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大ヒット映画『君の名は。』 新海監督が語る制作秘話

NIKKEI STYLE 9/13(火) 7:00配信

 8月26日から公開されている新海誠監督の新作長編アニメーション映画『君の名は。』が大ヒットとなっている。公開から10日間で興行収入38億円をあげ、最終的には100億円を超える勢いだ。


あらすじ ニュースなどで、夜空を照らす彗星の華麗な天体ショーが報じられる。千年周期で地球を訪れるという彗星が、その夜、物語を一気に加速させる。瀧と三葉は互いの運命を信じ、まだ見ぬ大切な人に出会うため、その一歩を踏み出していく…。空間が隔てる切なさを描いて右に出るもののない新海監督の珠玉の感動作。(東宝配給)

 往年のすれ違いドラマをほうふつさせるタイトルを冠した『君の名は。』は、離れた場所にいる高校生男女の不思議な“出会い”を、千年に一度地球に接近する彗星(すいせい)とリンクさせて描いたオリジナルファンタジーだ。監督は、デジタル時代の旗手とうたわれる新海誠。パソコンを使い、ほぼ1人で作った『ほしのこえ』(2002年)に始まり、少数精鋭のアニメ制作会社コミックス・ウェーブ・フィルムと共に、思春期の少年少女の恋愛と切ない距離感を、SF的設定と美しい自然描写を織りまぜながら、丹念に描いてきた。その実写的ともリアルを超えたともいわれるこだわりの映像は“新海ワールド”と呼ばれ、国内外のファンから愛されている。

 そんな新海が、デビューからロングヒットとなった前作の中編『言の葉の庭』(13年)までの10年を総括し、「より多くの人が楽しめる“ど真ん中のエンタテインメント”を目指そう」と決意し、製作で東宝と初タッグ。キャラクターデザインに若者に絶大な人気を誇る『心が叫びたがってるんだ。』の田中将賀、作画監督に『千と千尋の神隠し』などジブリ作品を手がけてきた大御所・安藤雅司。さらに音楽にはタイアップは初というRADWIMPSと、夏の大型アニメにふさわしい最強の布陣で初の全国300館規模で公開した。

■ビデオコンテがカギに

 物語の根底にあるのが、誰もが経験してきた思春期特有の出会いと未来への希望だ。「まだ見ぬ大切な人との出会いを強く求めるのが思春期。それは生きていく上での救いや原動力になります。あなたの将来にもそんな相手がいるかもしれない。切なく大切な思いを伝える作品にしたかった」
 東宝の川村元気プロデューサーらと脚本会議を繰り返し、アニメ制作の設計図となる絵コンテ作業に入ったのが14年の12月。その後、1日15時間に及ぶビデオコンテ(※)制作を半年間続け、映像の展開からリズムや間合いまで完璧な設計図を作り上げた。脚本段階で決められなかったことをビデオコンテで昇華した箇所も。「瀧が三葉の体である作戦を実行するシーンの空気感を、ビデオコンテで確認して、瀧のテンションを高くしたまま突っ走らせる、という流れに決めることができました」
 作品の全編に流れるRADWIMPSによる美しい音楽の制作にも、ビデオコンテは大きな役割を果たしている。「RADWIMPSにも見せて曲を作ってもらったところ、(野田)洋次郎さんから頂いた曲があまりにも良かったので、ボーカル曲の4曲がかかる瞬間を全て、映画のピークに持ってくるよう徹底的に調整しました」
 作中の三葉のセリフに「会えば絶対、すぐに分かる」という言葉がある。新海の姿勢からも、「今やれば絶対にできる」という前向きさ、たった1人に始まり、作りたいものを追求してきた人ならではの強さが感じられた。
 「僕は常に自信がないタイプですが(笑)、今回は初めからこういう作品にできる、という予感がありました。そして出来上がったら思っていたよりはるかに厚みが出せた。それは『ほしのこえ』のときと似ていて、時代の変化のタイミングに自分とこの作品がピッタリはまった、という感覚です」 
 モチーフの描き方も映像の表現も音楽の作り方も、新海本来の持ち味を継承したまま、確実に新しくなっている。目まぐるしく変化する今の時代、誰もが“自分のための映画”と感じられる新しい夏の映画が誕生したといえそうだ。

※絵コンテを描いたあとに、それをムービーにして音もつけたもの。

(日経エンタテインメント! 平島綾子、ライター 波多野絵理)

[日経エンタテインメント! 2016年9月号の記事を再構成]

最終更新:9/13(火) 7:00

NIKKEI STYLE

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