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くるりのベスト盤に感じた、音楽を生み出すことへの真摯さーー9月14日発売の注目新譜5選

リアルサウンド 9/13(火) 13:00配信

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。9月14日リリースからは、山下達郎、くるり、04 Limited Sazabys、DAOKO、Flowerをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)

■山下達郎『CHEER UP! THE SUMMER』(SG)

 前作『光と君へのレクイエム』以来、約3年ぶりとなるニューシングル『CHEER UP! THE SUMMER』は、音楽ファン待望のサマーチューン。サーフィン・ホットロッドのテイストを軸にしたリズム・アレンジ、エネルギッシュなボーカル、一人多重録音によるコーラス・ワークを含め、1980年代前半のリゾート・ミュージックとしての山下達郎の音楽(<夏だ、海だ、タツローだ>)を想起させる。「クリスマス・イブ」が収録されたアルバム『MELODIES』(1983年)から意識的に夏のイメージから脱却したことを考えると、ファンにとっては<30年ぶりに達郎の夏が戻ってきた!>ということになるのかもしれない。

 そしてこの楽曲はおそらく、ライブを強く意識して制作されている。才能あふれる若きドラマー・小笠原拓海がバンドに参加した2008年以来、定期的にツアーを重ねている達郎。CDビジネスの終焉とコンサートに重点を置いた活動への移行という時代の流れのなかで彼が、ライブ映えする新たなサマーチューンの必要性を感じたとしても不思議ではないだろう。次はぜひ、ツアーバンドのメンバーとのスタジオセッションによる、ダンスチューンを中心したアルバムを聴いてみたい。

■くるり『くるりの20回転』(AL)

 新人のバンドに取材していると、かなりの確率で「将来的には“くるり”のようなバンドになりたい」という言葉が聞かれる。1作ごとに作風を大きく変えながら、熱心なファンは離れることなく、ミュージシャンからも尊敬され続けている、そういうバンドになりたいと。筆者は「それは素晴らしいことだけど、仲良しバンドのままだと“くるり”にはなれないよ」と密かに思っているのだが、結成20周年に際して制作され、デビュー曲「東京」(1998年)から最新作「琥珀色の街、上海蟹の朝」(2016年)までを網羅したこのベスト盤をじっくり聴いて、「人間関係よりも、徹底して音楽を優先する覚悟がないと、こういうバンドにはなれない」ということを改めて強く感じた。ギターロック、エレクトロ、クラシック、ワールドミュージックなどを行ったり来たりしながら自らの音楽性を広げ、深めてきたくるりは、デビュー当初から現在に至るまで“音楽に殉ずる”という姿勢を一貫させてきたのだと思う。若いリスナーにもぜひ、このバンドの変遷と進化を体験し、音楽を生み出す真摯で真っ当な姿勢を感じてほしい。

■04 Limited Sazabys『eureka』(AL)

 自ら主宰した大型フェス『YON FES』を地元・名古屋で開催、2017年2月には初の日本武道館公演が決定するなど、まさに破竹の勢いで躍進を続ける04 Limited Sazabys。混戦が続くバンドシーンのなかで頭一つ飛び出している感がある彼らは、現在の状況をさらに加速していくであろう、素晴らしいアルバムを作り上げてみせた。シングルのリード曲「Letter」「climb」に象徴されるメロディック・ポップ・チューンはもちろん、メンバー個々のプレイヤビリティがぶつかり合うような「Night on」、J-POP的情緒性が感じられる「mahoroba」、まさにディスコードしまくりの爆発パンクチューン「descord」、アルバムの最後を飾る感動的なバラードナンバー「eureka」まで、バンドのなかに存在していた音楽性を自由に解き放っているのだ。朝から夜、そして、新しい夜明けに至る時間の経過を表現したアルバム構成も見事。“我、見つけたり!”という意味を持つ「eureka」というタイトル通り、フォーリミは本作によって、バンドとしての存在意義をしっかりと掴み取ったようだ。

■DAOKO『もしも僕らがGAMEの主役で/ダイスキ with TeddyLoid/BANG! 』(SG)

 “テクノロジーを駆使するミレニアム世代の女子高生ラッパー”としてメジャーシーンに登場したDAOKOのトリプルAサイドシングル。「もしも僕らがGAMEの主役で」は、気鋭のトラックメイカー・小島英也(ORESAMA)との共同作曲による楽曲。80sエレポップ風のサウンドの中で示されるのは、バーチャルとリアルの関係が変貌し続ける現在と、そのなかで生きる意義を捉え直そうとする意志。シリアスなテーマを極限までポップに描くセンスはまさに彼女の真骨頂と言えるだろう。「ダイスキ with TeddyLoid」は鋭利なビートを軸にしたヒップホップ・トラックとともに<自己満足はやめて、大好きなことを貫け。最初の動機を蘇らせて、やりたいことをやろう>というメッセージを放つ精神的アッパーチューン。楽曲の進行とともにウィスパーからストロングボイスへと変化する声の表現も強く心に残る。そして「BANG!」はクラップを活かしたサウンドメイクと<全部嘘だけど愛してくれる?><ねぇ、アタシと死ねるの?>という小悪魔的フレーズがひとつになったアイドル風ラブソング。まったく表情が違う3曲だが、すべてがDAOKO。本当に底知れぬ表現フィールドを持ったアーティストだと思う。

■Flower『THIS IS Flower THIS IS BEST』(AL)

 デビュー5周年を記念したベストアルバム。EXILE、三代目J Soul Brothersなどと同様、ボーカルダンス・グループの特性を活かしたダンサブルな楽曲が中心だが、ひとつひとつの楽曲にフォーカスを当ててみると、大衆音楽としてのわかりやすさと音楽的な個性、そして、女性らしい繊細さ、上品さを感じさせる鷲尾伶菜のボーカルを活かしたサウンドメイクが共存していることがわかる。松尾潔のプロデュースにより、R&B的なブラックネスと歌謡的な情緒性がバランスよく体現されたデビュー曲「Still」、シンプルな4つ打ちのビートとドラマティックなメロディ、<心に嘘はつけない 溢れる愛しさが 胸をしめつけても>という川村結花の歌詞がひとつになった「forget-me-not」(アニメ『機動戦士ガンダム AGE THE BEST』)など、ポップスとしての豊かなパワーを持った楽曲が数多く並んでいるのだ。「恋人がサンタクロース」(松任谷由実)、「やさしさで溢れるように」(JUJU)などのカバー曲も幅広いリスナーを広げる効果を発揮。本当にLDHは隙のない仕事をしていると思う。

森朋之

最終更新:9/13(火) 13:00

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