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新崎人生HAKUSHIがWWEデビュー ――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第178回

週刊SPA! 9/13(火) 9:10配信

 “日本人メジャーリーガー”という表現が活字メディアで流行語となったのは野茂英雄がロサンゼルス・ドジャースに入団した1995年のことだが、野茂よりもひと足先にアメリカに渡り、プロレス版の“日本人メジャーリーガー”になったのは、みちのくプロレスの新崎人生だった。

 WWEが初の日本公演“マニア・ツアー”を横浜、名古屋、大阪、札幌の4都市で開催したのは1994年5月。日本サイドからの招待選手としてツアーに同行した新崎は、同ツアーのロード・エージェントだったブラックジャック・ランザ、アール・ヘブナーのふたりからWWEとの契約を打診された。

 ランザとヘブナーは新崎を“ブーディスト・マンク”(仏教の僧侶)ととらえたが、じっさいは、新崎のキャラクターは四国八十八カ所を巡礼するお遍路さん。もちろん、アメリカ人には僧侶とお遍路さんの区別はつかない。どちらにしても、東洋的でエキゾチックなギミックであることだけはまちがいなかった。

 新崎の純日本的なキャラクターとその持ち技のレパートリーに興味を持ったのはWWE世界ヘビー級王者(当時)“ヒットマン”ブレット・ハートだった。カナダの“プロレス名所”カルガリー出身で、本格的なデビューをまえにミスター・ヒト(安達勝治)、ミスター・サクラダ(桜田一男=のちのケンドー・ナガサキ)というふたりの日本人レスラーからスパーリングの手ほどきを受けたブレットは、ジャパニーズ・レスラーとそのメンタリティーに特別な感情を抱いていた。

 新崎をWWEにスカウトしようと考えたブレットは、新崎のマネジャーとしてかつてカルガリー・マットで活躍し、日本でも悪党マネジャーとして一世を風びしたショーグン・KY・ワカマツ(若松市政)のブッキングを検討したが、このプランは実現しなかった。

 WWEが新崎を“招集”したのは日本公演“マニア・ツアー”から半年後の1994年11月。11・23PPV“サバイバー・シリーズ”サンアントニオ大会からWWEのツアーに合流した新崎は、ここでビンス・マクマホンら首脳陣と対面。現地ではマネジャー役として佐藤昭雄(元全日本プロレス)が待機していた。

 翌11月24日から27日までの4日間を佐藤の自宅があるミズーリ州カンザスシティーで過ごした新崎は、28日の早朝、国内線でニュージャージー州ニューアークに移動。ニューアーク空港でレンタカーを借りてニューヨークのアッパーステート、パキプシーに向かった。空とフリーウェイをフルに使ったWWEスタイルのツアー生活のはじまりだった。

 11月28日、29日の2日間はニューヨーク州パキプシーのミッドハドソン・シビックセンターで“マンデーナイト・ロウ”と“WWEスーパースターズ”のタメ撮り、11月30日はマサチューセッツ州ローウェルのベテランズ・メモリアル・センターでシンディケーション番組“WWEチャレンジ”のTVテーピングがおこなわれた。

 WWEサイドはアメリカ人に発音しやすい新リングネームの候補作をいくつか用意し、新崎自身もお遍路さんではない役づくりを希望していたため、新キャラクターはホワイト・エンジェル(白い天使)というコンセプトから白使HAKUSHIと名づけられた。マネジャーの佐藤は、能面のイメージで顔を白塗りにして信者SHINJAを名乗った。

 HAKUSHIは28日、29日の両日、TVマッチの第11試合、第12試合に出場。対戦相手は2日間とも若手のリノ・リギンスという選手だった。90年代後半にWWEとWCWの“月曜TV戦争”がスタートし、プロレス番組が生中継スタイルに“変換”するまで、TVマッチのいちばん基本的なコンテンツは“スクワッシュ”と呼ばれる有名レスラー対無名レスラーの“3分マッチ”だった。

 新崎のWWEデビューとそれまでの日本人レスラーの海外武者修行の大きなちがいは、時間に対する感覚だった。海外武者修行は1年後、2年後に帰国を“設定”した長期滞在だが、新崎のWWEでのツアー生活には期限が定められていなかった。肌の色や国籍に関係なく才能のあるタレントには平等にチャンスが与えられる場所がメジャーリーグであり、言葉のカベや文化や習慣や環境のちがいをハンデとすることなくその実力を発揮できるのがメジャーリーガーなのである。(つづく)

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

日刊SPA!

最終更新:9/13(火) 9:10

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