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「窓」の違いが死を招く!? 家と健康の深いつながり

HARBOR BUSINESS Online 9/13(火) 9:10配信

◆意外と多い「ヒートショック」死

 夏の熱中症や冬のヒートショックなど、家の中の温熱環境が原因で倒れたり亡くなったりという人は、交通事故の死者をはるかに上回っている(※)。このようなことが起きる主な理由は、日本の家の「断熱性能の低さ」にある。しかしその断熱性能の決め手が、熱の出入り口となる窓であることは意外と知られていない。

 今年6月、窓の専門メーカーであるYKK APは、窓の違いによる快適性の違いを実感してもらうため品川に「体感ショールーム」をオープンした。そのショールームでの体験をリポートする。

※2011年の1年間で、温度の急激な変化による「ヒートショック」が原因の死亡者は年間約1万7000人。それに対して交通事故死亡者数は4611人で、およそ3.7倍(東京都健康長寿医療センター研究所・2011年1年間の数値)。

◆「アルミサッシ」は諸外国ではほとんど使われていない!

 体感ショールームのさまざまな施設の中で目玉となるのは、冬の断熱性の違いを体感できる5つの部屋だ。冬の外気温を想定して、-5℃~0℃に冷やされた巨大冷凍庫の中に、窓と断熱材の異なるAからEまで5つの部屋を設置。さらにそれぞれの部屋の中は、エアコンで暖めた部屋と、エアコンのない部屋とに分けられている。Aは20年以上前の一般的な断熱仕様(壁・床・窓)の部屋で、最も断熱が弱い。Eは、欧州レベルの高断熱仕様の部屋となっている。

 まずはBの部屋(2番目に寒い)に入室する。ここは、「平成25(2013)年基準」という、日本では比較的新しい断熱仕様だ。窓はペアガラスだが、サッシ(窓枠)はアルミで結露も多かった。室温そのものはエアコンがかかっているので寒くはない(20℃程度)ものの、足元は冷える。温度差の違いをエアコンで埋めているが、いろいろ課題があるようだ。日本で一般的なアルミサッシだが、諸外国ではほとんど使われていない。欧米だけでなく、韓国などでも窓のサッシは多くが熱を伝えにくい樹脂製(プラスチックの一種)が主流になっている。

 次に、YKK APが推奨するレベルであるDの部屋に入る。窓はここでもペアガラスだが、サッシは樹脂だ。結露はBの部屋と比べるとほとんど見られない。エアコンはかけているものの、もともとの部屋の温度が暖かいので、天井と足元の温度があまり変わらず、下から伝わってくる冷えがなく快適だ。それでも、エアコンのない部屋に入るとさすがに室温は16℃程度で、多少寒さを感じた。

◆国際レベルで見ると、日本の断熱基準はまだまだ低い

 驚いたのは、欧州レベルの断熱仕様がほどこされたEの部屋(パッシブハウス)だ。こちらの窓ももちろん樹脂で、ガラスはトリプル(3枚)仕様になっている。壁の断熱材も分厚くまったく寒さはない。そしてエアコンのない部屋に入っても、十分過ごせるだけの暖かさ(20℃)が保たれていた。足元も寒くないし、窓の結露はまったくない。

 DやEの部屋で暮らすのと、最初に入ったBの部屋で暮らすのとでは、健康状態に大きな差が出てくるはずだ。2020年には、日本でもようやく新築住宅を建設される際に断熱基準が義務化されることになっている。

 しかし適用される国の基準は、記者が最初に入ったBの部屋のレベルだ。国際的なレベルで考えると、日本の現状はまだまだ低いと言わざるをえない。国の基準を待たずに、一般の消費者が率先して高断熱の窓や家を選ぶようにした方が、省エネはもちろん、健康で快適な生活が送れるだろう。

 この品川の「体感ショールーム」は、工務店など建築のプロを対象とした施設で、一般公開されているわけではない。しかし、一般の人でもこれに近い体感ができる体感機は、同社の新宿、名古屋など全国10か所のショールームにあるので、訪れることをお薦めしたい。

取材・文・撮影/高橋真樹(ノンフィクションライター。『ノンフィクションライター高橋真樹の全国ご当地エネルギーリポート』をWeb連載中。著書に『そこが知りたい電力自由化―自然エネルギーを選べるの?』<大月書店>など)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/13(火) 9:10

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