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毛皮ブームはなぜ再来したのか

ナショナル ジオグラフィック日本版 9/13(火) 12:01配信

 毛皮への逆風がファッション界に吹き荒れたのは過去の話だ。かつて「毛皮を着るくらいなら裸でいい」という反毛皮キャンペーンの広告を飾ったトップモデルたちも、今では毛皮のモデルを務めている。15~20年前には「さわるのも恐ろしい」と毛皮を避けていたデザイナーたちも、もはや「そのタブーを乗り越えた」と、カナダのノバスコシア州のミンク生産者ダン・マレンは言う。

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 毛皮業界では多くの人々が、以前に活動家たちが繰り広げた強硬な抗議にも一理あったと認めている。毛皮用の動物たちの扱いには、確かに問題があった。だが現在は改善済みだと業界側は主張し、活動家はそれに異論を唱える。いずれにせよ、毛皮を着るのは個人の選択の問題だと考える人が、今は多そうだ。

新興富裕層による需要の増大が追い風に

 毛皮復活への流れを作った要因の一つは、毛皮業界が外部からの批判を受け入れ、飼育環境の改善などの対策を進めてきたという事実だろう。また中国、韓国、ロシアの新興富裕層による需要の増大も強力な追い風となった。

 若い客層にアピールするため、若いデザイナーを戦略的に取り込む努力を重ねてきたことも、毛皮人気の復活には寄与している。毛皮用の動物の飼育場を第三者が視察し、格付けするといった取り組みも始まっている。

 取引される毛皮の大半は、飼育されたミンクやキツネなどのものだ。その生産量は1990年代の2倍以上となり、2015年には約1億枚に達した。わな猟による野生のビーバー、コヨーテ、アライグマ、マスクラットなどが例年は数百万枚。このほか牛や羊、ウサギ、ダチョウ、ワニ類も食肉と皮革の供給源となっている。

 実際に毛皮を買う人々は、動物の扱われ方など気にかけるだろうか。「上海で聞くかチューリヒで聞くかで、答えはかなり違うでしょう」と、コペンハーゲン・ファーのテーイ・ピーダスン会長は言う。「だが将来的には、気にする人が増えていくでしょう。対象は毛皮に限りません。動物の飼育環境に配慮しているかと店頭で尋ね、店側が問題ないと答えれば、なぜわかるのかと質問するでしょう」

 実際には、大半の人々は毛皮製品など買ったこともないし、おそらく今後も買うことはないだろう。その一方で、私たちのほとんどは肉を食べ、ミルクを飲み、革靴を履き、さまざまな形で動物からの搾取を続けている。人間が昔から行ってきたその営みの規模に比べれば、毛皮など取るに足らない存在だ。

 毛皮産業に携わる人々は、好んでそうした暗黙の偽善を糾弾する。業界の人から話を聞いていると、ほぼ全員がどこかの時点でこう主張する。ほかの家畜の生産者たちは、自分たちがしてきたような組織的な改善など、ほとんど迫られてこなかったではないか、と。

(ナショナル ジオグラフィック2016年9月号特集「毛皮ブーム再来の陰で」より)

Richard Conniff/National Geographic

最終更新:9/13(火) 12:01

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