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『HiGH&LOW』は〈国産の海外映画〉である。“EXILEへの偏見“が、かえって映画への没入を加速させた!

サイゾー 9月14日(水)18時1分配信

――今夏、元来のLDHファンのみならず、一部の層にやたら突き刺さった映画『HiGH&LOW THE MOVIE』。その概要はこちらの記事で紹介した通りだが、では一体、何が我々をそんなに惹きつけたのか……? ヤンキーマンガや映画を長年見続けてきたライター・藤谷千明氏と、アクション映画やバイオレス映画に造詣の深いライター・加藤ヨシキ氏が、その理由を戸惑いながら分析します。なお、同席している担当編集は重度のLDHヲタです。

EXILEがオタクを殴り倒した夏――興行収入だけでは測れない!映画『HiGH&LOW』ムーブメントに迫る

【鑑賞POINT・1】『HiGH&LOW THE MOVIE』は〈国産の海外映画〉

加藤 この作品を語るときに難しいのが、「ココがすごい!」的なとっかかりがわからないというか、人にすすめる時に「何から話せばいいのかわからない」と悩んでしまう。なんというか、LDH国からやってきた「国産の海外映画」みたいな印象があるんですよ。日本の映画なんですけど、LDH国の文化や価値観でできている感じというか。

藤谷 わかります。EXILEに対する先入観、悪く言えば偏見がうまく作用としたというか、どんなに素っ頓狂な設定でも「これはEXILEという一族(EXILE TRIBE)の神話世界の話なんだ」という精神的な距離感があった。つまり、ある意味「偏見」があったからこそ没入できたのかもしれません。

 映画として最初にインパクトがあったのが、まずアクションですよね。冒頭からトラックが派手に突っ込んできて、スラムが勢い良く爆発する。大画面でそれを見て、そこで頭を殴られるような衝撃を受けたわけで。

加藤 そう、あれはすごかった。アクション映画は、ガツンと来るオープニングが大事だと僕は思ってるんですよね。『マトリックス』の最初のマシンガン撮影なんかがまさにそうだったように。そういう意味では久しぶりにオープニングからガツンと来たな、と感じました。しかも、おそらく日本のどこかなのであろう商店街が映って、なんの説明もなくカットが切り替わったら「無名街」という、カエルの串刺しを露天で焼いてるようなスラム街に移る。普通はその間で説明を置くでしょう。それがまったくない。

藤谷 「こういうシーンを撮りたい、観せたい」という強い意志を感じますよね。リアリティをぶっちぎっても観せたい世界観がある。

加藤 そう、とにかく作り手側の強い意志は感じるんですよ。でも、例えばこれが『シン・ゴジラ』だったら、庵野秀明という男の強い意志が作り上げた一本の槍みたいな映画ですよね。そういうふうに作り手の意志がすごく出た映画を「とんがった映画」と表現しますが、『HiGH&LOW』はおそらく監督・アクション監督・俳優陣全員がそれぞれに強い意志を持っていて、個人単位で好きな方向に尖がっている。その結果、尖がっているポイントが多すぎてウニみたいな映画になっているんだと思います。トゲが多いぶん、観客によって刺さる部分もバラバラみたいな。もちろん、興味のない人が観たら「なんだ、このトゲトゲは」みたいな印象を受ける映画でもあるってことなんですけど。

藤谷 それは出演者の布陣にも表れてますよね。LDHだけでなく、ナベプロからホリプロ、スターダストという大手芸能事務所の俳優からVシネ常連の俳優まで、ラッパー、ビジュアル系、K-POP……とジャニーズ以外は全部抑えているのではないかという。意外なところですと、脚本家のひとり、渡辺啓は元グレートチキンパワーズだったり。サウンドトラックまで含めたら、もう収拾がつきません。

加藤 そして次回作『THE RED RAIN』では岩城滉一、石黒賢、飯島直子。ジャニーズはおそらくいろいろ制約があるだろうから呼べないとは思うんですけど、本当にどのジャンルからも出ている。

藤谷 強い意志は感じるんですけど、その意志で何をやろうとしているのか未だにわからないのも魅力かな、というのはありますよね。

加藤 『HiGH&LOW』は「全員主役」が売り文句になっていますが、それって主人公不在ともいえるわけで、つまりひとつの物語がないってことですよね。例えば『バットマン』だったら、主人公であるバットマンの行動と、彼がたどる物語を通じて訴えたいことが表現される。主人公がヒーローでも一般人でも、ひとつの個人の物語があれば、「あぁ、こういうことを訴えたいんだ」「こういうことがやりたいんだ」と伝わるんですけど、それがない。誰が主人公かわからないっていうのは、どうオチがつくのかわからない、っていうことなんですよ。

藤谷 だから、この映画に批判的な立場を取る人は、ストーリーや演技の粗云々はもちろんですが、「何がやりたいかわからない」のが気持ち悪いんじゃないでしょうか。

加藤 しかもそれに反論するべき、擁護する側もこの物語がどこを目指しているかイマイチわからない。それはもう、結論が出ないに決まってますよ。

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最終更新:9月15日(木)19時40分

サイゾー

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