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50代から異変が…更年期うつと誤解されがちな「若年性認知症」 患者は4万人以上

デイリー新潮 9/13(火) 14:30配信

 才色兼備の女性言語学者が50歳で、若年性アルツハイマーと診断され、日々言葉を失っていく。昨年、主演のジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞を受賞したアメリカ映画「アリスのままで」は、そんな内容だった。また、渡辺謙主演で2006年に公開された映画「明日の記憶」では、広告代理店に勤める49歳のやり手営業マンが若年性アルツハイマーと診断されてからの、苦難の日々が描かれていた。

 こうした事例には、はたしてリアリティがあるのか。世にも稀な奇病とタカをくくり、お涙を頂戴していればいいのだろうか。

「『明日の記憶』を見たときは、主人のケースは“まさにだ”と思いました。後で会社の方々から、取引先と約束して先方が待っているのに来なかった、などと聞かされ、渡辺謙演じる主人公の様子がまさに主人の様子だったんだな、って感じました」

 そう語るのは、若年認知症家族会「彩星の会」の小澤礼子代表。夫の博さん(仮名)は50代になってから、明らかに様子がおかしくなったという。

「製薬会社に勤めていた主人は、50歳のとき神戸から東京本社に転勤になったのですが、新宿の三井ビル内の本社の場所がわからなくなったみたいなんです。場所が確認できても、途中で迷ってしまう。私にも“直通のエレベーターがないんだ”“途中で降りて中階段を通らないと自分のフロアに行けない”などと言うので、そんなわけないのになあ、と思っていました。でも、当時は認知症だなんて夢にも思わなかった」

 だが、奇妙な様子は一般に、家庭よりも職場でこそ気づかれるのだそうだ。

「自分のメールボックスの場所もパソコンのパスワードもわからないなど、仕事に支障をきたすようになって、上司に“家でつらいことがあるのか”と聞かれたとか。家でも“あれ、どこへやった?”“今日は何日だ?”などと聞くことが増えました。でも、会社の保険組合の指示で脳神経外科で検査しても、原因ははっきりしない。終いに会社から“有給休暇を取りましょう、家でのんびりしてください”と言われ、その年の11月、54歳で依願退職せざるをえませんでした」

 アルツハイマーと診断されたのは、退社して3年も経ってから。その後の苦闘を、小澤さんが回想する。

「主人は会社を辞めても、困ったことがあれば会社から相談があるので自宅待機している、と思っていました。ですが、アルツハイマーは脳の損傷ですから、1年1年記憶は落ちて運動機能も衰え、ご飯を呑みこむことさえ忘れてしまいます。食卓でも自分の皿と人の皿の区別がつかなくなり、どうやって寝ていいかわからなくなり、さらに進むと、食事も排泄も風呂もわからなくなりました。生き地獄とはこういうことを言うんだなと。一番つらいのは本人ですが、世話をする家族も本当に大変です」

 こうして64歳で亡くなり、存命であれば今、71歳になる博さん。小澤さんは、

「今思えば主人は、47~48歳で発症していたのではないかと思います」

 と述懐するが、すると病名の特定に10年近くかかったわけで、その間、適切な治療ができずに進行が早まったのかもしれない。

 それは取りも直さず、早期発見が大切ということでもある。日本認知症学会の専門医で、おくむらmemoryクリニック院長の奥村歩氏は、

「アルツハイマー型認知症は発症が早いほど進みやすく、10年で寝たきりになると言われていました。しかし、今は専門医にかかって適切な治療を受ければ、寝たきりになるのを20年以上遅らせることができる」

 と話す。悲観する前に前向きになることだろう。

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最終更新:9/13(火) 14:30

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