ここから本文です

【イエメン紛争】内戦の激化で苦境に立たされる人道医療支援団体

HARBOR BUSINESS Online 9/13(火) 9:10配信

 イエメンの内戦はシリア紛争の陰に隠れて余り話題にならない。しかし、2015年3月にサウジアラビアがイエメンに武力介入して以来、長期化してベトナム戦争化している。イランのスペイン語衛星チャンネル、「HispanTV」によれば、国内避難民は300万人、外国への避難者は20万人とされている。さらに、「El Pais」紙によれば、1400万人は日々の食料を入手できる保障はなく、890万人は栄養失調の状態にあるという。

 昨年3月から現在までの犠牲者数は1万人近くにものぼる。しかも、この数字は病院から伝えられた報告だけをもとに統計されていることから、実際にはもっと多くの犠牲者が出ているはずだという。(参照:前出「HispanTV」)

◆増す危険に医師系人道支援団体が撤退

 さらに困難な状況に追い打ちをかけるのが、8月にNGOの「国境なき医師団(MSF)」が北部イエメンハッジャ州とサアダ州で支援していた6軒の病院から撤退し、9月には「世界の医療団(MdM)」も撤退を決めたことだ。

 撤退を決めた理由は、病院や診療所が幾度も爆撃されたことによって、今後の患者と医師らスタッフの安全が保障されなくなっているという事情からである。この二つの医療組織の撤退は武力介入を仕掛けたサウジアラビアをリーダー国とする有志連合も残念がっているという。しかし、8月6日に行われた和平協議も失敗に終わり、病院や医療施設が今後攻撃を受けないという保障はないということから両医療組織は撤退を決めたものだ。

 MSFは、今回の北部地域からの撤退までは、イエメンで11軒の病院と診療所を直営し、18軒の病院と診療所を支援していた。これまでも数々の攻撃を受けていたが、8月に起きたハッジャ州のアブスの病院が爆撃され19人が死亡、負傷者も多数、また病院建物の3分の2が破壊されるという事態に及んで、MSFはイエメン北部からのスタッフの撤退という苦渋の決断を強いられたという。(参照:「ABC」) 北部イエメンからは撤退したが、現在もMSFは、90人の外国人を含む2000人のスタッフでイエメンでの医療援助活動を継続している。

 同様に、MdMも日に日に激しくいなる紛争で空爆も度合いを増していたことから医療スタッフの避難を決めたのであった。

 イエメンは人口2800万人の世界で最も貧しい国のひとつ。物資は常に不足している上に、戦争で輸入が困難となり物資の不足はより深刻な状態にある。

 そんな中で、武力衝突のない所では、物資の不足で人が死亡するという事態になっている。南西部の都市タイズではMSFが3・4月だけで1700人の診療をしたという。その大半は市民であったそうだ。戦闘員が負傷して傷の手当に来診した時には武器は玄関から中に持ち込まないことをMSFは徹底させているという。(参照:「Europa Press」)

◆両団体撤退後はどうなる?

 更に、MSFが指摘しているのは、イエメンの診療施設が日に日に悪化していることだ。<MSFが資金支援をして650人の患者の透析を行っているが、その設備もいずれは使えなくなる時が来る>と述べている。その時が来れば患者は死と直面することになるのだ。同じように、喘息や高血圧なども通常であれば医者の看護で問題にならない病気も医療が行き届かなくなった時点で同じく危険な病気となる。(参照:「Europa Press」)

 MdMも、人口の8割は病気や栄養失調で医療支援が必要だと述べている。そして、その半数の人は食料の入手が保障されない状態にあると指摘した。その一方で、医療設備の25%は既に破壊されていると厳しい医療状況にあることも伝えた。(参照:「Internacional」)。

 この二つの医療団体が撤退したあとは縮小された現地の医療スタッフが対応することになっている。

 武力紛争が起きれば、いつもその犠牲は一般の罪のない市民が負うことになる。しかも、病院という治療をする所でも身の安全が保障されないという事態まで発展している悲惨なイエメン内戦である。ヨルダンがこの和平交渉の場を提供しているが、紛争が収まる様相は全くない。サウジアラビアとイランの代理戦争化しているこの紛争は更に激化する可能性の方が強い。

<文/白石和幸 写真/国境なき医師団>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/13(火) 9:10

HARBOR BUSINESS Online

Yahoo!ニュースからのお知らせ