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震災を契機とした輪島市の“新たな地域自治”とは

JBpress 9/13(火) 6:00配信

 少子高齢化や地方の過疎化により、かつての町内会や自治会といった「地域自治システム」が崩壊している自治体も少なくない。それらが招くのは、地震や豪雨といった災害時の防災や福祉分野への対応がおろそかになることだ。

 いくつかの自治体では実際にそうした問題に直面し、対策に取り組んでいる。たとえば石川県輪島市では、震災の経験から、防災と福祉の分野で先進的な取り組みに着手し、成果を挙げつつある。失われた町内会や自治会を再生させるだけにとどまらない“新たな地域自治システム”の構築が始まっているのだ。

 輪島市の地域自治システムの特徴は、病院や介護施設、NPOといった既存の施設や組織が巧みに連携していることである。そのシステムは、仕組みづくりをけん引するリーダーや、各機関の連携を担うコーディネーター、実際に動くプレイヤーといった“地域のキーパーソン”がいたからこそ実現することができた。

 輪島市の取り組みとは、どんな内容なのか。行政学や地方自治論を専門とする國學院大學法学部の稲垣浩准教授の話を元に紹介したい。

■ 震災から数日でシステムを立ち上げたキーパーソン

 ──石川県輪島市では、防災・福祉に関する地域自治システムが進んでいるとのこと。なぜこの地域で活発になったのでしょうか。

 稲垣浩氏(以下、敬称略) 輪島市は、もともと地震が少ない地域とされ、それまで防災に対する意識は決して強くありませんでした。しかし2007年に能登半島地震が発生したことが契機となり、キーパーソンによるシステム形成が行われ、それ以来、10年近くの間、継続的に継続・改善が行われています。

 ──なぜ輪島市では継続的にシステムの継続・改善を行えているのでしょうか。

 稲垣 行政が上から垂直的に構築したのではなく、地域が水平的にネットワークを作ったことが理由の1つです。さらに、震災時から継続可能なシステムを想定し、人が変わっても運営できる形を意識していたのも大きな要因です。

 ──実際にどんな仕組みを作ったのですか。

稲垣 最も大きな取り組みは「福祉避難所*1
」の設置・運営です。 災害が起きると、住民は全員が1次避難として「一般避難所」に入ります。ただ、要介護認定者や障がい者、妊産婦・乳幼児、高齢者といった災害弱者は、一定期間以降も避難が必要になります。そこで国は、阪神大震災以降、災害弱者が「2次避難」できる福祉避難所の設置を勧めていました。しかし、ほとんどの地域では行われていませんでした。

 能登半島地震が起きたとき、輪島市にも福祉避難所のシステムはありませんでした。しかし、国からの要望もあって災害直後に構築が始まります。

 リーダーとなったのは、当時、市の高齢者支援を担当していた河崎国幸さんです。数日で制度のプロトタイプをつくり、既存の高齢者施設と交渉して福祉避難所としたようです。当時用意された避難所は高齢者中心でしたが、その後改善を重ね、今では乳幼児や妊産婦、障がい者などの福祉避難所も確保されています。

 *1=特別養護老人ホームやショートステイなどの社会福祉施設に入所するに至らない程度の者が利用する避難所を指す。一般的に、社会福祉施設へ入所する程度の方々(例:要介護認定者など)については、災害時の緊急措置として、当該施設への定員超過での利用が認められている。

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最終更新:9/13(火) 6:00

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