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期待外れの「電力自由化」よりも期待外れになる「ガス自由化」

メディアゴン 9/13(火) 7:30配信

石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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皆さんは、「ガス小売全面自由化」というのをご存知だろうか?

今年4月に「電力小売全面自由化」が始まったことは記憶に新しい。家庭向けの電力小売事業が自由化された。「新電力」という言葉がしばしばマスコミやネット上に登場するが、これは電力自由化による新規参入者のこと。

電力自由化の次はガス自由化だ! というわけで、家庭向けの都市ガス小売事業が来年4月に全面自由化される。新規参入者は、さしずめ「新ガス」とでも呼ばれるかもしれない。

昨年の今頃は、電力小売事業の全面自由化に関する詳細な制度設計に向けた議論が沸騰していた。主な論点は、(1)送配電線使用料(電力託送料金)の大幅な引下げ、(2)マンション一括契約に係る規制緩和など、大手電力10社の既得権を打破する制度変更案をいかに実現させていくかであった。

それに向かって、政・官・学・民が一丸となっていた。そしてその結果、上記の点も含めた大きな制度変更が実現し、9月8日現在で新電力は341社にも上る。

来年4月まで残り半年となった今、都市ガス小売事業の全面自由化に関する詳細な制度設計に向けた議論は終盤戦に突入。ところが、この議論は盛り上がりに欠け、電力自由化の話に比べても、大手マスコミの報道も少ない。

その理由としては、(1)そもそもガス事業制度を熟知している人が少ないし、的確な改革案を提示できる人はもっと少ない、(2)当たり前のことだが、ガス業界では保守的な声の方が圧倒的に多い、(3)監督当局である経済産業省は、電力業界には非常に厳しいが、ガス業界にはそれほどでもない等々・・・。

こうした「空気」のせいもあってか、都市ガス小売市場への大きな参入障壁は歴然と維持されそうなのだ。その筆頭格が、(1)新規参入者が支払うガス導管使用料(ガス託送料金)が高いことや、(2)マンション一括契約が許されないこと。

特にガス託送料金については、最大の都市ガス小売市場を持つ東京ガスのガス託送料金が、現状よりも値上げされた水準で申請されている。これは、認可申請している東京ガスがいかなる弁明をしようとも、認可する経済産業省がどのような説明をしようとも、一般庶民には理解も納得もされようがない。

今年4月に始まった電力自由化によって、大手電力10社から新電力へ切り替えた一般家庭は、8月末時点で全国6253万世帯のうち168万世帯と、全世帯の2.7%弱。これを多いと見るか少ないと見るかだが、昨年11月の経済産業省の発表によると、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」との調査結果。

しかし、現実はそう甘くはない。「新電力」が少ないのには単純だが大きな理由がある。家庭向けの電力小売事業は、それだけを営んでもあまり儲からないのだ。もっとも、都市ガス会社や携帯電話会社が、電力小売との『抱き合わせ販売』をすることで、本業である都市ガスや携帯電話の顧客を繋ぎ止めておくことには多少役立つかもしれない。

家庭向けの都市ガス小売事業も同じ。それだけを営もうとしても、天然ガスの調達や安全確保の面でけっこうなコストがかかる。電力会社や石油会社など大手資本でさえ、新規参入はかなり難しいのが実状。

事実、都市ガス小売事業への新規参入を予定している事前登録者は、9月8日時点で関西電力と東京電力の2社だけ。昨年9月末時点で電力小売事業への新規参入を予定していた「新電力」の事前登録者が72社もあったことに比べても、「新ガス」の事前登録者数はあまりにも少ない。

そういう中で、(1)ガス託送料金が高い、(2)マンション一括契約が許されないなど、「新ガス」にとって都市ガス小売事業への障壁が高過ぎるのだ。

せめて、ガス託送料金の大幅引下げや、マンション一括契約に係る規制緩和といった主要論点だけでも突破しなければ、ガス小売全面自由化は、電力小売全面自由化よりも更に期待外れの結果になってしまうはずだ。

こんなにも障壁が高い市場には、誰も新規参入できやしない。

石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

最終更新:9/13(火) 7:30

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