ここから本文です

街全体が息苦しい「東京」への魅力もなくなり、とにかくつまらなくなった…乳癌治療、離婚を経た40代独身女性による小豆島移住顛末記

ダ・ヴィンチニュース 9/13(火) 11:00配信

 『漂うままに島に着き』(内澤旬子/朝日新聞出版)は、香川県の小豆島に一人、移住することを決めた40代女性である著者の、移住前後の日々について綴られた地方移住顛末記である。

 著者の出身は神奈川県の湘南エリア。その後は東京23区内で暮らしており、いわゆる「田舎」「地方」にはあまり縁がなかった。しかし、「すっからかんの何もない静かな部屋で暮らしたい」という想いを募らせ、縁があって香川県の小豆島に移住することに。

 地方移住を決めた理由は、他にもある。「以前よりも東京全体に魅力を感じなくなっている」「東京がつまらなくなってしまった」からだ。そう思うようになった理由としては、著者は「年齢のせいか」とも言及するが、一番の要因は「東日本大震災」が大きかったようだ。

東京は、うまく言えないけれど、何かを失ったのだ。

(震災から)二年経って賑やかさが戻って来た東京は、「何事もなかった」体を装いつつ、なんとなくギスギスして映った。室内だけじゃなくて、街全体が息苦しい

 東京への魅力も感じなくなり、とにかく「つまらなくなった」著者は、新天地への引越しを決める。

 まずは住居探し。都会の移住希望者に向けて空き物件情報を公開している「空き家バンク」なるサイトで小豆島の物件探し。「海と月の見える、広々とした家」を探し、途中挫折しそうになりながらも、条件に合った物件にめぐり合い、いよいよ引越し。

 しかし、「東京から離島」への引越しはそれほど簡単ではない。受け入れてくれる業者も少なく、引き受けてもらえても値段がお高い。著者はネットを駆使して「離島に特化していること」を売りにしている業者を見つけた。他社とは圧倒的に安い値段で依頼することに。島での暮らしを始めるにあたり、他に車やソファ購入についての「奮闘記」も描かれている。

 その後、実際に移住してからの島での生活について、「交通事情」「飲食事情」「ご近所付き合い」「虫について」などが紹介されている。「地方移住の参考になれば」とのこと。著者は「良いところ」と「悪いところ」を忌憚なく述べているので、本当に地方移住を考えている人にとって役に立つと思う。

 懸案事項の一つに「ご近所さんとのお付き合い」があったようだが、「よそ者」だと不信感いっぱいに敵対視されることもなく、だからといって馴れ馴れしくされることもなく、温かい人柄に触れることが多かったそうだ。

 現状、著者は「楽し過ぎるんだけど、これ夢じゃないの?」と思えるほど、小豆島での生活は面白くて仕方がないらしい。段々私も離島で暮らしたくなってきたぞ。

 著者の視点は鋭く読者の心理 を突くこともあれば、独特なクセを感じることもある。冷静に物事を叙述していると思いきや、感情が爆発したりと、その文章の緩急がとても面白い。地方移住に興味がある人はもちろんのこと、自分自身の凝り固まった価値観を解したい方にもオススメだ。

文=雨野裾

最終更新:9/13(火) 11:00

ダ・ヴィンチニュース

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Yahoo!ニュースからのお知らせ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。