)の先物市場は生産量に限りがあったので、元々小さな市場規模でした。けれど原油、穀物、金など異なるグラフを組み合わせ金融商品化したインデックスファンドに、金融緩和で溢れた資金が流入。“縛り”がないため相場が高騰し続けます」

 食材が投資の対象になったことで投資家はもうかるが、損をするのは一般消費者だ。現にアメリカでは、この1年で牛肉の価格が2割上がり、牛肉を食べられない人が増えた。

 「でも、日本ではまだ“牛肉を食べられない日”は実感できませんが?」

 「中間に複数のクッションがあるので、牛肉の価格はまだ上昇していません。しかし、中国の異次元の爆食は今も進行しており、背後のマネー資本主義の性格も変わっていないので、牛肉をはじめとした食材高騰の危機が去ったわけではありません。要は、グローバルなマネー資本主義の構造を知っておくことです」

 井上さんはそれから、世界を席巻するマネー資本主義への対抗策として、日本伝統の里山・里海資本主義の利点(持続可能性、安心・共生の原理)を熱く語り始めたのだった。

足立倫行 (ノンフィクションライター)

最終更新:9/12(月) 12:10

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